第4話「戦士達の秘密」
「よしっ、我ながら最高の出来!ミズキさんを起こしに行かないと」
ある日の朝、いつものように朝食を作り終えた葵はミズキを起こすために部屋へ向かう。
「ミズキさん、朝ご飯出来ましたよ……って、いない!?
何で?あのミズキさんがこんなに朝早く……!」
部屋にミズキの姿が無かった事で、葵はアジト内を見回る。
「……」
「あ、こんな所にいた」
当の本人はメカニックルームで作業をしていた。
「……ん、来たのか」
「ミズキさん、朝ご飯出来ましたが……何をしてたんですか?」
「あぁ、今日は本部へ行く日だからな。
そのための準備だ」
「本部……まさか定期決起集会って今日だったんですか!?」
以前ソフィーが話していた定期決起集会の日。
今日がその日だった。
「えっ、ファイトストライカーで行くんじゃないのですか?」
「ファイトストライカーだと時間かかるからな。
そこんとこは、飯を食ってからだ」
一通り作業を終えたミズキは、葵と共にメインルームに戻り朝食を摂る事に。
朝食を食べ終えた2人はWGST制服に着替えると、以前回収した機械戦闘員カプセルが入ったアタッシュケースを持って、再びメカニックルームに。
「ところで、一体何で移動するんですか?」
「あれさ」
「あれって……ええっ!?」
そこで葵が見たのは、ファイトストライカーを機内に収納する巨大な戦闘機だった。
「ミズキさん、このジェット機は……?」
「WGST専用戦闘機、ジェットブレイバーだ」
「ジェットブレイバー?」
「ほら、乗るぞ」
「えっ、ちょっと待ってくださいよ……!」
「ジェットブレイバー」と名付けられた戦闘機に乗る2人。
コクピットの中は操縦席の他に、全部で6人が座れるだけの乗車席が備わっている。
「ジェットブレイバーキー、セット。よし、行くぞ本部へ!」
起動に使う「ジェットブレイバーキー」を操縦桿に装填すると、機体は地下を降りて特別発射口に辿り着く。
そこから海底に飛び出し、浮上して上空を飛行し始めた。
「飛んだ……!まさかアジトに、こんな飛行機が眠っていたなんて……」
「本部まで1時間くらいだ、行くぞ」
本部へ向かい、ジェットブレイバーは空を飛ぶ。
「そろそろか。よし」
上空を移動して約1時間、目的地に近づいた事を知ったミズキは、ジェットブレイバーをとある海岸へ向かって進行させる。
「えっ、どうして海に!?
そういえば、アジト出る時も海通ったような……」
「このデカい機体を侵入させるには、海しかないだろ」
再び海底に入ると、深海にある特別侵入口に入ってジェットブレイバーを格納する。
「よし。さてと……」
本部へ到着したミズキと葵はジェットブレイバーから降りると、手荷物を持って本部内の通路を歩く。
「あの、ミズキさん……外の景色を見て気づいたんですが……ここってもしかして、福岡県?」
「……」
「本部って、福岡にあったんですか?」
「そうだ……が、絶対に誰にも話すなよ。本部の場所は、機密事項なんだ」
「あっ……わかりました」
ミズキに忠告されつつ、メインルームへ訪れる2人。
「待っていたわよ2人共!」
そこには仁王立ちしたソフィーが2人を待ち構えていた。
「ボス、お久しぶりです!」
「あら葵、この前会ったじゃない現場で。とにかく葵もミズキも、遠路ご苦労様」
「ありがとうございます。
あ……ボス、これっ……例のものです」
ソフィーは2人を労うと、葵が持っていた箱を受け取る。
「ありがとう葵!これよ、これを待っていたのよFuu-Sのケーキ!」
「はぁっ!?何でFuu-Sのケーキを?」
「いやぁ実はこの前の事件の時、美弥子ちゃんと仲良くなっちゃって。
私がケーキ食べたいって事で予約して、葵に受け取ってもらったのよ」
「美弥子ちゃん、喜んでましたよボス」
「いつの間に……」
知らない間に葵とソフィーが交友関係を広げていた事を驚くミズキ。
「ショートケーキにモンブラン、チーズケーキも……!
