23.捜索の末にみつけたもの
前回のあらすじ。
偶然出会った人がいなくなった元店長な気がして
みんなで探すことになった。
電車が、一駅、二駅と過ぎて行く。
景色が次々に過ぎる中、行き先を示す表示が海湖駅に切り替わる。
ようやく立ち上がり、電車から改札口を出ると、そこにはすでにきていた3人の姿がいた。
「全員揃ったな」
こうが、鋭い目つきを向ける。
まるで獲物を捉えるような獣の目だ、その緊迫感にどこか緊張する。
それもそのはず、ここにいるのは紛れもない、重要任務をこなすためなのだから。
「これより、元店長を捜索線を決行する!!」
強い日差しに、思わず目を細めながら彼を見る。
僕たちは今、店の休みを使って、海湖駅へときている。
理由は簡単。僕が店長に似た人と、会った場所だからだ。
偶然か必然か、彼らが言う店長の特徴は、ことごとく、買い出しの時に出会ったあの人に似ていた。
とはいえ、ちゃんと見たわけではないから、正直自信はないんだけど……
「……その前に、それ何?」
「あ? 網だよ、網。あの人、逃げ足だけは早いからなぁ。捕まえるにはうってつけだろ」
「どうみても虫取り用だよね、それ。そんなので捕まるわけないでしょ。ふざけてるの?」
「ふざけてねぇ!! 大真面目だ!!」
「もぉ二人とも、こんなところで喧嘩しないの〜で、どうやって探すの?」
「まあ、まずは聞き込みだろうね。黒づくめに帽子ていう変わった見た目なら、誰か一人は見ててもおかしくないでしょ」
「そーゆーわけだ。真冬と那月は、東方面をあたってくれ。俺と明音は西から探す」
言われるがまま、僕は彼の後についてゆく。
二人とは16時に落ち合うことになり、それまではそれぞれ聞き込みを続けることとなった。
手掛かりは曖昧な外見と名前だけ。
初めて会った時もいろんな人に見られてたし、よくくる人なら一度は見ているはず。
そう、思っていたのにー
通りすがる人一人一人に声をかけても、求める答えなんて出ない。
それどころか、初めて聞いたと首を傾げる人ばかりで……
「……あれ……ここ、どこだっけ……」
探すことに夢中になりすぎていたのか、気がつくと、見覚えのない景色が広がっていた。
つまるところ、迷子です……とほほ……
「とりあえず連絡……って充電切れてる!! なんで?! ど、どうしよう〜〜〜!!」
「あかね?」
そんな時、だった。
僕を呼ぶ、声がしたのは。
パッと振り返ると、そこには金色に輝く髪が、さらさら揺れていてー
「やほ、2度目まして〜」
緑野純君。財前さんと行動を共にしていた、謎の青年。
金髪で、吸い込まれるほど透き通った緑色の瞳をしている不思議な子。
まさか、こんなところで会えるとは!!
「み、緑野君!! ちょうどよかった!! あの、携帯持ってませんか?! 充電が切れちゃって!」
「けーたいって、これ?」
「そうそう、これ! ってめちゃくちゃ通知きてますよ!? いいんですか!?」
「よくわかんないんだよねー、見方」
「も、持ってるのに……? ああ、でもありがとうございます!! ほんっと助かりました、探し物してたら道に迷っちゃって……」
そう言いながら、記憶していたこうの番号を押す。
鳴らしてる間チラリと見たが、彼は興味すらないというように、持っていたプラカップのジュースをのんびり飲んでいる。
しばらくすると、見るからに不機嫌そうなこうが、「誰?」と聞こえてきて……
「あ、もしもし、こう? 僕、明音、だけど」
『明音だぁ? てめこら、連絡なしにどこほっつき歩いたんだ!!』
「ご、ごめんって! なんかいつの間にか、知らないところに来てて! 連絡しようとしたら充電切れてたんだよぉ〜」
『アホかお前は。こっちは真冬も那月ともとっくに合流してるっつーのに……で? 進展は?』
「ううん、こっちも全然……本当にいるのかなぁ、御領原藍さん……」
かしゃん、と音がする。
びっくりして振り向くと、彼が目を丸くしてこちらを見ていた。
握っていたジュースは、真っ逆さまに地面に落ちている。
どうしたの、と声をかけようとした、その時ー
「……あかねも、らんのこと探してるの?」
「え、う、うん? ……って、純君、御領原さんのこと、知ってるの?!」
「うん、知ってる。その人がどんな人か、その人がどこにいるかも」
そういうと、彼は僕の手をとる。
吸い込まれそうな緑色の瞳が、こちらを真っ直ぐ向いていてー
『おい聞いてるのか明音? 迎えに行ってやるから、今どこにいるかおしえ』
「ごめん、今忙しいから。行こ、あかね」
一台の車が、けたたましい音を立てて近づいてくる。
気がついた時には、すでにこうの電話は途中で切られていたー。
§
