9.純情ボーイはそのベールを剥ぐ
前回のあらすじ。
初めて二人きりになったが
真冬の可愛さが限界突破した。
どれくらい、歩いただろう。
コーヒー豆の仕入れ先は少し歩く、と言われてから15分は経つ。
先ほどの褒め攻めのせいなのか、彼女は一切口を開こうとしない。
無言のまま、前へ前へと進んでゆく。
照れたことが、よほど恥ずかしかったのだろうか。
それでも僕は構わず、
「あの、青天目さんってどんな本読んでるんですか?」
と、彼女に対しての質問を繰り出す。
だって、二人きりなんだよ!!? 質問するにはうってつけなんだもん!!
このチャンス、生かすしかない!!
「文芸書とか、専門書。前那月が言ってたでしょ」
「その中でも特に読む分野、とか」
「金銭関係とか病気とか、今後に役立ちそうなものとかかな。文芸書はエッセイとか、小説は推理系が多いけど」
ほえぇ、頭いい!!!
僕なんて、小説は学生時代に読んだっきりだ。尊敬しかない。
それに、なんだかんだ答えてくれるあたり、やっぱり優しいな……
「……で、君は?」
「はへ?」
「仕事。もう慣れた?」
想定外すぎて、変な声が出てしまう。
正直、驚いた。まさか、彼女から話しかけられるとは!
嬉しい気持ちをなんとか抑え、僕は彼女へ笑い返した。
「はい、なんとか。青天目さんや、那月さんが優しく教えてくれるおかげです」
「お皿、割りまくってたけどね」
「そ、その節は本当すみません……接客は緊張しちゃって……」
「目を見ようとするからじゃない? あえて違うとこみるといいらしいよ。首とか、耳とか」
な、成程……
やっぱり、優しいな。青天目さんって。
最初はどこか、距離を感じていたけれど。
さっきの会話で、少しは印象がかわってくれたのかな……
「着いたよ、ここがうちの御用達」
楽しい時間ほど、過ぎるのが早い。
途端、コーヒーのいい香りがする。
みたところ、コーヒー豆しか売っていない専門店のようで、右を見ても左を見ても様々な種類の豆が並んでいた。
「珈琲豆は基本、ここで買ってる。店から遠いから、いつも箱ごと買ってるんだけど……あれ、場所移動してる」
そういわれ、彼女の目線の先がかなり上にあるのに気づく。
おそらく、あの高い位置にあるものだろうか。
すると彼女は、躊躇なくそれを取ろうとして……
「えっ、取れます!? 大丈夫ですか?!」
「別に。普通に届くけど」
「こ、こういうのは僕が取った方がいいような……」
「君、みてるだけで危なっかしいんだよね。ひょろひょろしてるし」
そういうと、彼女はコーヒー豆が入っているであろう箱を手に取る。
背丈的には全然問題なく、普通に手が届くのをみても、どこかハラハラする。
大丈夫かな、あの箱結構重そうだけど……
ていうか……隣の箱、ちょっと揺れてるような……
「……よし、これでもうおわり……」
彼女が箱を取ったと同時に、隣の箱がぐらっと揺れる。
瞬間、他の箱が棚の上から落っこちてきてー
「青天目さんっ、危ないっ!!!」
ガタガタと、音がする。
気がついた時には、箱が何個か地面に落ちていた。
僕に当たることはなかったけど、
「大丈夫ですか!!?」
目と目が合った瞬間、はっとする。
彼女が、近い。息が、かかるほど。
自分が彼女を覆い被さっていることに気付いたのは、いつもは見えない片目がはっきり見えたからだ。
倒れた拍子に乱れたのか、眉毛まで姿を表している。
その表情はどこか、驚いているようにみえてー
「お客さまっ、大丈夫ですか!!?」
店の人の声で、ハッとする。
ぼ、僕としたことが!! なんてことを!!