どれから食べようかなー」
「ボス、ケーキもいいけど、これが先なんじゃないか?」
楽しみにしていたケーキにご満悦のソフィーだが、ミズキが目の前にアタッシュケースを見せてきた事で、ソフィーは真面目な顔つきになる。
「ふっ、それもそうね」
「やぁ、待たせたね」
「博士、ナイスタイミングよ。じゃあ会議を始めましょうか!
あ、ケーキは冷蔵庫に」
ちょうど駆け付けたティバを入れた4人で、会議が始まった。
「……」
東京では、イエローサタンがビルの屋上から街並みを眺めていた。
手元には、戦機獣のカプセルを携えていた。
「プロフェッサーは、自由に使えと言っていた……」
戦機獣のカプセルは、プロフェッサー・ギンギが好きに使用するよう渡されたものである。
「自分には、プロフェッサーに任された重要な任務がある。
だが、足りない……それでは満たされない」
現在イエローサタンが与えられた任務は、機械戦闘員や戦機獣をより多くの人間や宇宙人に売りつける事。
それでもイエローサタンには、とにかく戦いたいという戦闘本能が強く滲み出ていた。
「自分のこの感情を満たしてくれるのは、ファイブレイバーだけだ……
そうだ、それなら……!」
ファイブレイバーとの戦いを望むイエローサタン。
そこで、イエローサタンはある作戦を思いつく。
一方、WGST本部では以前手に入れたアタッシュケースの中身、機械戦闘員のカプセルについて会議が行われていた。
「機械戦闘員はこのカプセル1つで10体も出現させる。
小さなカプセルにどれだけの情報量があるのか、それを解明する必要がある」
「博士、どれくらい時間がかかりそう?」
「まだわからないな。
まずは機械戦闘員に使用されている部品や装甲を調べて、対抗できる策を考えてみるよ」
「だが、デスロス以外にも厄介な敵が現れた……」
「ドスコロイナ……ですね」
「奴が作り出した魔導獣、物が意志を持った怪物になるなんて、初めて見た」
「ドスコロイナに関しては、スペースセーブに情報を問い合わせているわ。
それに関しては待ってちょうだい」
「だが悪い事ばかりではない。
ミズキくんがファイブレイバーとして戦ってくれている間に、多くの戦闘データが手に入った。
新たなブレイブテクターも制作を始めている」
「新たなブレイブテクター?」
「それって、鎧戦士が増えるって事ですよね?
私もブレイブテクター、欲しいです!」
「いや、それは無理だ」
「えっ!?どうして……?」
「葵、ブレイブテクターは適合者しか身に着ける事が出来ないのよ。
ファイブレイバーのブレイブテクターも、適合したのはミズキただ一人だった」
「そ……そうなんですか?」
「だけど、完成したら適合するかどうか試してみましょ」
葵にとっては初めての会議。
これからの戦いのため、議論は続いていった。
「じゃあ会議はここまでね。
ふぅー、終わった終わった」
それから30分後、無事会議は終了。
「さぁ、この後はお待ちかねの食事会よ!」
「え、食事会?」
飛び切り笑顔のソフィーを見て、質問をする葵。
「そういえば説明がまだだったわね、葵。
定期決起集会は本部での会議だけじゃなくて、その後で私の行きつけの店で食事会する事になってるのよ」
「そうだったんですか。
食事会、楽しみです!どこへ行くんですか?」
「それはまだ内緒」
「ボス、食事会は夕方だろ?