「おい明音? どこだっつってんだ、明音!!!」
黄河の怒ったような、鋭い声が響く。
何事かと思いながらも、飲み物を買おうと自動販売機にコインを入れる。
集まる約束の16時。彼女達はすでに、合流していた。
店長をここでみた、根拠もない明音の言葉を信じて探したはいいものの、これといった情報は得られずじまい。
本当にここにいたのか疑ってしまうくらいだ。
那月も疲れ切ったのか、持ってきていたハンディー扇風機で涼んでいる。
そんな彼女にあげようと、同じ炭酸飲料を2本手に取った。
「はい、那月」
「あ、ありがとう、真冬。いやぁ、やっぱ真夏に歩き回るのはきっついねぇ〜。それにしても、明音君遅いね」
そういう彼女の目線は、電話してる黄河に向いている。
何を話してるのかはわからないが、さっきから叫んでばかりいる。
周りに見られるというのに、と若干迷惑そうにみていると、彼は大きく舌打ちをした。
「くっそ!! きられた!!! 誰だよこいつ!」
「うるさいよ、黄河。明音、なんだって?」
「道に迷ったらしい。誰かから借りたんだろうが、人が場所聞いてる最中に切りやがった」
「え、それ大変じゃん! 試しにその番号にもっかいかけてみたら?」
那月がいい終わる前に、彼はすでに携帯を耳に当てている。
相手からかかってきたというのに、何度もコールしてもでる気配すらない。
「なんででねーんだよ! こいつ!!」
「っもう! この子ったら! ぜんっぜん電話取らないじゃない!」
怒声が重なる。
振り返るとそこには財前蜜柑がいた。黄河と同じように、携帯片手に怒っている。
思わぬ再会に、2人はハッとしたように顔を見合わせた。
「てめっ、財前!? なんでここに!」
「き、奇遇ですねぇ? こんなところで何してるんですかぁ? あ、もしかして遊んでるのぉ? やだぁ、余裕〜」
「てめぇには関係ねぇだろ!!」
「ねえ財前さん、この辺で黒の服着た、金髪の人みてないかな? 御領原藍って人なんだけど。探してたら、明音君とはぐれちゃって」
「おまっ、那月!!」
ここで彼のことを聞けるのは、那月の起点のきくところだろう。
今はとにかく情報が欲しい、おそらく元店長のことをいったのも、何か知っているかもしれないと思ったためだろう。
協力してくれるとは思わないのか、なんでこいつに、とばかりに黄河が睨んでいるが。
「……御領原、藍……? まさか、あなた達も……?」
すると彼女は、何か考えるような動作をする。
しばらくして合点がいったのか、わざとらしく咳払いしてみせる。
「その人の居場所なら、蜜柑知ってますよ?」
「はぁ? なんでてめぇが知ってんだ。まさかお前が2人に何か……」
「あなたたち、御領原藍って人に会いに来たんですよね? 蜜柑の勘が正しければ、明音って人も、その人にあってるかもしれませんよ?」
その言葉に、みんながハッとする。
そのことがわかったのか、蜜柑はにやりと笑って見せた。
「蜜柑をお店に連れてってください。積もる話は、そこでぜぇんぶ教えてあ〜げるっ♪」
明らかに何かを知っているような笑みのまま、彼女は舌を出す。
黄河は悔しそうに拳を固め、彼等と顔を見合わせる。
2人も同じことを考えてるのか、お互いに頷き合いー
「……わかった。そこまでいうならつれてってやる」
「やったぁ、ありがとうございまぁす❤︎」
「言っとくが、お前を信じたわけじゃねえ。明音が店にくるっつー可能性を、信じただけだ。洗いざらい全部話してもらうぞ、財前」
蜜柑が、不吉に微笑む。
その彼女の携帯の画面には、不在の下に「純」の文字がずっとでていたー
おまけの小ネタ
明音がいなくなりました。
黄河「こうなりゃあれだ、探しに行く!!( • ̀ω•́ )✧」
那月「えっ、今から!? どこにいるかもわからないのに、危ないよ!アタフタヾ(・ω・`;))ノ三」
黄河「明音の方が心配だろ! 拉致とか誘拐だったらどーすんだ!(`⊙ω⊙´)カッ!!」
真冬「少しは落ち着きなよ。ここで僕たちまではぐれたら、元も子もないでしょ?ε=(・д・`*)それに、彼がそんなことになるわけ……」
明音『ええっ!? 子供が誘拐された!? い、今すぐ助けに行かないと!!\(; ºωº \ Ξ / ºωº ;)/
大変、こうが病気に!? お金が必要!? すぐに振り込んできます!!=͟͟͞͞( ˙-˙ )ง』
真冬「……いや、彼ならあり得る、かも( '-' )」
黄河「だろ!!? やっぱ探しに……」
那月「2人とも落ち着いて〜!(^^;)うちらまで行ったら、余計ややこしくなるでしょ〜!」
このあとちゃんと連絡がありました。
明音「僕のことなんだと思ってるんですか!?Σ(゜д゜;)」




