54.聖なる夜に愛を答える
前回のあらすじ。
芽生えた思いに戸惑う明音を、
アルカンシエルのみんなが励ましてくれた。
シャンシャンと、鈴の音が聞こえる。
レコーダーからクリスマス風なBGMが、鳴り響いている。
赤い帽子、赤いコスチュームに身を纏いながら、入ってくるお客様一人一人に笑顔を向ける。
「いらっしゃいませ、アルカンシエルへようこそ!」
明音です。待ちに待った、クリスマスがやってきました。
冬の一大イベントとあって、店内はとても賑わってます!!
「それにしても、よくこのコスチューム全員分あったね。誰の差し金?」
「師匠に決まってんだろ? 俺は嫌だって言ったんだが、橙子と那月がうるさいのなんの……」
「クリスマスといえばサンタさんかなぁって? 真冬もこう君も、似合ってるね! パンツスタイル!」
「那月は、ロングスカートか……あんまり動き回らないでよ?」
「そして看板娘の橙子はミニスカートですよぉ? かわいいでしょぉ?」
「さすがとーこ、この中で一番可愛い」
「つーか純、何でお前だけトナカイなんだよ。扱いおかしくね?」
「ボクはこのお店のマスコットだからいーの」
クリスマスということもあり、それぞれに合ったサンタコスチュームを着て接客している。
お客さんの入りも、メニューの売れ行きも上々。まさに、絶好調だ。
「聖さーん、これ持って行ってくださーい」
「あ、はい! わかりました」
「妙に落ち着いてますねー。今日告白するとは思えないくらいに」
「えへへ、それがですね……って、なんで藍さんが知ってるんですか!? あの時いませんでしたよね?!」
「なんとなくねー。その様子だと、覚悟決まったって感じ?」
その言葉に、僕は浅く頷いてみせる。
今日というこの日、僕は彼……こうに思いを伝えることに決めた。
それなのに、全然緊張していない。むしろ落ち着いている。
クリスマスは営業日でもあり稼ぎどきだ、休むことなんてできない。
そんな日をあえて選んだのは、みんなの応援や、猛プッシュがあったからである。
閉店後、片付けの時を見計らって彼を休憩室に呼んでくれるという。
不思議だ。あんなに不安だったのに、みんなの声や応援のおかげで、こんなにも力強く感じられる……
「正直、なんて言葉いえばいいか、わかってないんですけどね。僕なりにちゃんと伝えてみます」
「いいんじゃないですかー、そんな感じで。変に飾らず、あなたの言葉で伝えればいいんですよー。そうすることで救われた人もいるんですから」
注文で受けていた追加のコーヒーを、彼が差し出す。
それをお盆にのせながら、僕は頑張りますと返してみせた。
「ありがとうございました〜」
お客さんが、帰ってゆく。
ほっとため息をつきながら、クローズの看板をかけた。
ようやく店じまいだ、中では片付けが進んでいる。
みんなが「ここは任せて」と目配せしてくれたおかげで、僕は先に、彼が待つ休憩室のドアを開ける。
先に来ていた彼は、休憩室のパイプ椅子で休憩していてー
「あーー、やっと終わったな。お疲れさん。ココアついだんだが、飲むか?」
いつのまに用意したのだろう、カップはまだ暖かい。
この優しさに、幾度救われてきただろう。
今でもどこか、不安になる。僕でいいのか、彼の隣にいていいのか。
でも、大丈夫。ここが、アルカンシエルが、僕の力になってくれてるからー
「忙しかったね。やっぱりクリスマスだから、お客さん増えたのかな?」
「だろうな、妙にカップル多かったし。ったく、どいつもこいつもイチャコラしやがって……」
「……こう、あのね。この前の、返事……なんだけど」
こうが、僕の顔を見る。
答えなくていいと言ったのに、とでもいいたそうな顔だ。