だったら、ちょっと外へ出る」
一人メインルームから出ていくミズキ。
「ならば、時間まで作業を終わらせておくよ」
「よろしくね、博士。
葵はどうする?」
「あの……ボス、聞きたい事があるんです」
「聞きたい事?」
「ミズキさんの事です!」
ティバは研究室に戻る中、葵はソフィーにミズキの事について聞きだす事に。
「……」
福岡県のとある街を一人歩くミズキ。
気が付けば、大きくそびえ立つドーム球場の近くまで来ていた。
「……今日は、試合の日だったのか」
ユニフォームを着た人達が球場へ向かうのを眺めながら、何かを思うミズキ。
「……」
同じ頃、本部でソフィーからミズキの話を聞き出そうとする葵。
「なるほどね、ミズキは何も話さないわけか」
「そうなんです。私をまだ信用してないんでしょうか……?」
「信用以前に、深く関わってほしくないと、まだ思ってるのかもね」
「えっ?」
「これから話す事は今のミズキを築いたほんの一部よ。
そろそろ話しておかないと、あなた達のこれからの任務に支障が出そうだからね」
ソフィーは真剣な目をして、葵にミズキの事を語りだした。
「WGSTの活動で欠かせないブレイブテクター。
あなたも知っている通り開発したのはティバ博士。だけど、開発に携わっていた科学者もいたの。
その一人がミズキのお父さん、志堂総一博士よ」
「ミズキさんのお父さん、科学者だったんですか?」
「えぇ。私達の計画に賛同してくれて、協力してくれたのよ。ファイブレイバーのデザインをしたのも総一だったわ。
総一の協力もあってブレイブテクター第1号は完成間近だった……だけど……」
一度深呼吸をするソフィー。
「3年前のある日、総一は殺されたの。どこからか情報を手に入れた宇宙人に急襲されて……。
そしてその時、総一と2人暮らしだったミズキが巻き込まれ……左腕を失う重傷を負ったのよ」
「左腕を!?
あれっ、でもミズキさん左腕普通にありますけど……?」
「五体を一つ失う事、つまり命の危機に瀕したミズキを救うには、別の腕を移植するしか無かった。
そこで使用されたのが、ブレイブテクターと同時開発していた自立型ロボット、ブレイブボーグの左腕だったの。
ブレイブボーグの開発を遅らせて、ミズキの腕にブレイブボーグの腕を移植し、どうにか命を救う事ができたわ」
「そんな事があったんですか……。
だから普段、機械の腕を見せないために手袋を……?」
「そういう事。気にしているわけじゃないみたいだけど、知らない人を驚かせないため……ってミズキは言っているけどね。
あの時手術は成功したけど、完全に移植した腕が馴染むまで半年もかかった……。
その間に、ミズキの人生を奪ってしまう事になったのよ」
「ミズキさんの人生を?」
「これを見てちょうだい」
ソフィーはデスクの引き出しを開けて、新聞記事が入ったファイルを葵に見せる。
「新聞のスポーツ欄……志堂聖……
えっ、ミズキさんの名前!?」
「そう、高校時代のミズキよ。
プロに将来有望と注目されていたスラッガーだったのよ」
「そういえばニュースで見た事ある……!」
「だけど、プロの野球選手になる道を利き腕である左腕を失った事で断念せざるを得なくなった……。
最初ブレイブボーグの腕を見た時のミズキは、この世の終わりみたいな顔していたわ。
だけど、ミズキは立ち上がった。最初に完成させたブレイブテクター、その適合者がミズキだとわかったからよ。
ミズキは新しい人生を歩む一心で、戦士になる道を選んだのよ」
「そう……だったんですか……」
ソフィーの話を聞いて、葵はミズキが常に複雑な思いを持ちながらこれまで戦ってきた事も知った。
「ボスが話してくれた事が、ミズキさんが私に何も話さなかったり、私が戦う事を拒む理由なんでしょうか……?」
