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63.七色の約束を、この場所で

前回のあらすじ。

橙子、純、真冬、那月、黄河。そして、藍。

新たな季節を前に、

それぞれが自分の未来へと動き出す。


残された一人、明音が出した答えとはーー

         *明音side*

誰用、とかかれた袋を一つ、また一つとくくっていく。

かじかむ手を息で温めながら、お菓子をまたひとつ結んでゆく。

色とりどりに包装されたお菓子は、どれもいい出来栄えになってー


「明音、準備いいか? 時間だ、そろそろ行くぞ」


こうが、僕を呼ぶ。

その声と同時に、みんなの声が聞こえてくる。

慌てて僕は、その手に持っていたお菓子をとり、


「みんな! ハッピー、ホワイトデー!」


と、彼女達に渡して見せた。

三月。季節的には春だというのに、雪が降ったり気温が低かったりと、冬の寒さがまだ残っているこの季節。

それでも関係ないとばかりに、うちの店は暖かい。

というのも、今日はホワイトデー。お店が開くより早く、僕がみんなを呼び出したのだ。


「お〜〜クッキーだー。おいしそ〜〜」


「あはっ、よくみたらこのクッキー焦げてるじゃない! あーちゃんってば、こうちゃんに負けず劣らず不器用なんですねっ」


「れ、練習はしたんだけど……改めて、純君。合格おめでとう」


「うむ、よきにはからえ〜」


あの日以来、純君は目標である高校への挑戦をやめなかった。

それでも難しく、第一志望に届かなかったけど、彼はすでに別の道を見つけたらしい。

その道は、まさかのコーヒー作りや経営。ゆくゆくはこのお店を、継ぎたいと思っているという。

大好きな橙子ちゃんのため、そしてこの店のことを考えてたなんて、ほんと隅におけないなぁ……


「つーかお前ら、マジでここで働くのか? 将来的に、金持ちなんだろ? バイトを続ける意味も、ここで働く意味もなくね?」


「わかってないですねぇ、この店は財前コーポレーションの系列店ですよ? その店を娘である私と、婚約者の彼が継ぐのは当然だと思いますけど」


「そりゃそうだが……って婚約者? 許可されたのか?」


「思った以上にあっさりとね。彼、妙にお父様と仲がいいんだもの」


そういう橙子ちゃんも、すでに経済系の大学へ進学が決まっているらしい。

社長になると決めた彼女は、前にもまして頼もしい。

道を決めたのは、もちろん彼女達だけではない。


「それにしても、ホワイトデーでお菓子を作るなんて明音君はまめだね〜うちらも義理渡したけど、お返しなんてよかったのに」 


「それもあるけど、僕が作りたかったんだ。みんなの門出祝いに」


「まさかてめーらまで辞めるとはなぁ……本当にやれんのか?」


「その言葉、そっくりそのまま返してあげる」


真冬ちゃんは音楽の道へ本格復帰、それを支えるため那月ちゃんもマネージャーへと転職する。

まだすぐにとは言わないけど、いつかここをやめてしまうらしい。

かたやこうは、橙子ちゃんのお父さんが提案した海外へ、留学決定。来月には出発してしまうらしい。


つまり、今日を区切りに、順次研修や準備のためにシフトを減らし、3月末で全員がそれぞれの道へ散っていく。

こうしてみんなと入れる時間は、もう残りわずかなのだ。


「っしゃ。明音から餞別ももらったことだし、今日もいっちょ働くぞお前ら!!」



その日は、いつも通り始まった。

こうがコーヒーを淹れ、那月ちゃんがスイーツを作る。

橙子ちゃんと純君の可愛い接客に、真冬ちゃんが冷たく制して。

何一つ変わらない、いつも通りの日々。

この光景は、あと何日みれるのだろうー……


「そういえば、明音。君はどうするの?」


「……え?」


「ほら、黄河が留学するでしょ? 君のことだからてっきり、黄河についていくって言い出しそうだなって」


その言葉に、あー、と言葉を濁す。

正直、ついていきたい気持ちがないわけではない。

彼と離れるのは、いまだ寂しい気持ちが勝ってしまう。

それでも、送り出したことに後悔はない。

みんなが旅立つ準備をして、きづいた。

僕にできること、それはー


「僕はここに残るよ。みんながいつ、帰ってきてもいいように」


アルカンシエルに残る。

それが、僕が出した答え。僕の気持ち。

