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50.親友以上、隣未満

バリスタ大会に向けて、頑張る黄河。

そんな彼と二人で居残り練習することになった。

「これ、店の残り物で作った賄い。二人で食べてね」


「え、いつのまに! ありがとう那月ちゃん、わざわざ用意してくれて」


「こう君には頑張ってもらわないとだからねっ」


「かといって、あまり遅くなりすぎないようにね。風邪とかひいたら大変だから」


真冬ちゃんと那月ちゃんの背中が、遠のいていく。

見送りながら、渡された袋を見てつい笑みがこぼれた。


仕事が終わった夜、僕は店に残っていた。

というのも、彼の練習に付き合うためである。

残るのは僕と彼だけにもかかわらず、みんな賄いを残してくれたり、労いの声をかけてくれる。

それだけこうを応援してくれてるんだって思うと、すごく嬉しい。

僕もできることをやらないと。そう思い、店に戻るとー


「……やっぱ、これだと濃くなるな……だったら、お湯の温度を高くして……」


そこにあったのは、いつもより真剣な彼の姿だった。

何かをぶつぶつ呟きながら、一心不乱にノートに記している。

その姿につい、目が離せなくなった。


「……明音? どーした? そんなところで突っ立って」


「え!? い、いや、なんでもないよ!」


「外、寒くなかったか? 暖かいやついれるから、これでも羽織って待ってろ」


そういいながら、彼は自分の着ていた上着を僕に投げる。

彼の匂いが、ぬくもりが、じんわりと伝わってくる……


……あ、あれ? この状況、やばくない?

こうって、僕が好きなんだよね……? これって俗にいう、二人きり……というやつなのでは……?!


「あ、あーー! 那月ちゃんが賄い作ってくれたんだって! たべる!? おいしいよ!!」


緊張を紛らわすように、勢いで袋から食べ物を頬張る。

彼女が用意してくれていたのは、おにぎりだった。

海苔で包まれている中からは、僕が好きなしゃけの具が詰め込まれている。

さすが、那月ちゃんだな、なんて思っていたらー


「少しは落ち着いて食え。あちこちについてんじゃねーか」


気がつけば、彼は近くにいた。

なんの躊躇いもなく、ご飯粒をとるように、そっと僕の口元を指でなぞる。

その直後、彼は何も考えずにひょいっと取って自分の口に入れてしまい……


「こ、こここここう!? 何してるの!?」


「あ? ついてたからとっただけだが」


「そ、それ、か、間接キスじゃ……!」


「いや前からよくやってただろ。何急に乙女みたいになってんだ、お前」


「だって! 告白されてから初めての二人きりなんだよ!? 緊張だって、きまずさだってあるし、ずっと親友だと思ってた僕の身になってよ!」


こうとはよく一緒にいた、こうして二人で残ったりするのは、大学時代と変わらない。

そのはずなのに、妙に落ち着かない。

告白されたからなのか、意識してしまう自分がいて……


「お前なぁ、告白したからって意識しすぎじゃね? ま、俺としては悪い気はしねぇけど」


「こうが変わらなさすぎなんだよ……」


「バカ真面目だなぁ。お前はいつも通りでいいんだよ」


「うう……それにしても、さっきのノート、何書いてたの? かなり細かくメモしてたみたいだけど」


「あー、これか? コーヒーの研究ノート。師匠に言われてな。俺は不器用だから、こうすればああなるってのをノートに書いておけって」


そういわれて、なんとなく目を通してみる。

コーヒー豆の特徴や、かけた時間。とにかく細かく記載されている。

ところどころ違う字があるのは、藍さん……だろうか。

描き殴られた乱雑な字だったけど、彼の真剣な思いは、見るからに伝わってきた。


「すごいね、これだけ頑張ってたんだ」


「まあな。ぶっちゃけ受験勉強より真面目にやった気するわ」


「……どうして、そこまで?」


「言ったろ? お前の横に立ちたいって。ま、男の意地、みたいなもんだよ」


その言葉に、ふと彼の横顔を覗き見る。

一見顔色は普通だ、何も変わらない。

それでも、彼の耳が赤くなってるのが、ここからすぐにわかった。

そのことをみて、改めて思わされる。

彼は本当に、僕が好きだったんだと。


僕の隣を歩くため、それだけのために、無理と言われたことに挑戦し続けた。

そんな彼に気づかず、僕はずっと支えられてきた。

むしろ僕のことを気遣って、一緒にいようとしてくれて。

ああ……こうは、すごいな。僕なんかより、ずっと。


「そんなこと、しなくてもいいのに。僕、そんなにすごい人じゃないよ?」


「言うと思った。お前はそーでも、俺が納得しねーんだよ。それに、師匠に認めてもらうまたとないチャンスなんだ。やるしかねぇだろ?」


「こうらしいね、ほんと」


「つーわけで、試飲してくれよ。ついでにラテアートもしてみたんだ、なんの形かわかるか?」


こうはそう言って、僕の目の前にカップを置く。

ほかほか湯気が立つコーヒーの表面には、ラテアートが施されている。

堂々と自信満々な彼の顔をみた途端、少し笑ってしまってー


「えーっと、猫かな? 模様があるから、三毛猫とか? かわいいね」


「あ? どっからどうみても犬だろ。見る目ねぇな」


「えぇ、犬には見えないよぉ〜でも、ありがたくいただきます」


僕の言葉に、こうは最高の笑顔を見せた。

その笑顔を見て、僕も自然と笑顔になる。

彼と、一緒にいよう。明日からの練習も、ずっと。

そうして僕たち二人の夜は、こうしてゆっくり更けていったー


(つづく!)

おまけの小ネタ

とある後日の話。

明音「那月ちゃん、この間は賄いありがとう! すごいおいしかったよ!」


那月「え!? あ、ううん! 気にしないでいいよ、全然!!( ºωº ;)」


明音「??( 'ω')」


真冬「賄い、役に立ったみたいだね」


黄河「あ、ああ。なあ真冬、なんかあったのか? 最近あいつ、妙に俺と明音にだけよそよそしいんだが……( ˘•ω•˘ )」


真冬「それで、自分で食べるのと明音の口から食べるの、どっちがおいしかった?( -∀-)」


黄河「………はぁぁぁ!!?⁄(⁄ ⁄•⁄ω⁄•⁄ ⁄)⁄ おまっ、何でそれ知って……」


真冬「帰ろうとしたら、見て行きませんかって店長が」


黄河「師匠!!!!!!ヽ(`Д´)ノ」


藍「仕方ないじゃないですかー。いいところに望遠鏡が落ちてたんですし( ˙³˙ ) そこに皆さんがぞろぞろ集まってくるんですから、見るのは当たり前ですよねー」


明音「ってことは……みんな見てたの!!?」


橙子「嫌だなぁ、あーちゃんってば。私たちは、応援してるんですよ〜ねぇ?( *´꒳`*)」


那月「ご、ごめんね!! ダメだってわかってたんだけど、気になっちゃって……(>_<)」


純「こーが、頑張ってた( -`ω-)b それで、あの時なんて言ってたの?」


黄河「お前ら全員外でろ外!!( ✧Д✧) 」


アルカンシエル流応援の仕方。

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