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48.君の思いは灯台下暗し

前回のあらすじ。

アルカンシエルで一泊二日の旅。

最終日の朝、親友だと思っていた黄河に

告白された。

「えーっと、これがお母さん用で、おばあちゃんにはこれでいいかな? あ、やば。弟に買うの忘れた!」


「なっちゃんはまめですねぇ。私なんて、お得意様にお菓子しか買ってないのに。で、純ちゃんのそれは何?」


「自分用。きかんげんてーって書いてたから買ってみた。とーこも、食べる? はい、あーん」


「そ、それくらい自分で食べれるわよ!」


車窓の景色が、次から次に変わってゆく。

その景色を、僕は眺めていた。


一泊二日の旅もあっという間に終わり、僕は一人で景色を眺めている。

席は行きと変わって、隣にいた彼ーこうは純君の隣に座っている。

正直、隣じゃなくてよかった。あんなことがあった手前、顔を合わせづらかったし……


『好きだ、明音』


脳裏に浮かぶのは、今朝こうにいわれた、あの言葉ばかり。

信じられなかった、あのこうが僕を好きだなんて。

今まで恋愛に興味ないとしか、思ってなかったのに……


「相変わらず、騒がしいよね」


声がする。

ふと隣を見ると、本を読むのをやめていた真冬ちゃんが、ため息混じりにつぶやいていた。

後ろの席に座っているみんなのこと、だろうか。

すると彼女はまっすぐ、僕の顔色を伺うように


「妙におとなしいけど、大丈夫?」


と聞いてきた。

それでもいつも通りを装いながら、笑顔を浮かべた。


「つ、疲れちゃったのかな? 大丈夫だよ! 全然!!」


「……黄河と何かあった、とか?」


「ええ!? なんでわかるの!?」


「このところ、少し様子がおかしかったからね」


「さすが焚き付けた本人なだけありますねー、真冬さん。おおかた、黄河さんに告白でもされたってとこでしょー?」


前の席にいた彼の言葉に、え、と声が漏れる。

と同時に、向かい合わせにした席で盛り上がっていた後ろの3人の席から、ガタガタと音がしてきて……


「え、ちょ、今なんていった? 告白!? 誰が誰に!?」


「声が大きいよ、那月」


「だ、だってびっくりして……え、ほんとに告白されたの? 明音君が? こう君に??」


「い、一応本当……」


「きゃーー! やだ、大事件じゃない! てっきり興味ないと思ってましたけど、まさかあーちゃんだとは❤︎」


「そんなことあるんだね〜びっくり〜」


どうやらみんなにも聞こえていたらしい。自分のことのようにはしゃいでいる。

幸いにもこうがトイレで席を外していて、よかった。

まさか全員にバレるとは……


「藍さんは……気づいてたんですか? こうが、僕のこと好きって」


「そりゃあねぇ。それをいうなら、真冬さんもでしょ?」


「昔、お互いの好きな人の話をしたことがあってね。そういう君は、なんで知ってるの?」


通路を挟んで隣の列に一人でくつろぐ藍さんは、こちらを見ようともしない。

車内だというのに、呑気にもらったミルクでラテアートをしようとすらしている。

そんな中、思い出すように口を開いた。


「だってさー、やけに懇願してくるんですもん。ここに雇えー、弟子にしろって。ミー、勘だけはいい方ですからねー。それだけで、なんとなーくわかりました」


「で、でも、相手が僕だってことは言わなかったんですよね? いつからそれに……」


「だってあなた、みるからに特別扱いされてません? 思い出してくださーい。あなた、彼にかなり助けられてますよー」


そう言われて、なんとなく思い出す。

思えば僕は、ずっと彼に助けられてきた。

真冬ちゃんのことで何かあったときも、すぐ気づいてくれて。

あの時もこうは、僕のことをちゃんと見てくれていて……


「言われてみれば……こう君って明音君が食器を運ぶとき、決まって引き継いでるよね。うちらの時は全然なのに」


「そ、それは僕が危なっかしいからでは……」


「そう? ボクお皿何個か割ってるけど、自分で運べってしか言われないよ?」


「昨日もお面の話になった途端に逃げちゃいましたしねぇ。あれってもう、答え言ってるようなものじゃないですかぁ?」


「それなら、そう言ってくれれば……」


「彼も、僕と同じ。そういえば、わかるでしょ」


そう言われて、今まで見てきたものがぐるんと変わるような感覚に陥る。

