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60.那由多の月が照らす先へ

前回のあらすじ。

ある日、真冬の元にサックスのスカウトが来る。

好きだったものと向き合うため、

受けようとする真冬に、那月から出た言葉とはー


新たな季節を前に、

それぞれが自分の未来へと動き出す――。


これは、それぞれが選ぶ、これからの物語ー

        *那月side*


真冬が、驚いた目でうちを見ている。

そりゃそうだよね、うちだってドキドキしてる。

真冬にいうことに対しての緊張と、これからどうなるかの不安で。

どうしてうちが、その決断に至ったのかーーそれもこれも、真冬にスカウトが来てることを聞いてしまったからだ。


「あの、青天目真冬さん……ですよね? 私、音楽事務所のものです。以前行われたアルカンシエルの演奏会を聞きまして……サックス奏者として、うちの事務所に来ませんか?」


ちょうど裏の方でスイーツを作っていた時だった。

真冬はすぐに休憩にいっちゃって、居合わせることはなかったけど。


真冬がサックスを愛していること。それは、誰よりも近くにいた私が一番よく知っている。

でも、真冬は一度離れてしまった。

ずっと苦しんでいたのを、うちは知ってる。

今では少しずつ吹くようになったけど、それでも人前で演奏するのはあの演奏会以来ない。

どうしたらいいか、ずっと考えていた。

考えて、考えてーーそれでも答えは見つからなくてー……


「おやおや、またしてもすんごい悩み顔ですねー。せっかくの笑顔が、どんぐもりじゃないですかー」


そんなうちに気づいたのは、元店長である御領原さんだった。

入社当時、うちと彼はほぼ入れ替わりだったから、ちゃんと話したのはごく最近である。

それでもうちが真冬を好きだと気づかせてくれたのは、彼だ。

現に真冬しか気づかなかった、化粧やストラップを外したことも、きづいたし……


「あの、店長さん……うち、真冬にどうしてあげるのが、いいんでしょうか……?」


「どうして、ねぇ……那月さんはどう思ってるんですか? スカウトについて」


「そりゃあ受けてほしいって思いますよ! 真冬のサックスは、それだけすごいもん! でも、そうすると真冬はまた苦しんじゃいそうで、それだけは嫌で……」


真冬のやりたいことをさせたい。それが、うちの本心だ。

例えそれが、離れてしまう選択になろうとも。

うちは、真冬の笑顔が見れるならそれで……


「まーねー、確かに事務所所属だと、あーしろこーしろで、大変そーですよねー。それなら、あなたがいればいいんじゃないですかー?」


「……え、うち?」


「ミー的に、あなたたち二人が揃ってれば、なんでもできると思いますけどねー」


その言葉を聞いた瞬間、目の前の霧がパッと晴れた気がした。

ずっと、「真冬のために何ができるか」ばかり考えていたけど、やっとわかった。

誰かに真冬を任せるんじゃない。うちが、真冬の隣で盾になればいいんだ。


答えが出たあとは、簡単だった。

調べられることを、とにかく調べまくった。

音楽業界のこと、フリーランスの仕組みをそして「マネージャー」という仕事について――。


「うちなりに調べたんだ、色々。事務所でやれば、安泰かもしれない。けど個人でやれば、真冬の好きに演奏できるでしょ? だから、うちら二人でやってみなよ? 時間かかっちゃうかもしれないけど……うち、マネージャーの資格、とるから」


「……那月……どうして、そこまでして……」


「決まってんじゃん! うちが真冬を支えたいからだよ。真冬の、生涯のパートナーとして」


思えば、アルカンシエルに行くと決めた時も、真冬のためだったかもしれない。

あの時は苦しんでるところを、助けてあげられなかった、ただの罪悪感からかもしれないけど。

でも、考えてみれば、あの頃からもう彼女の虜だったのかもしれないな。

真冬の隣にいたい。

それがうちの、やりたいことだったからー……


「あーー、恥ずかしい!! ドラマとかでよく見てたけど、こんなセリフ自分でいうのははずいねぇ〜熱ってきちゃった」


「……ずるいよ、そういうの。ほんと、ずるい……」


そういうと真冬は窓からだしていた顔を、下の方へ隠してしまう。

きっと照れてるのだろう、本当かわいいな。

やっと顔を出してくれたかと思うと、なぜか彼女はため息混じりで


「……那月、そこから動かないで」


と言い残して、部屋を飛び出してしまう。

次の瞬間、自分家のドアが開いた音と、驚いたような声がきこえる。

激しい足音が廊下に響いたかと思えば、ドアが勢いよく開く。

振り返るとそこには真冬がいて、気がついた時には柔らかな感触と、冷たい夜風の匂いが胸に飛び込んできて……


「えっ、真冬……?!」


驚きで固まるうちの腕の中で、真冬の小さな体が震えている。

寒いはずなのに、触れ合っている場所から火がつくみたいに熱い。

びっくりした、まさか真冬がこんなことするなんて!


「……ごめん……急に、触れたくなった……君が、あんなこと言うから……」


彼女の顔が、耳の方まで赤い。

それだけ嬉しかったのだろうか。初めて見る彼女の一面は、うちも嬉しくなってしまう。

つい頭を撫でていると、真冬は呆れたように笑ってみせた。


「那月は本当に相変わらずだね。那月のそういうとこ、ずっと……ずっと、好きだった」


「大袈裟だなぁ〜うちだって真冬のこと好きなんだから、当然でしょ?」


「……正直、不安もあったんだ。明音みたいに好きって言ってくれる人がいれば、きっとうまくいくって。個人でなんてやっていける気がしないけど……君がいれば、大丈夫そうな気がする」


そう言うと、真冬はうちの口に重ねるように口付けする。

暖かく、優しい温もりが、全身に伝わってくる。


「預けるよ、君に。僕のこれからの人生を、全部」


うちを抱きしめるその手は、二度と離さないとでもいうように強い。

その手を、温もりを、うちは離さないように、そっと抱き返してみせたー。


(つづく!!)

おまけの小ネタ

真冬「すっかり遅くなっちゃった。ごめんね、お邪魔して。那月のおばさん達に見られちゃったから、謝ってから帰るよ( ´•ᴗ•ก)」


那月「それなら、うちも行くよ。真冬があんなことするなんて、よほどのことだからねぇ〜?( ◜ω◝)」


真冬「……元はと言えば、那月があんなこと言うのが悪いんだからね?( ・᷄-・᷅ )」


那月「え〜? うちのせい〜? わかったって、玄関まで送って……」


那月母「真冬ちゃん……なんてかっこいいの……⁝(ᵒ̴̶̷᷄⌑ ᵒ̴̶̷᷅ )⁝」


那月「おおおおおお母さん!?Σ(°д°ノ)ノ なんでここに!? まって、今の見てたの!?(*゜ロ゜)」


那月弟「そりゃあ冬姉がとんでもない勢いで駆け上がればなー。また姉ちゃんがなんかしたのかと思ったけど……二人ってそーゆーことだったの?」


那月母「青天目さんにもいわなきゃ!! 末長くお願いしますって! おとーーさん! 那月がねーー!"(ノ*>∀<)ノ」


那月「わぁぁぁ! ちょっ、これ以上ひろめないでぇぇぇ!!(>_<`,, )」


真冬「これは………黄河のこと、笑えなくなっちゃったな……(•ᴗ•; )」


この後、両家家族に周知されました。

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