第37話 結婚式に向けて
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2日後の昼頃、おじいちゃんが《りんごの木》にやって来た。
「おじいちゃん! いらっしゃい!」
「おぉ、ましろちゃん! 会いたかったぞ! 大きくなって!」
「5月に会ったところじゃん」
私は笑いながら、おじいちゃんをお店の前で出迎えた。
おじいちゃんは田舎の家では白いTシャツにステテコ姿が多いけれど、今日は爽やかなグリーンのポロシャツとかっこいいデニムを身に付けていた。白髪まじりだった髪も、きれいなグレイヘアに染めてある。おばあちゃんを迎えに来るために準備したのかなと思うと、ちょっとかわいい。
私がおじいちゃんからお土産のお菓子を受け取っていると、りんごおじさんが遅れてお店から出て来た。
「父さん、長旅お疲れ様です」
「凛悟……すまんな。迷惑をかけて」
「いえ。いつかお店に呼びたい……とは、思っていたので」
りんごおじさんの目が魚のように泳いでいる。おばあちゃんが来た時と同じだ。なんとなく遠慮しているような、気まずそうな感情が端々にも滲んでいる。
お母さんが、おじいちゃんとおばあちゃんに接していた雰囲気とはちょっと違う。お母さんは2人に遠慮なく意見を言い、時には無茶なお願いだってしていた。おじいちゃんたちはお母さんのそれを満更でもなさそうに受け止めてくれていたようにも思う。
けれど、多分。りんごおじさんは「そういうこと」をしない気がする。
どちらがいいとか悪いとかじゃないけれど――。
「こんにちは~!」
私が一瞬考え事をしていると、お店の前に乙葉さんがやって来た。ベビーカーの中のまゆりちゃんは、ミニ扇風機の風を受けながら、スヤスヤと眠っている。
「乙葉さん。暑い中ありがとうございます。お入りください」
りんごおじさんがおじいちゃんと乙葉さんに移動を促す。いよいよ本格的な準備の始まりだ。
「おじいちゃん。結婚式、成功させようね!」
私はおばあちゃんの喜ぶ顔を思い浮かべながら、顔の前でぐっと強く拳を握りしめた。
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そして、夕方。
夜ご飯は《りんごの木》で食べようねと約束をしていたので、おばあちゃんをお店の前に来てくれた。今日はひとりカラオケを楽しみ、おしゃれなカフェでお茶をしていたらしく、おばあちゃんはとてもご機嫌だった。
「お腹が空いたわね。どんな料理があるのか楽しみだわ」
「あ、待って! 今夜の《りんごの木》は、ドレスコードがあるんだよ!」
「ドレスコード? 服装が決まってるってやつよね? そんな面倒なこと、凛悟が決めたの? いやだわぁ」
「め、めんどくさがらないで。今日だけだから。お願い」
今にもりんごおじさんに文句を言いに行きそうな勢いのおばあちゃんを一生懸命になだめると、私は《りんごの木》のバックヤードに案内した。ここは本日限定で、おばあちゃんの控室だ。
「おばあちゃんの衣装はこれ! ごめんね……、ショーウィンドウで見てたやつは高すぎて用意できなかったんだ。でも、とっても似合うと思うから……!」
戸惑い顔のおばあちゃんに、私は服屋さんの紙袋を渡した。
「ましろ、これは──」
紙袋の中を見たおばあちゃんの瞳がキラキラと輝いたのを、私は見逃さない。
「ヘアメイクさんとお花係さんも呼んであるから! 私はお店で待ってるね!」




