表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/65

58.ひたむき王子は、大好きな姫を離さない

前回のあらすじ。

受験のためにこなくなった純を、心配する面々。

彼の一途な愛とは裏腹に、橙子は一人、

彼のために大きな決意をする。


新たな季節を前に、

それぞれが自分の未来へと動き出す――。


これは、それぞれが選ぶ、これからの物語ー

        *純 side*

「……こんな感じかな。今日はこの辺にしようか」


暖房の音だけが響く静まり返った部屋で、重い筆記用具を置く。

目の前には、たくさんの問題が並んでいる。

正直、みたくもないものばかりで、頭がクラクラしてきちゃう。


「ふみゅう……疲れた……眠い……」


「あら、大変! 私、家まで送るわ。おぶってもいけるけど、どうする?」


隣で採点をしていた家庭教師のお姉さんが、心配そうに声をかけてくれる。

それでもボクは、間髪入れず、


「……ん、大丈夫。だってとーこのお嫁さんにならなきゃいけないから」


と、返事した。

中3の冬、もうすぐボクは高校生になる。

ずっと、今日まで頑張ってきた。

誰にも悟られないように、こっそりと。

すべては、とーこのため。

これが、初めてやりたいと思ったことだから。


「とーこ、ね……受ける時からそうだったけど、そこにこだわる理由もないっていうか……無理しすぎじゃない?」


わかってる、そんなこと。

ボクは頭がいいわけでも、容量がいいわけでもない。

いろんな人に反対された。先生、おじさん、そしてテストの結果。

それでも、曲げたくなかった。ここで曲げたら、とーこが遠くなっちゃう気がして。

とーこと一緒にいたい、そのためにはボクが頑張らないといけないんだ。

とーこの隣に、いてもいいように。


「そうかもだけど、ボクなりに頑張りたいんだもん。だってボク、とーこに好きって言ってもらってないから」


「好きって言ってもらってないって……そもそも相手はお嬢様なんでしょ? 純君がここまでする必要なんてあるの?」


「ある。とーこを幸せにするってきめたから」


「それでも私は心配なの! あの財前家の娘なんて、この先何があるか分かったもんじゃない……私なら、あなたを支えられる。純君がどこに行っても受け入れるわ! だからお願い、無理……しないで」


まただ、みんなしてこのセリフを言う。

ボクは別に、やりたくてやってることなのに。


とーこを好きになった時から、こうなることは覚悟していたつもりだ。

不得意なりに、頑張ってきた。

それでもまだ、届かない。

ねえママ、ボクにはやっぱり、無理なのかな?

とーこを幸せにするなんて。


「私を誰だと思ってるの? 私は財前家の娘、ほしいものはなんだって手に入れたいの。彼を苦しめる真似はもうしない。わかっちゃったんです。私が財前家の跡を継けばいいだけなんだって」


そんなことない、とばかりに彼女はボクの上をいく。

駅でバスを待っていた時に現れたのは、紛れもなくとーこだった。

あんなに財前家が嫌いだったはずなのに、継ぐことを堂々と宣言してしまう。

そう言い切る彼女はとてもまっすぐで、すごく強い目をしていて。

その強さに、お姉さんも何もいえなくてー


「みましたぁ? 今の帰り際のあの悔しそうな顔! 人のもの取ろうとするからこうなるのよ! こうちゃん達にも見せたかったわ」


「……とーこ。なんで、あんなこと言ったの?」


「ああでも言わないと、嫌でも離れないでしょ? あなたに気が合ったようだけど、相手が悪かったわね」


「でも、お家、嫌いなんじゃないの?」


「嫌いよ、家というよりその名前が。だからってあなたが無理をするのは、私が困るの。あなたにはあなたのやりたいことをやってほしい」


「とーこ……」


「それに私が財前家の橙子になったとしても、あなたは一人の私として愛してくれるでしょ?」


ああ、やっぱりとーこには敵わない。

こんなに頑張ってきたボクを、否定することなく受け止めてくれる。

強くて、かっこいい。ボクの大好きな人。


「……大丈夫だよ、とーこ。ボクが頑張ったのはとーこのため、だけじゃなくて、ボクのためでもあるから」


「? どういう意味?」


「ボク、パパとママのお店を守りたい。昔、とーこがここで笑ってくれたみたいに……とーこがいつでも帰ってこられる場所を、ボクがずっと守っていきたいんだ」


ずっと、なんとなく思っていた。

ここにボクがいたら、どうなるかなって。

小さい頃から、同じ景色を見ていたから、自然とそう思ったのかもしれない。


こーがみたいに、コーヒーは作れないかもしれない。

パパも、きっとよくは思ってくれないだろうな。

けれどボクは、ママがいたあの場所をなくしたくない。

アルカンシエルはとーこにとっても、ボクにとっても大切な場所だから。

こんなわがままくらい、許してくれるよね。


「だからボク、これからも隣にいるよ。大人になっても、おじいちゃんになってもずーっと」


「……好きにしたら。まっ、どう頑張っても、店長さんのコーヒーには敵わないと思いますけど」


「そういえば、さっき好きって言ってくれたよね? もっかい言って、ちゃんと聞きたい」


「ぜーーーったい嫌!」


繋いだ手は、どこまでも暖かい。

照れたように笑う彼女はいつにも増して可愛く、愛おしくみえたー


(つづく!!)

おまけの小ネタ

純「ただいま〜戻って来たよ〜|・ω・)ノ 」


橙子「はぁぁ、疲れた( ˘-з-)」


真冬「お疲れ、意外と早かったね」


那月「よかったぁ、戻って来てくれて! 純君が他の子に目移りしちゃったんじゃないかって、心配しちゃったよぉ〜(⸝⸝> н<⸝⸝)」


純「?? なんの話??( 'ω'))


黄河「とぼけんなよ。お前、見知らぬ女とたい焼きくってたんだろ? こっちは証拠写真まであるんだ、シラを切っても……」


純「……あー、家庭教師のお姉さんの話?」


全員「へ??」


純「休憩してた時に撮ったんだ〜今から帰るよって連絡付きで。お姉さんのことは、お店に来たことがあるから、パパは知ってるはずだよ?(˙꒳˙ )」


那月「ってことは、全然浮気じゃないじゃん! て、店長さんわざとやりましたね!?ε٩(๑>ω<)۶з」


藍「はてさて、なんのことやらー( ˙³˙)~♪」


橙子「もう!! しんじらんない!!! 私の苦労なんだったのよ!!ヽ(`Д´)ノ」


明音「もしかして僕達、最初から踊らされてたんじゃ……(^^;)」


真冬「……またしてやられたね、店長にε-(´-`*)」


黄河「相変わらず、師匠には敵わねーな╮(•́ω•̀)╭」


店員全員、策士・藍に溺れる。( ・´ー・`)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