22.最後の悪あがきをしよう
前回のあらすじ。
買い出ししていたら、少し変わった人に出会って
その人からアドバイスをもらった。
「みんなぁ〜レビュレビュでうちの店にコメントついてるんだけど、みた?」
那月さんの声が、店内に響く。
店の片付けをしながら、僕は彼女の方へ目を向けた。
あの買い出しから一週間。今日も今日とて、アルカンシエルは経営中だ。
新メニューが功をなし、お客さんも徐々に増えてきている。
まさに、絶好調まっしぐら! って思ってたんだけど……
「れびゅれびゅ? それ、なんですか那月さん」
「レビューサイト。商品やその店について、自由に評価や感想をつけれるんだよ〜最近、うちの店にも色々かかれてるんだ〜」
そういうと、彼女は僕に自分の画面を見せてくれる。
そこにはうちの店の外観や、メニューなど様々なものが写真で紹介されている。
下の方には、コメントという欄があり、総じて星で評価するところもある。
読めば読むほど一緒に覗き込んでいたこうの顔は、ますます険しくなってー
「おいちょっと待て。アルカンシエル……星2.5……だとぉ?」
「け、結構厳しいんですね……」
「まあ、そんなもんでしょ。こうしてつけてくれてる人がいるってだけ、ありがたいと思うけど……悪いコメントの方が目立つね」
「そーなの! しかも全部同じ人でさ〜TOKOってアカウントなんだけど、なかなか痛いとこついてきてるんだよねぇ。客待たせすぎとか、メニューの豊富さが足りないとか」
「なんだそいつ。喧嘩売ってんのか?」
あれ、そのこと……前に財前さんに言われたことと同じような……
まあでも、ただの偶然だよね。とうこ、ってのも、彼女の名前とは違うし。別人別人。
「あ、でもちゃんといいのもあるよ! 演奏会良すぎた、また行きたい、とか!」
「へへへ、なんだか嬉しくなっちゃいますね。真冬さん」
「それ、店の評価関係ないでしょ。すぐ浮かれないの」
「あとぉ、昔やってたバーを思い出した。御領原さんのコーヒーを、また飲みたい」
聞き慣れない単語に、首を傾げる。
その名前に聞き覚えがあるのか、二人は気まずそうに顔を見合わせる。
瞬間、こうがカウンターの机をドンっと叩き出しー
「やっぱり必要みたいだな、あの人の力が」
「必要って……まさか、連れ戻す気?」
「そのまさかだよ」
「あー、そっか! その手があったね!」
「あのぉ……あの人、って?」
「そういや明音には言ってなかったよな。俺は所詮、雇われの身。元々ここには、店長がいたんだ。それが、御領原藍」
そう言われて、彼が僕に言っていたことを思い出す。
こうが店長として働き始めたのは二年前、って言っていたけど……あれ、そういうことだったのか。
お客さんから名前が出るってことは、その人、結構すごい人なのかな??
みんなもどこか、納得してるし……
「僕、前の店長さんのこと、何も知らないんだけど……どんな人なの?」
「よく聞いてくれたな、明音。あの人は、神も同然だ!!!」
その言葉に、へ? と声が出る。
若干真冬さんが、また出たとばかりのため息をついているのがみえる。
そんな彼女に気づいていないというように、こうはなおも語り出した。
「あの人は、とにかくすげぇ!! どんな困難でも、果敢に立ち向かってゆく! 誰が決まって絶対ゆらがねぇ。堂々たる精神力はまさに店の希望そのものっつってもいい」
「は、はぁ……」
「それだけじゃねぇ。物事の本質を見抜く深い洞察力で、人の悩みをすぐに見抜いちまうんだ。常に進むべき道をその背中で示してくれる姿は、まさに神……」
「黄河、その辺に。明音引いてるから」
真冬さんの一言が、彼の興奮を一瞬にして収めてしまう。
正直、びっくりした。こんなに彼が話すところ、見たことなかったから。
好きなものを語りだすと止まらない、っていうけれど、こうもそんなことあるんだ。
ちょっと度が過ぎてる気もするけど……
「えっと、真冬さんと那月さんもお会いしたことあるんですよね? そんなにすごい人なんですか?」
「すごいっていうか……まあ、面白い人ではあったかな? あんま覚えてないんだよね〜うちら、ほとんど入れ替わりで入ってるから」
「一言で言えば変人かな。正直関わらない方がいいよ。僕には黄河がここまで心酔してる理由が、まったく理解できないから」
つまり店長さんと関わりがあったのは、こうだけってことなのかな?