ずっと、当たり前だと思っていた。

彼がそばにいるのが自然すぎて、全く気づいていなかったんだ。

今あげられたこと以上に、僕は彼に助けられている。

彼は僕のおかげだ、って言っていたけれど。僕にとって彼も、同じなんだ。


「ったくトイレ混みすぎだっつの……なんだよお前ら、まとまってなにしてんだ?」


そんな時、だった。トイレから、こうが帰ってきたのは。

ふと目が合ってしまうも、咄嗟に逸らしてしまいー


「………てめぇら、明音に何をした」


それだけでわかった、とでもいうようにこうが怪訝に顔を顰める。

すると那月ちゃんが、ぶんぶん手をふってみせた。


「違う違う、何もしてないよ! ちょっと話しただけで!」


「告白したんだってね、黄河」


「ちょ、真冬!!」


「もうバレてんのか……まあ、言うにはちょうどいいか」


するとこうは、自分の席ではない席へ向かう。そこに座っていたのは、藍さんでー


「師匠、バリスタ大会に審査員として呼ばれてるって聞いたんすけど、ほんとっすか?」


「なんですー、急に。確かに依頼はされてますけど、ミーはブランクあるしそもそもそんな器じゃないからお断りしますけど」


「それ、絶対出てください。その大会に俺は出場して、そこで優勝する」


その言葉に、えっとみんなの声が重なる。

すると隣にいた橙子ちゃんが、ああと思い出したように声を上げた。


「それって、お父様が毎年主催して、参加してるやつじゃない。こうちゃん、それにでるの?」


「財前のおっちゃんも出るのか。大舞台にはもってこいじゃねえか」


「バリスタ大会って、プロの人とかも参加するあれ……だよね。確かこう君、予選すら受からないって参加すら嫌がってたような……」


「今回はどーーしても参加しなきゃなんねーんだよ。審査員に師匠がいるなら、尚更だ」


「それにしては随分思いきったね。優勝、だなんて」


「お前らを見て、俺も一歩踏み出そうと思ったんだ。必ず優勝する。だから頼む、明日からの店は休ませてほしい!!」


その声に、言葉に、僕は心を動かされる。

かつてこんなに真剣なこうを、見たことあっただろうか。

それだけ必死なんだ。僕に見てもらいたいという、たったそれだけの、理由でー


ああ、なんて不器用なんだろう。

きっと彼は、これまで誰にも気づかれないように、一人で抱え込んできた。

コーヒーの腕を磨いて。苦手なことを乗り越えて。

それが今、大勢の前で思いをぶつけている。


すごいな、こうは。

やっぱり僕は、こうには敵わないよ。


「……仕方ないですねー。いいですよー、別に」


みんなが驚いたように、彼を見る。

言い出したのは、藍さんだった。

彼はラテアートを拵え終わると、まっすぐ彼の目をみてー


「ま、頑張ってください。応援はしますんで」


その言葉に、みんなの顔が引き締まる。

新たな物語が始まる、瞬間だった。


(つづく!!!)

おまけの小ネタ

真冬「それにしても、本当に言ったんだ。正直、なんでこのタイミングって思うけど╮(•́ω•̀)╭」


黄河「うるせえな。そもそも誰のせいで誰のせいでこうなったと思ってんだ( ・᷄-・᷅ )」


那月「まあまあ、二人とも。その辺に。……でぇ? 明音君のどーいうところが好きなの?( -∀-)」


黄河「……あ?」


那月「うち、こう君の恋話、ずぅっと聞いてみたかったんだよねぇ。ほら、いっつも興味無いの一点張りだったし?(・∀・)ニヤニヤ」


黄河「いやいわねぇし。なんでお前らに話さなきゃなんねーんだよ」


真冬「……そういえば昔こういってたよね。馬鹿で一生懸命な奴、とかなんとか」


黄河「おまっ、真冬!!!ヽ(`Д´)ノ」


橙子「えぇ、いいじゃない別に。日頃私たちを馬鹿にしてるお返しってことで❤︎(*´艸`)それでそれで、なんて言って告白したの? 今朝いなかったのって、もしかしてそのせいだったり?(´。✪ω✪。`)」


藍「それなら今朝方、黄河さんが彼を呼び出してー( '-' )」


黄河「師匠!!!!( ✧Д✧) 」


純「そういえばボク達、あかねに店のこと黙ってた理由も聞いてない。こーが教えてくれないなら、あかねが教えて?」


黄河「だーーー! お前ら席戻れぇ!!| `Д´|ノ」


明音(た、大変なことになっちゃった……(^^;))


この後かなり尋問されました。

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