「いいえ、違うわよ」
ソフィーの返答に思わず転げる葵。
「ええっ、違うんですか……?」
「ミズキが今あなたにとっている態度には、もう一つ理由があるの。
それは……いずれミズキ自身が話してくれるわ」
「はぁ……。
ん、ブレイブフォンに着信?」
そんな中、葵のブレイブフォンに友梨から通信が入る。
「……ふぅ」
その頃、海岸沿いで瓶コーラを飲んでいたミズキは、ブレイブフォンの通信で我に返る。
「通信?緊急事態か」
事態を察したミズキは立ち上がり、走って本部へと向かう。
「待たせた。事件か?」
「待ってたわ、ミズキ。
丁度現地の映像が出たところよ。東京に戦機獣が出現したの」
急いで本部に戻ったミズキは、ソフィーから東京に戦機獣が出現した事を知る。
「友梨が偶然目撃したんです。そしたら丁度本部でも警報が出まして……」
「場所は都内の商店街、C地点よ」
「わかった。
ボス、早速ジェットブレイバーで向かう!」
商店街で大暴れする戦機獣を映像で見て、ミズキはすぐに出動しようとする。
「私も行きます!」
「いや、俺一人でいい。お前はここに残ってろ」
葵も着いて行こうとするが、ミズキに止められる。
「どうしてですか!?」
「こういうのは、一人が動きやすいんだ」
「ミズキさん……」
「ミズキ、ちょっと待った」
急いで出動しようとするミズキの前に、ティバが現れる。
「博士?」
「出動する前に、このアップデートキーを使って行くんだ」
ティバは新たな武器やデータが入ったオレンジ色のブレイブパワーキー「アップデートキー」を渡す。
「ありがとう、博士。
アップデートキーという事は……!」
「先日渡したエレメントパワーキーを最大限に活かす新しい武器が完成した。
早速必要になるかもしれないからね」
「ありがとう、博士。
よし!」
ミズキはブレイブフォンの鍵穴にアップデートキーを装填、瞬く間にデータがインストールされた。
WGSTでは最新装備やデータをアップデートキーを用いてブレイブフォンにインストールしている。
「これでデータはアップデートされた。
それじゃ、夕食までには戻るから!」
ミズキはアップデートキーを抜くと、メインルームを去った。
「ミズキさん……」
「葵、言いたい事はいっぱいあるかもしれないけど、今は目の前の事よ」
「ボス……はいっ!」
「いくぞ、ジェットブレイバー、発進!」
ミズキは滑走路でジェットブレイバーに乗り込むと、東京の現場に向けて出動した。
東京のとある商店街で暴れていたのは、蜘蛛の姿をした戦機獣だった。
「キシャーッ!」
「うわあああああああ……!」
「助けて、動けないよぉ……」
戦機獣は商店街の人々を特殊繊維で出来た蜘蛛糸に縛りつけて苦しめる。
「あれが戦機獣……。
この前のとは全然違うわね……って、嘘っ、私まで……!」
目撃者の友梨も、カメラで写真を撮っている間に蜘蛛糸に縛られてしまった。
「どうしよう、動けない……!」
「キシャーッ……!?」
「おい、何だあれは?」
「ジェット機?」
大勢が空を見上げると、到着したばかりのジェットブレイバーが姿を現す。
「どうやら間に合ったみたいだな。
ジェットブレイバー、オートコントロール!はっ!」
ミズキはジェットブレイバーをオートコントロールモードにすると、ハッチを開いて空中へ飛び出す。
「いくぞ!ファイブレイバー……実装!」
《OK! Techter up FAIBRAVER!!》
「うおおおおおりゃっ!」
そしてあらかじめ左腕に装着していたブレイブフォンにファイブレイバーキーを装填して、空中でファイブレイバーに変身、着地する。
「キシャッ……!?」
「あれって、まさか……!」
「WGST鎧戦士、ファイブレイバー!
戦機獣、これ以上は許さん!」
「キシャーッ!」
「うおっと……!
