〈補助官〉の仕事
「ラナミさん!?どうしてここに…」
「ユトくんが昇格すると聞いて、飛び出して来ちゃった」
「えぇ…。でも、なんでラナミさんが僕を指名するんですか?」
「ユトくんは、目的覚えてる?」
「目的…ライミ様とラナミさんと話した時のあれですか?」
「そうそう、ユトくんを強くするって話。で、どこの誰とも知らん奴にユトくんを渡すことなんて出来ないって思ったの。そういうことだから、よろしくね?」
ラナミさんは、とびきり可愛い笑顔でそう言った。思わずはいと言いそうになったけど、何とか踏みとどまった。
「あざといですラナミさん」
「もう、素直に可愛いって言えばいいのにー。あと、私以外の〈司教〉はバリバリ君を雑用に使うかもだから、クエストとか出来なくなるかもね?」
「え…」
「その点、私は安心だよ?それにサポートも出来ちゃう。こんなお得な話なんて中々無いよー?」
「うーん…」
よくよく考えたら別に断る理由もないんだよなぁ。それに、お得なのは事実っぽいし。
「じゃあ、お願いします」
「うむ」
話が一区切り着いたのを見て、受付の人が話しかけてきた。
「この紙に〈司教〉と〈補助官〉のサインをお願いします」
「それだけでいいんですか?」
「はい。この制度は、色々な事情でペアを変えなければいけない時があるので、一々面倒な手続きなんかしていられないと考えたら上の方が簡略化させた、という歴史があります」
「なるほど」
「仕事の内容についてはラナミ様が説明してくださいますので、必要な手続きはこれで終わりです。ユトさんのより一層のご活躍をお祈りしています」
「ありかどうございます」
仕事か…あまりいいイメージはないな。やったことは無いけど。
「それじゃあユトくん、行こっか」
「え?行くってどこにですか?」
「それはもちろん、私の部屋だよ?」
何となくだけど、ゴミがいっぱい散らかっているような汚部屋を想像してしまう。そんな様子を気取られたのか、訝しげに見つめられる。
「ユトくん、変なこと考えなかった?」
「いえ、そんなことは。それより、早く部屋に行きましょうよ」
「そう、そういうことにしてあげる」
教会は、2階が客間などの部屋で、3階がスキルなどが設定できる水晶の部屋、特殊な部屋で、4階からは階級が〈司教〉以上の人が住むことが出来る部屋がある。
4階の隅っこにある部屋がラナミさんの部屋だった。
結論から言うと、汚部屋ではなかった。
ただ、良い部屋とも言えなかった。何故かというと、何も家具とか無かったのだ。生活感が感じられないというか、必要最低限の物しかない感じ?
「今までよく生きていられましたね?」
「それは酷くない!?私だって頑張ってるのに…」
「いや、だってさすがにこれは…」
「仕事が忙しくてあんまり使ってなかっただけですー。決して生活力が無いとか、そういった理由ではありませーん」
「これからは使うってことですか?」
「そゆことー。そのために君を呼んだのだよ!」
「…まずは、テーブルとか買いましょうか…」
「あ…はい……」
さすがに荷物がポツンと置いてあるだけのまっさらな部屋を見ては何も言えなかったようだ。さて、買うぞー!
いやぁ、人の金で高い買い物をする時ほど幸せなことってないよね。さすがに僕の所持金じゃあ家具を買うことは出来ないし、しょうがないことだからね、しょうがないしょうがない。
「なんか欲しいものとかあります?」
「うーん、まずはベッドとか?あとソファも欲しい!」
「ベッドにソファと…他には?」
「あー、事務用机みたいなのとか?後紅茶を入れるやかんみたいなやつ!」
「事務用机と……あー、あれですね分かります分かります」
「なんか名前が出てこないんだよねー」
「後は必要そうだったら買う感じで良いですか?」
「そうだね!金はいっぱいあるし、パーッと使っちゃおう!!」
「はい!…ところでラナミさん、僕を見てなんか思いません?」
「ん?……んー、かっこいい?」
「なんで疑問形なんですか。いやそうじゃなくて、メモを取っている所とか、補助官っぽくないですか!?」
「…どっちかって言うと、秘書?」
「えー…」
秘書はスーツとか苦しそうであんまりだな。
「話戻しますけど、買い物いつ行きますか?僕はいつでも空いてますけど」
「話逸れたのユトくんのせいじゃ…。予定はー、私も仕事はしばらくないから空いてるかな。っていうか、今日で良くない?」
「あー…」
部屋をぐるっと見回す。…確かにこの部屋で過ごすのはちょっと可哀想だし、今日買った方が良いか…。
「ちょっとユトくん、急に憐れむような目で見ないで!私そういう趣味無いから!?」
「ん?」
「あ、いや、これはその違くて…」
「あぁ、はい、分かりますよ」
「さっきより憐れみが強くなった気がする!?」