話を聞けば聞くほど、どんな人なのか検討がつかない……
「まあ、でも彼のコーヒーの腕だけは確かだったかな。昔の常連さんは、ほとんどそれが目的だったみたいだし」
「ほえ〜そうなんですね。じゃあもし戻ってきたら……」
「客足は確実に伸びること間違いなしっ! ねえ、こう君。店長さんに連絡、できないの?」
「あー、それがなぁ……俺が店長ついだ二年前に、店を辞めるって言い出してそれっきりなんだよ。こっちから連絡しても、全然音沙汰なし。家族の人もぱったりこなくなっちまった」
そう、だったんだ……
店長さん、どうしたんだろう。
急に店を辞めなきゃいけないほど、何かあったのかな……
「あれからずーーっと探してはいるが、まったくもって進展なし。つーわけで、お前らも手伝え。写真はないが、特徴はしっかりと覚えてる。メモっとけ」
「う、うん、わかった!」
「まず、1に金髪。髪が驚くほど長くてな、この中じゃ那月以上かもな。下ろしてる姿はめちゃくちゃ綺麗だった」
ふむふむ、長髪で金髪っと……
「そして2にタレ目。背は……おそらく高くはねぇな……いつも猫背だったし」
なるほど、タレ目に猫背……
……あれ、おかしいな。なんかこの特徴、どこかで見覚えが……
「今思えば、本当変わった人だったよね。私服も黒とか紺とか、地味な色ばっかりだったし」
「うわぁ、だっただった!! 懐かしいなぁ! 独特な話し方しててさ。なんなんですかー、みたいな! 語尾を伸ばす、っていうのかな?」
「あああああああっ!!!!」
思わず、声を上げる。
まさか、そんなことあるのだろうか。
いやでもこんなに特徴が当てはまることなんて、滅多にないだろうし……
「ぼ、僕、会ってるかも……その店長さん……」
「は?? いつ? どこで??」
「……この前の買い出し帰り、だったかな? 倒れた人がいて……介抱した時に、公園で少し話して……その人と話し方とか、特徴が似てるなぁって。あ、でも帽子をかぶってたから、長髪かはわからないけど……」
その言葉に、みんなが顔を見合わせる。
そしてこうの顔色が、どんどん明るくなっていきー
「行くぞ、お前ら。あの人を探しに!!!」
(つづく!!)
おまけの小ネタ。
明音(御領原藍さん……ここまでこうを熱弁させる相手……あの人が、そうだったのかな……?(;-ω-)ウーン)
那月「片付け終わったよ〜、みんな〜帰ろ〜」
明音「あ、すみません。今、こうに店長さんの詳しい話を聞いてるので、ちょっと待ってもらえませんか?」
真冬「話ねぇ……|ω•˘ ) それにしても……」
黄河「……と、ここまでがあの人のコーヒーの話な。次に、洞察力がすげーって話だが……ベラベラ」
真冬「よく喋るね。さっきと言ってること、ほとんど同じなのに……聞く意味ある?( ・᷄-・᷅ )」
明音「き、切り上げるのも申し訳なくて??(^^;) あ、僕戸締りするんで先帰ってどうぞ!」
真冬「君も大変だねε=(・д・`*)ハァ…」
那月「ほんと、こう君はブレないなぁ〜(*^^*)
意外な一面、発掘( • ̀ω•́ )✧