ファイブレイバーに気づいた戦機獣は蜘蛛糸を吐くが、ファイブレイバーはとっさにかわして、ブレイブシューターを取り出す。
「これを使ってみるか。フレイムパワーキー!」
ファイブレイバーはブレイブシューターにフレイムパワーキーを装填。
「虫にはこれだ!くらえ、火炎弾丸!」
火炎を纏った弾丸が蜘蛛糸を焼き払い、戦機獣にもダメージを与える。
「キッ、キシャアアアアア……!」
「逃がさん!ファイブレード!」
「キシャッ……!」
「うおおおおおおおりゃっ!」
距離を取ろうとする戦機獣に対して、ファイブレードを装備したファイブレイバーはダッシュで接近して、次々と斬撃をくらわせる。
「よし、ここらで大トリだ!」
《OK! FAIBRAVER FINISH ATTACK!!》
「いくぞ!スピリットブレェェェェイク!」
「キシャアアアアアッ……」
連続攻撃を受けて怯んだ戦機獣に向けて、ファイブレイバーは「スピリットブレイク」を放ち、戦機獣を破壊する。
「やった……!」
「凄い!」
「流石ファイブレイバー。葵が信頼するわけだわ……。
ファイブレイバー、みんなを助けて!」
「ん、あんたはこの前の……。
ちょっと待ってろ」
早々に戦機獣を片付けたファイブレイバーは、蜘蛛糸に縛られた友梨や商店街の人々を助けに向かう。
「やはり来たな。待っていたぞファイブレイバー」
「!?お前は……!」
「さぁ、次は自分と戦え!」
だが、途中で突如イエローサタンが出現、戦いを仕掛けてきた。
「ぬんっ!うえいっ!」
愛剣レボリューションを振りかざしてファイブレイバーを攻撃するイエローサタン。
「ぐっ……イエローサタン、待ち伏せしていたのか……!」
「そうだ。お前と戦うためにな……。
そのためには、お前を戦いの場に誘き寄せるしかなかったのだ」
「……それで、さっきの戦機獣を使ったのか」
「自分が予想した通り、戦機獣を倒すためにお前は現れた。
好都合なのさ!」
「それだけのために……関係のない人達を巻き込んだのか!」
「ファイブレイバーと戦う、それが全てだ!」
レボリューションを振り回すイエローサタンに対して、ファイブレードで受け身をするファイブレイバー。
「くっ、このっ……ブレイブシューター!」
ファイブレイバーは隙を作ろうとして、後ろに下がるようにジャンプすると、右腰のホルスターに入ったままブレイブシューターで攻撃する。
「ふんっ、ぬんっ!」
「こいつならどうだ!グランドパワーキー!」
ブレイブシューターの弾丸をイエローサタンが捌いている間に、ファイブレードの鍵穴に黄色のエレメントパワーキー「グランドパワーキー」を装填する。
「くらえええええっ!でりゃあああっ!」
「ぐっ、ぐおわああああ……!」
刃に土煙のエネルギーを纏ったファイブレードを地面に突き刺すと、イエローサタンに向けて土の衝撃波が飛び、ダメージを与える。
「ダメージが通った!これなら……!」
「ふっ、ふはははは!」
「なっ、何がおかしい!?」
「流石だファイブレイバー!それでこそ、戦い甲斐がある!
はあっ!」
「何っ!?うわっ……!」
「でりゃっ!おりゃっ!」
「ぐっ……ぐああっ……!」
イエローサタンは、一瞬で距離を詰めてファイブレードをファイブレイバーの手元から弾くと、レボリューションによる連続斬撃で大ダメージを与える。
「ぐっ……ぐぁ……っ」
一瞬で戦況をひっくり返され、ダメージを受けた事によってブレイブテクターにも火花が散る。
ダメージの大きさに、ファイブレイバーは上手く立ち上がれずにいた。
「ミズキさん……!どうしましょう、ボス!」
WGSTの本部で戦闘の映像を見る葵達。
葵は居ても立っても居られない心境だが、ソフィーとティバは冷静に戦況を見ていた。
「ボスもティバ博士も、何でそんなに冷静なんですか……?」
「葵、ピンチの時こそ冷静さを忘れてはいけないわ。
それでないと、対処法も見つからなくなるからね」
「それに、まだ新武器を使用していない。
戦況を覆すなら、それが鍵だ」
「新しい武器……。
一体、どんな武器なんでしょうか……?」
「ぐっ……!」
「頑張って、ファイブレイバー!」
「そうだ、頑張れ!」
「負けないで、ヒーロー!」
ダメージを負って立ち上がれないファイブレイバーに、戦機獣の蜘蛛糸に絡まれて動けない友梨や商店街の人々から、声援が飛ぶ。
「……ぐっ、このぉ……!」
声援を聞いたファイブレイバーは、ゆっくりと身体を起こして、片膝つきながら立ち上がる。
「立ち上がるだと……!