いつかみんなが、笑顔で帰って来れるようにー


「だから、いつでも帰ってきてね! なんなら毎日でもいいよ!?」


「さすがにそれは来すぎでしょ。家じゃあるまいし」


「えー、それもよくない? うちらにとっちゃ第二の家みたいだし……そーだ! 事務所立てたら、業務提携しよーよ! 演奏会しにさ!」


「あはっ、なっちゃんってば気が早すぎ〜! うまくいけば、でしょぉ?」


「だいじょーぶだよ、とーこ。きっと、うまくいく。ね、こーが。パパ」


「勝手にミーまで巻き込まないでくださいよー」


振り返ると、藍さんがいた。

呆れるように肩をすくめている。

それでもどこか嫌な顔にはみえない、むしろすっきりしているように見えた。


「……好きなだけいればいいんじゃないですかー? ここは、そういう場所ですし。まあその時にミーがいるかは、別の話ですけどねー」


「言うと思った。だったらよ、ここで約束しねぇか? 誰一人かけることなく、全員で帰って来るように」


拳が、目の前に突き出される。

にかっと歯を出して笑う彼の姿に、僕はその拳を返そうとすると、控えめながらに手を出してきた人がいてー


「男子ってこういうこと好きだよね。ほんと、暑苦しい」


「うっせーな、いっぺんやってみたかったんだよ。お前は一番来なそうだからなぁ、さっさと手出せ」


「言われなくても、出してるでしょ? まあ、気が向いたらってことで」


「その時は、真冬引っ張ってでも連れてくよ! マネージャーなんで!」


「そこまでいうなら、私もきてあげよっかなぁ〜みんなでお酒飲む、とかいいかも?」


「じゃ、こーがの奢りね。パパも入る?」


「あー、ミーはそーゆーのは若者の特権でしょ? ミーはミーで好きにやりますんで、お構いなくー」


みんなが、拳を交互に出してゆく。

その姿が、笑顔が、寂しかった心を満たしていく。


「……こいつらが逃げねーためにも、お前しか頼めねーわ。この店のことは頼んだぜ、明音」


「うん、任された!」


その拳に、自分の拳をあわせる。

窓から差し込んだ一筋の光が、まるで僕たちの門出を祝福してくれているようだったー……


(つづく!!)

おまけの小ネタ

明音「僕達でこのお店守っていきます!!(`・ω・´)ノ」


黄河「随分頼もしくなったじゃねーか。次期サブチーフも、お前で決まりだな( ≖ᴗ≖)」


明音「気が早いよぉ〜僕まだ働いてから一年しか経ってないのにヾ(・ω・`;)ノ」


橙子「このメンバーじゃ、あーちゃんが妥当でしょ。3人もいなくなるなら、まずは人を増やさないとですよねぇ……店長は藍さんで決まりだとしてぇ、せっかくだから、来期はいろぉんな子を雇いません?? 私、かっこいい王子様みたいな人がほしいなぁ〜(∩˘ω˘∩ )」


黄河「……は? いらねーだろそんなもん。王子なんて、純や俺で充分だろーが( ・᷄-・᷅ )」


橙子「えぇ? 自分で言いますぅ? 私の王子って意味じゃあそうですけど、純ちゃんはお店ではマスコットみたいなものですしぃ……どっちかっていうと、こうちゃんは意地悪してくる悪役ってかんじ?( *´艸`)」


黄河「んだとこら( ˘•ω•˘ )」


純「だったらボク、シェフさんがほしいなー。お腹いっぱい食べたいし。あ、とーこのお家にいるメイドさんいれない? お世話してほしいー」


橙子「それ、可愛がられて何もしたくないだけでしょ。却下(乂'-' )」


藍「いっそのこと、10人くらい増やしてもいかもですねー。バリスタ枠は増やそっかなー、ミーの仕事が減るに越したことはないし( -ω-)゛」


真冬「……見事なまでの私利私欲っぷりだね。そんなに君たち、僕らいなくなって欲しいの?( ・᷄-・᷅ )」


明音「ええっ!? そ、そういう意味じゃ……全然那月ちゃん達も参加していいんだよ!ヾ(・ω・`;)ノ」


那月「いやぁ、なんかすごい蚊帳の外っていうか……寂しくなっちゃったなぁ。思わず辞めたくなくなっちゃうかも……( ˊᵕˋ ;) ねえ真冬?」


真冬「……じゃあ誰も雇わないで四人で頑張って( '-' )」


明音「真冬ちゃん、怒ってる!?(꒪д꒪II」


これぞ仲間。



次回、最終回です。

23日、いつもの時間に更新します

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