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エピローグ 〜After the rainbow〜

それぞれが将来の道を決めた7人は、

アルカンシエルで約束を交わす。

また、みんなでここに帰ってくるために。


そして月日は流れー……

貸切、とかかれた札を、店の手前に出す。

外は小雨だ、天気予報では晴れるって言っていたのに。

時計の指す時刻は三時。まだ、時間はある。


「明音く〜ん、ごめん! これ、音鳴らないんだけど、どうやるんだっけ?」


声が、聞こえる。

その声に返事しながら、僕は店に戻った。

どうも、聖明音です。あれから、四年が経ちました。

僕たちが働いているアルカンシエルは、変わらず経営しています。


「えっと、この線をこっち……にしたらいいんじゃなかったかな……ごめんね、このアンプ古くて……」


「びっくりしたよぉ〜、全然買い替えてないんだもん。持ちがいいのかな? よく持ってるね」


「僕がここで吹いた時より前にあるもんね。僕たちが来るからって、お菓子とかたくさんあるし……ここの経営、大丈夫なの?」


「こ、これは昔の仲間が来るって言ったら、後輩たちが作ってくれて……店のお金がないわけじゃないから!!」


「別にそこまでは言ってないけど。粋なことするね」


「せっかくだから、会いたかったなぁ〜。今度お礼にうちも作ってこよっかな」


二人の薬指にはめられた指輪が、きらきら輝いている。

個人事務所を構えた真冬ちゃんは、すっかりフリーのサックス奏者だ。

今では髪が伸び、ますます綺麗になっている。

逆にマネージャーとして働く那月ちゃんは、ばっさりショートカットにしていて、彼女のマネージャーとしてバリバリ仕事をとってきてるらしい。


こんなに二人に会うことになったのも、事務所を構えてすぐ、二人はすぐにこの店と提携してくれたからだ。

そこからたまに演奏会をしてくれるようになって……こうしてよく、アンプの様子を見にきてくれる。

また、ここで彼女の演奏が聞ける。それが僕にとっては、嬉しくてたまらないんだ。


「ちょっとぉ、これカフェラテじゃない! 私はブラックをお願いしたんですけどぉ」


「えー、ちがうのー? じゃあもう橙子が飲んでいいよ、ボクからのプレゼントってことで」


「今私ダイエット中なんですけどぉ〜わかってて言ってます?」


「そんなことしなくても、橙子は可愛いよ」


店内で変わらないイチャイチャ様子を繰り広げるのは、言わずもがな橙子ちゃんと純君だ。

橙子ちゃんは大学を卒業し、お父さんの後を継ぐために社長見習いになったらしい。

ここにくるのは、ほとんど休みか息抜きの時くらいだ。


かたや純君は、高校を卒業してすぐにここで働いている。

なんでも、過去の猛勉強が影響し、必要な資格が難なくとれたらしい。

何から何まで、純君らしいなぁ。


「でも、本当に良かった。ちゃんと、みんな揃ってくれて」


「なにー? その言い方。うちらが帰って来ないと思ってたのぉ?」


「だって、みんな忙しいって知ってるから……連絡は取ってくれてたけど、店にきてくれるようになったのだってここ最近だし……」


「色々忙しかったからね。海外との遠距離交際してる君には、負けるかもだけど」


彼女が話すのは、無論この店にいた元店長であり、藍さんに店を任せて海外へ渡ったこうのことだ。

四年前に海外にいったっきり、直接会えてはいない。

海外に行く前、僕はまだ彼のことを完全に好きになっていないと思っていた。

真冬ちゃんのこともあったから、尚更だったんだけど。


何年も離れて過ごすうちに、嫌というほど思い知らされる。僕の中にある、彼の存在の大きさ。

そこでやっと気づいた。ああ、これも、『好き』ってことなんだって。

まあこうには、「行った後にわかるとか遅い」って、釘を刺されちゃったけど……


「ていうかぁ、まだですかぁ? あなたの恋人は。都合つくとか言って日付指定したの、あの人ですよねぇ?」


「こ、恋人って……でも遅いよね。飛行機に乗る前には、連絡きたんだけど」


「まだ飛行機の中、なんじゃない? 電話したけど、繋がんないんだよねえ」


「ボク、お腹すいた。こーが来ないなら、もうボクが食べちゃっていい?」


「黄河のことだしね。留学がうまくいかなくて、尻尾巻いて逃げたとかじゃない?」


「誰が逃げたって?」


そんな時、だった。

聞き慣れた声がして、振り返ると、そこにいたのは、彼でー


「こう!! きてたの!?」


「当たり前だろ、俺を誰だと思ってんだ。……っと、わり。遅くなったわ」


「こう君、久しぶりぃ〜! 全然連絡してくれないから、何かあったのかと思ったよぉ〜」


「いちいち返すのめんどかったんだよ。来るってことは伝えてたんだし、無事に着いたんだからいいだろ?」


「……相変わらずだよね、君。少しは悪いと思ってるの?」


「女らしくなった割にはおめーもかわんねぇな、真冬。まあ、変わらねーほうがいいか」


大荷物をその場に置きながら、彼は無造作に僕に近づく。

彼の大きな手が、ぬくもりが、頭の上に置かれてー


「……帰ったぜ、明音。ただいま」


「おかえり、こう」


笑顔で、微笑み合う。

この温もりが、笑顔が僕の見たかった、景色。


「こーが、きいてーー。ボク、来年からお酒飲めるようになるんだよー」


「あ? お前もうそんな年なのか? 早いもんだなぁ……にしては店内ぜんっぜんかわってねぇんだが」


「それ、あなたがいいます? むしろここまで経営を続けた私たちを、褒めて欲しいんですけどぉ。ききますぅ? この数年間の話! 大変だったんですからね!」


「悪いが俺の海外話が先だ。お前らがビビるほど成長して帰ってきたぜ? そこの元サックス奏者より、な」


「……随分煽るね。こっちは演奏会のチケット、即売り切れですけど?」


「あはは、もう喧嘩しないの! なんか懐かしいなぁ。今日はもう、みんなで飲み明かしちゃおっか!」


みんなが、カウンターを囲んで笑い合う。


ここは、始まりの場所だった。

真冬ちゃんのサックスの音に導かれ、出会いと別れを繰り返す。

あの時は一色だった世界に、今はこんなにも鮮やかな色が溢れていて……


「それじゃあ改めて……みんなっ、おかえり!!」


カウンターを囲む大好きな人たちの笑顔を順番に見渡して、僕は胸いっぱいの愛おしさを込めて声を張る。


アルカンシエル。ここは、僕たちの帰る場所。

何度雨が降っても、ここに来れば、また明日へ歩き出せる。

雨が、上がっている。

頭上には僕らを見守るように、透明な虹が顔を出していた……


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


藍「やれやれ、腐ってもここはアルカンシエルってことですかねー。え? なんでミーは混ざらないのかって? 嫌ですねー、ミーはもうおじさん。若者たちの集いは、若者だけで充分なんですよー。……にしてもうるさいですねー、さすが数年ぶりの再会っていうか……ま、たまには賑やかなのも、悪くはないですねー……ね、虹架」


fin

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