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偽善の聖人、教祖になる  作者: チョコクリーム
2.『罪人と、代理人と、モンスター』
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アンズの洗礼

 

 僕達は今、少し()()な家具販売店である"アンズ"に来ていた。ラナミさんの家具を買いに来たのだ。

 普通の家具販売店もあるにはあるが、規模などを考えるとアンズに一歩二歩劣ってしまう。それに"特殊"と言っても、悪い意味ではない。


 では、どう"特殊なのか、と言うと実は僕も知らない。なにせ、さっき言った情報は全てラナミさんから聞いたものだ。

 中途半端に情報を与えたのは僕を驚かせたいかららしい。


「ユトくん、ここがアンズだよ。…どう?凄いでしょ?」


「はい…まさかここまで大きい建物だとは思わなかったです」


 アンズは、10階を超える教会にも及ぶレベルの高さを持つ建物だった。家具販売店ってそんなにスペースを取るものなのだろうか?


「なんとアンズはね、代理人に噂されているんだよ!あんな高い建物は一体なんなんだっ!ってね。教会に次ぐレベルの建物なんか中々無いしね」


「噂、ですか。例えばどんな?」


「…あの建物には、代理人を容易に滅ぼせる兵器が隠されていて、いつでも勝てる状況を楽しんでいるんだ…とか、…あの建物は足が地面に埋まっていて、いつか動くようになるんだ…とか」


 ラナミさんは、噂の内容を言う時だけ声を少し低くして言った。代理人の声を真似ているんだろう。真面目な顔で演技している姿を見て可愛いと思ってしまった。


「実際は、ただの家具販売店なのにねー。面白くない?」


「…あ、あぁそうですね!」


「?とりあえず中に入ろっか。ユトくんが先に行ってね」


「え、なんでですか」


「いいからいいから!ほら行った行った!」


 なんとも言えない感覚を味わいながら、扉を開けて中に入った。その瞬間、どこからともなく同じ見た目のおばさんが5人現れた!


「こんにちは、私はアン!」


「こんにちは、ワシはアンじゃ!」


「こんにちは、我はアン!」


「こんにちは、あたしはアン!」


「こんにちは、拙者はアン!」


 息をする間もなく言葉を()()()()()()|固まる僕を後ろから笑う声が聞こえた。

 先に行けってのはこういうことか…。ラナミさん、この借りは必ず返しますよ…。


「「「「「誰が本当のアン・アンか当てられるかな!」」」」」


 同じ見た目で同じ声なのに、口調が違うの怖すぎる…。同時に喋られると頭がおかしくなりそうだ。


「…ラナミさーん!助けてください!」


「…ふ、ふふふ…。ユトくんの反応が面白かったし、いいよ」


「ラナミさん帰ったら覚悟してくださいね…」


「えっそれって…?」


「なんでちょっと顔赤くしてるんですか」


「違うし!別になんともないですけど?それより今はアンさんでしょ?…ふぅ、アン・アンさんは右から2番目のアンさんですよね?」


 右から2番目っていうと…一人称があたしの人か。一人称だけで分かるほど簡単なものだとは思えないし、何で判断してるんだろう?


「ピンポーン!今回はあたしがアンよ!最近来てくれなかったからてっきり忘れられたのかと思ってたけど、ちゃんと覚えてくれてて嬉しいわ!」


「忘れるなんて、そんなことないですよ!ただ忙しくて会いに行けなかっただけで、一日たりともアンさんの事を忘れたことはありません!」


「あらあら…すっかり大人になっちゃって…。ババアなんて呼ばれてたことが昨日のようだわ」


「それは忘れてください!」


「ちなみに、他のアンも分かるかしら?」


「左から1番目がアン・パンさん、2番目がアン・ゼンさん、真ん中がアン・ソクさん、1番右がアン・ライさんですよね?」


「全問正解、さすがだね!それでこそ()()ライミね!」


「こら、パンよ。ライミはお前のものでは無いぞ…()()()ライミじゃ!」


「はっはっは、そう争うな。ライミは()()ライミにしかなり得ないのだ、嘘つきどうしで争うでない」


「ソクも随分デレるようになりましたね。やはり長い間会えなかったからですか?…それと、ライミの真の理解者は拙者なので。つまり()()()ライミと言っても過言では無いのです」


 …何この光景。アンさんの見分けとか付かないせいで、同じ人が5人いて全員ライミさんを取り合っているように見えるんだけど。

 もしかして、ライミさんって…。


「ライミさん、そういう趣味なんですね…」


「ユトくん!?」


「大丈夫です、僕はそういうの差別とかしないので安心してください」


「そういう趣味が何か分からないけど、絶対勘違いしてるよね!?」


「えっ?ラナミさんって、女性が好きなんですよね?ライミ様にも特別な視線を向けていましたし、今だってアンさんに向ける目は…」


「違うから!!ちゃんと男の人が好きだから!…例えば、ユトくんとか!」


「ラナミさん…」


「ユトくん…」


「その誤魔化し方はないですよ…やっぱり男に興味無いんですよね?だから例をあげようとしても僕しか出てこないんですよ」


「そうじゃなくて!?私はユトくんのことが…!って待った!!」


「あぁ、ついに認めるんですね…」


「いや違うけど!違うけども!うあぁぁぁ!!!」


「「「「「ラナミがいつの間にか奪われてる!!!」」」」」



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