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49.アルカンシエルより、エールを込めて

前回のあらすじ

みんなに黄河から告白されたことがばれて、

黄河は大会への決意を固めた。

寒い空気が、頬を伝う。

はぁっと吐く白い息が、店内に流れてゆく。

外は寒い。暖房をつけるほどではないと言っても、この時期はやはり冷えるなぁ……


「明音くーん、ごめん。オーダー、お願い」


「あ、はーい!」


一泊二日の旅行から、一週間が経ちました。

アルカンシエルは、通常通りの勤務に戻っています。

冬になったこともあり、メニューも切り替わり、それに伴って客足も増えている。

そんな中、メンバーが一丸となって行っていることが、一つ。


「店長さぁん、コーヒーお願いしまぁす」


「こっちはキャラメルラテだって。パパ、大丈夫?」


「大丈夫じゃありませーん。ミーはまだカプチーノに苦戦中でーす」


復帰した藍さんを、助けることである。

彼はこうとは違い、手際がそんなに良くない。

コーヒー一つ作るのにも時間をかける主義で、立て込む時は日常茶飯事だ。

こういう時頼りになるのは、言うまでもなく彼だった。


「あ、心配ねぇっすよ師匠。コーヒーとキャラメルだよな、それ持ってけ」


「わー、ありがとうこーが」


純君と橙子ちゃんが、それぞれの注文を持っていく。

その背中を見送ってすぐ、彼ーこうはコーヒーを作り出した。

彼は一週間後に迫った大会に参加するため、現在練習中だ。

てっきり店を休むと言っていたから、ここには来ないと思っていたのだけど。


「……ねえ黄河」


「あ? ホワイトラテか? まってろ、今作る」


「君、店休むって言ってたよね? なんでいるの?」


容赦ない真冬さんの問いに、彼が顔を上げる。

それでも彼ーこうは、いつもの調子で答えて見せた。


「仕方ねぇだろ、俺ドリッパー持ってねぇんだし」


「そうだけど、実家に帰ればあるって話してなかった?」


「実家はねぇわ。お袋が死ぬほどうぜーし。仕事の手伝いもできてるし、迷惑じゃねぇだろ?」


「全然迷惑。むしろ営業妨害」


「んなこと言わねぇで、少しは見逃してくれよ真冬。優勝したら、本でもなんでも奢ってやるから」


「いらない」


いつもの二人のやりとりが、なんだか微笑ましい。

なんだかんだ言ってここが落ち着くのか、こうはやたら店で練習している。

その最中で仕事もしちゃうんだから、本当すごいよなあ。


「でもこう、仕事しながらで大丈夫? 控え室で練習してきていいんだよ?」


「いや、いい。こうやって急いで作るのも、練習になるんだよ」


「あんまり根詰めすぎないでね? 切羽詰まると、こうは無理ばっかするから……」


「なんだ、心配してくれんのか?」


こうが、ニヤリと笑う。

思わぬ不意うちに、つい目を逸らしてしまう。

告白されてからというもの、僕は彼との距離を測りきれないでいる。


あれから彼は、少し変わった。

気持ちを伝えたからなのか、至る所に好意を感じさせてくる。

これが、告白した後の違いってやつなのかな……?


「なら、今日付き合え。居残りで練習してぇんだ」


「う、うん、わかった」


「こうく〜ん、ごめん! コーヒー追加で!」


「おう。ほら、お前も早く行け」


背中をポンと押される。

やっぱり彼は、頼もしい。

けどどこか見慣れないような、恥ずかしいような……うう、なんでこんなことに……


「なぁぁに一人でぼーっとしてるんですかっ」


後ろから、足をカックンとされる。

おもわず、「わぁっ!!」と声が漏れるも、慌てて体勢を立て直した。


「あたた……な、何するのぉ」


「すみませぇん。仕事中なのに、何もしてないのでいらついちゃいました❤︎」


「うう……そんな正直に言わなくても……」


「随分彼を信じちゃってるみたいですけど、優勝するってそんな簡単なことじゃありませんからね?」


そういうと、橙子ちゃんは自分の携帯をみせてくれる。

そこにかかれていたのは、バリスタ大会の概要のようなもので、審査員の名前や、審査項目などたくさんの情報がかかれていた。


「帰りにもいいましたけど、この大会には財前コーポレーションが関わってるんです。それなりの腕前がないと、お父様は認めてなんてくれません」


「そっか、橙子ちゃんのお父さんも審査員なんだっけ。技術点、味覚点……審査項目にも、たくさんあるんだね」


「それに認められたのが、あの店長さんです。優勝するっていうならまず、彼を超えないと」


おもわず、ごくりと唾を飲む。

そういえば、店内の賞状に、そんなことが書いてあった気がする。

やっぱり、藍さんはすごいんだ。そんなすごい人がたくさんいる大会に、こうは出る……


「……まあ、私は割と好きな方ですけどね。彼のコーヒー」


その言葉に、思わず彼女を見る。

目を合わせないように、橙子ちゃんはすぐにそっぽを向きー


「と言っても、店長さんには遥かに及びませんけどねぇ。せいぜい頑張ってください、彼が落ちたら私が色々言われかねないので!」


「ちなみにとーこのおじさんは、苦いのとコクがある方が好きってパパが話してたよ」


「余計なこと言わないでいいの、純ちゃん。ほら、さっさと仕事してくださぁい」


橙子ちゃんが、さっさと行ってしまう。

横で、純君がこちらをみている。

その口はがんばれ、と言っているようで。すっと心が軽くなる。


「いらっしゃいませっ!!」


入ってきたお客さんに、大きな声をかける。

この店ならきっと、大丈夫だ!


(つづく!!)

おまけの小ネタ

開店する少し前の話ー


藍「あー……黄河さんは今日からいないのかー……嫌だなー( ꒪⌓꒪)」


純「パパ、元気ない?(。´・ω・)」


藍「だってー今日からバリスタ、ミー一人ですよ? ミーの仕事激増ですーいじめですー(・ε・` )」


真冬「それくらい黄河は難なくやってたけど。復帰してからもサボってばっかりだったくせに、何言ってるんだかε-(´-`*)」


藍「ミーは繊細なんですよー( ˙³˙ )」


橙子「相変わらずですねぇ〜みんなこうちゃんより、店長さんのコーヒーの方が好きなんだから、少しはやる気だしてよ〜ね、あーちゃん」


明音「……あ、あのう、藍さん……こう、きてます……僕と一緒に……(^^;)」


黄河「よ( ˙꒳˙ )ノ」


那月「あれ!?Σ(゜д゜;) こう君? 休むんじゃなかったの!?」


黄河「こーなるんじゃないかと思ってな。練習ついでに様子見にきた」


藍「わーい、黄河さんがきたー。じゃ、ミーは裏に下がりまーす(。・ω・)ノ゛」


真冬「甘やかしすぎでしょ。君も少しは働いて( ・᷄-・᷅ )」


師弟関係とは。

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