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2-5・ミドリは地図を作っている

 なんか薄汚れてて、疲れているように見えます、と、おれが単に思っただけのことを、クルミはミドリにずばずば言った。


「あ、本当?」とミドリは言って、すぱさ、と両手を頭の上から腰のあたりまで下ろすと、全体にドブネズミ色がまじったうす赤い、春っぽいコートと、青系統のスカートを含むアンダー、それに全身が、ぴか、というレベルできれいになった。


 そして、腰につけていた小さなバッグ(ワイバーンぐらいの大きさでも平気で入るような、魔法道具としてはポピュラーな例のやつ)の中から、瓶に入った青い液体を、腰に手を当てながら半分飲んで、おれに言った。


「ポーション!」


 言われなくてもわかるけどね。


「この程度の疲れなら、こんなもん飲まなくても、魔力で回復できるんよ。いろいろ読者サービスと思いねえ」


 読者サービスって。


 読者なんているのか。


「ということで、これが、私が歩いて調査したこの町の地図なのね」


 ミドリは指で半径50センチの円を空間に描くと、蛍光ブルーの円周が浮かび、その中に、おれたちの学校を中心に、半径500メートルの地図があらわれた。


「どうもやっぱ縮尺がおかしいのね。学校は正確には、この地図だともっと大きい面積になるはずなんよ」と、ミドリは首をかしげた。


 おれは、公園にある点滅している青い点、それにあちこちにある点滅しているオレンジ色の点、それに点滅していない緑色の点が気になって、聞いてみた。


「青いのはカラス、オレンジはネコ、それに緑のはゴミ収集所なのね。ほかの小動物の巣とか縄張りも調べてたら遅くなっちゃった」


 それであちこち汚れてたり、クモの巣がついてたりしたのか。


 ミドリは、魔術的な方法で空中に浮かんでいたその地図の隅をもち、ばり、と剥がすと、ヒトの手による紙に印刷した地図と同じようなものになった。


 四角形ではなく円形だけど。


 ワタルは飛び上がって喜んだ(ちなみに、まだ服と体は泥と土と草でボロボロである)けれど、おれとクルミはそれほどでもなかった。


 いや、クルミの気持ちはわからないけど、とりあえず敷物にして体育座りをしているぐらいだから、わーい、と喜んでる感じでもないだろう。


 おれも同じようにして腰をかけた。


 ミドリは、東西南北を確認して、よし、ということで、地図と方角をあわせて、足を伸ばして地図的敷物、いや、敷物的地図に座った。


 ワタルは地面に直に、あぐらをかいて座っている。ワタルの服は黒に泥の暗茶色が混ざった忍者仕様の服なので、特にパンツが見えるということはないのである。


「そういえば、みんな、お風呂に入ったりしないの?」と、おれは聞いてみた。


「お風呂……沐浴か……?」とワタルは言った。


「お望みなら、この泉の水を使って、露天風呂を作ることもできるけど。やってみるのん?」


 おれは、ミドリが携帯端末で計算した数字を見た。


「高いな!」


 普通の家のガス代・お湯代の1000倍ぐらいする。


 それは確かに、ずっと温かいお湯を流し続けたら、そのくらいの額にはなるだろう。


 しかしなんでも、魔力じゃなくて金力で計算できるんだな。


「拙らは、別に入浴・沐浴しなくても、魔力で服および全身をきれいにすることができるのだ」と、ワタルは言った。


「わたしはお風呂が憎いです!」と、クルミは立ち上がって言った。


 何なん、いったい。


 むしろ大浴場、好きなタイプじゃないのか、クルミって。

登場人物たちの高校って、具体的にはどこなの、と思われる人が、ひょっとしたらいるかもしれませんけど、漠然と「北関東のどこか」ということにしてあります。モデルは埼玉の「浦和西高」だったんですけど、地理的にはいろいろ不都合な部分は変えています。あと「大学の付属高校」設定なので、姉妹校が4つある、というのは裏設定として、そのうち出てきます。

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