「あわわわわ、すみません青天目さん!」
「………僕は別に」
「よ、よかった……す、すみません店員さん、お騒がせして……僕も大丈夫です」
「はぁ、よかった。本当、申し訳ございません。すぐに片付けますので……」
「…………そういうことするんだね、君」
何か言われたような気がして、え? と返す。
それでも彼女は、髪を整えながら、なんでもないように、
「ありがと」
と小さく言う。
店の人に謝られながら出るも、その後は終始無言だった。
さっきのいい雰囲気はどこへやら……もしかして、怒らせちゃったかな……?
そりゃあ、いくら危ないからって、押し倒すようなことしちゃったらまずいよなぁ……
「えぇ!? 閉店!!?」
その声に、ハッと我に返る。
那月さんの、尋常ではないほど驚いた声だ。
気がつくと喫茶店に着いており、店のドアが開いている。
青天目さんは僕と目を合わせると、なんの躊躇もなく店の中に入った。
中には、驚いた様子の那月さんと、一人見慣れないお客さんがいてー
「ドア、開けっぱなしだよ。どうかしたの、那月」
「あっ、真冬……おかえり。それが……」
「あらぁ、もしかして、あなたが店長さんですか?」
そこにいたのは、一人の女の子だった。
二つに縛ったおだんごをゆらりと揺らしながら、一人席で冷えたアイスティーを優雅に飲んでいる。
手のひらサイズしかない顔と、小柄な身長。
セーラー服であるところをみると、学生なのだろうか。
くりくりとした瞳と目が合うと、彼女はにこっと笑みを浮かべてくれた。
「あらあら、買い出しですかぁ? わざわざご苦労さまでぇす❤︎ まあでもぉ、買ってきたところで、この店閉店しますけど❤︎」
!!!?
「へ、閉店!? どういうことですか!?」
「だってぇ、ぜぇんぜんお客さんきてないでしょぉ? 経営者の娘としては黙ってるわけにはいかないですよねっ❤︎」
なにを、言ってるんだろう。
閉店?? この店が、ってこと?
そしたら青天目さんとはもういれない、ってこと?
そ、そんな!! せっかく入社したのに!!
「というわけで、近々閉店作業に入りますのでぇ、役立たずなあなたたちは出て行って、新しい職場探しでも探しちゃってください❤︎」
少女が、くつくつ笑う。
嵐はまだ、上陸したばかりだ。
(つづく!)
おまけの小ネタ⑧
覆い被さった後、道中にて。
明音(や、やってしまったーーー!Σ(ノд<)怪我がなかったとはいえ、青天目さんに覆い被さるなんて!! あ、でも……まつげ、長かったなぁ( ´ ▽ ` )目の下に、小さなホクロもあったよね。なんで前髪切らないんだろう。また見たいなぁ、なんて……(*´﹃`*))
真冬「……君、今変なこと考えてるでしょ」( ・᷄-・᷅ )
明音「Σ( ˙꒳˙) そ、そそそそそんなことないですよ!?:( ;˙꒳˙;):別に、綺麗なお顔なのに勿体無いなぁとか、そのスタイルも素敵だけど、髪切ったらもっといいだろうなぁって思っただけで!!」
真冬「……君らしいね。黄河とは大違い」
明音「そっか、こうとお知り合いなんでしたっけ。こうに何か言われたんですか?」
真冬「昔ね。初めて会った時、髪長くね? って言いながら勝手にあげられて。そしたら……」
黄河『なんだ、目あるじゃん。てっきり隠れてるから、ないと思ってたわ』
真冬「……あの人、本当にデリカシーないよね。正直なんだこいつって思ったの、思い出したε-(´-`*)」
明音「そ、それはぁ、こうなりのコミュニケーションというか……なんか、すみません!(>_< ;)」
This is 黄河。「見えねーんだからそう思うだろ」
✴︎次回からの更新は、
夜18時〜19時の間に行います✴︎