それでも僕はいつも通り、彼に話すように、自分の思いを話し始めた。
「僕ね、こうが好きって言ってくれて、すごい嬉しかった。こうにはいつも面倒かけてばっかりなのに。大会に出るって聞いた時も、優勝はできなかった時も、やっぱりかっこいいなって」
「明音……」
「財前さんにスカウトされた時、咄嗟にダメだって言っちゃった、よね。不安、だったんだ。こうがいなくなるんじゃないかって。それでわかったんだ。僕、こうにいなくならないでほしいんだって」
その声に、こうがハッとする。
そして僕は、にこりと笑って手を差し出してー
「僕、これからも……こうの隣にいたい。これが、好きかはわからないけど。僕でよければ、隣にいさせてください」
しんとした沈黙が、流れる。
外から、片付けをするみんなの笑い声や、食器の音が聞こえてくる。
暖かいカップから、水滴が流れてゆく。
どれくらい時間が経ったのだろう、しばらくすると彼はその場にへたりこんでー
「………あーーーー、なんだよそれ。そっちかよ。俺はてっきり……」
「こう!? 大丈夫?! どうしたの!!」
「悪い……断られるのかと思って……めちゃくちゃ困らせてたの、わかってたから……」
「ご、ごめんね、僕そんなつもりじゃ……」
「いいんだな、明音。お前のその返事は、イエスって捉えても……」
顔が、真っ赤になっている。
その目は少し涙ぐんでいて、少し笑ってしまう。
ああ、やっぱりこうはかわらないな。
「うん、よろしくお願いします」
彼を安心させるため、笑顔で彼に答えてみせる。
と、思ったその瞬間ー
「っしゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
彼の高らかな叫び声が聞こえる。
ふいに体を持ち上げられ、状況を理解する間もないまま、視界がぐわんと揺れた。
気がつけば彼の腕の中にすっぽりと収まっていてー
「聞いて驚けお前ら!!! ついに俺も! リア充の仲間入りだ!! ざまあみろ!!」
「おお〜! よかったねぇ、こう君。おめでとぉ〜」
「なぁにがざまあみろ、ですか。いっちばん最後に告白したくせにぃ〜」
「あかね、お姫様みたーい。おめでとー」
「……そもそもちゃんと付き合ってないでしょ。それより、明音をおろしてあげたら? 正直可哀想」
「うっせぇ!! 黙れ!!」
「やれやれ、また賑やかになりそうですねー」
みんなの声が、ヤジのように重なる。
こうしてまた、僕の新たな物語が、幕を開けるのですー。
(つづく!!)
おまけの小ネタ
那月「いやぁ、これで二人も安泰かぁ。頑張ったねぇ、明音君。よしよし♡(⸝⸝⸝ ´˘`)ノ゛」
明音「あはは、あ、ありがとう那月ちゃん……(,,> <,,)」
黄河「……おい那月、明音にさわんな( ・᷄-・᷅ )」
那月「えー、これくらいは多めに見てよ〜」
黄河「この際だからはっきりいうが、てめぇら明音に近すぎんだよ!ヽ(`Д´)ノこいつが優しいからって、ベタベタベタベタ……今日からこいつは俺のもんなんだ、一歩たりとも近づかないように!( ✧Д✧) 」
橙子「えぇ〜? そんなこと言われるとぉ、近づきたくなっちゃいますよねぇ? ねえ〜? あーちゃん(*´∀`)σ)д`*)」
明音「わっ! つ、つつかないでよ橙子ちゃん」
純「あかねの体、あったかーい。ストーブみたい。ぎゅー(っ˙˘˙)っ」
明音「ちょ、純君重たい……(^^;)」
黄河「言ってる側からどいつもこいつも!( #`꒳´ )」
藍「いつのまにか、職場恋愛だらけですねー。この店は」
真冬「独占欲強い人は嫌われるよ、黄河ε-(´-`*)」
明音「二人は見てないで助けてよ!?( ºωº ;)」
賑やか不可避。