ファイブレイバー、お前を立ち上がらせる力は一体何なんだ……?」
「決まってるだろ……。ここにいる人達が、俺を信じて応援してくれるんだ……!
そんなみんなを救う……それが俺の使命だ!
その使命果たすためなら、何度でも立ち上がる!」
ダメージを負いながらも、ついに立ち上がったファイブレイバーを見て不思議に思うイエローサタン。
「多くの人間のために戦う……それがファイブレイバーの信念か」
「そうだ!そのためにも、俺はお前に勝つ!」
ファイブレイバーはブレイブフォンの黄色いアイコンをタップする。
すると、右手に弓矢型の武器が出現する。
「!?何だ、その武器は……!」
「……スマッシュアロー!」
新たに開発され弓矢型の武器、「スマッシュアロー」を手にしたファイブレイバー。
「いくぞ!でやっ!」
「ぐおっ……!?」
左手で弦を引っ張り離すと、発射口から光の矢が飛び出してイエローサタンに命中する。
「うおおおおおおっ!」
ファイブレイバーは連続で矢を放ちながらイエローサタンに接近する。
「そう甘くはいかないぞ、ファイブレイバー!」
「うおおおおりゃっ!」
イエローサタンがレボリューションで矢を弾いて防御すると、接近したファイブレイバーはスマッシュアローの両端に付いた刃で接近戦に持ち込む。
「ぐっ……!」
「ぬぅっ……!」
互いの刃がぶつかり合う中、互いに一撃を受けて同時に後ろに下がる。
「くっ、ウィンドパワーキー!」
ファイブレイバーはスマッシュアローの2ヶ所ある鍵穴の一つに緑のエレメントパワーキー「ウィンドパワーキー」を装填。
「いっけええええっ!」
弓を弾くと、緑色の風を纏った光の矢が射出される。
「風の力か……!
うおっ、ぐあっ……!」
「今だ!うおおおおおおおおらああっ!」
イエローサタンを囲むように緑色竜巻を放ち、ファイブレイバーは竜巻の中に突っ込むと、竜巻の勢いに任せて空中に回転しながらジャンプする。
「なっ……!?」
「どりゃあああああああっ!」
「ぐっっ……おああああああっ……!」
ファイブレイバーはそのまま急降下すると、左拳で渾身のパンチを放ち、イエローサタンのゴーグルにヒビを入れる。
「ぐあっ……ぐああああっ……!」
頭の激痛に怯むイエローサタン。
ブレイブボーグの腕である左拳は、通常の拳より威力がアップされていたため、想像以上のダメージを与える事に成功したのだ。
「今だ!ここらで大トリだ!」
イエローサタンが怯んでいる隙に、ファイブレイバーはスマッシュアローのもう一つの鍵穴にファイブレイバーキーを装填。
《OK! FAIBRAVER FINISH ATTACK!!》
「ぬおおおおおおおっ!」
弦を引っ張ると、発射口にウィンドパワーキーの力が加わった特大の光の矢が発生する。
「くらえ、イエローサタン!
ウィンドアロォォォォォブレイジング!
ファイブレイバーは弦から手を離し、特大のエネルギー矢を放つ必殺技「ウィンドアローブレイジング」を放つ。
「ぐっ……ぐわあああああああっ……!」
矢はイエローサタンに命中して、イエローサタンの周囲は爆発する。
「やった、決まった……!」
勝利を確信したファイブレイバーの目の前で、徐々に煙が晴れていく。
煙の中から出て来たのは、右腕を失ったイエローサタンだった。
「腕が外れて……いや、その腕、その目……!
まさか、ブレイブボーグ!?」
ファイブレイバーは、イエローサタンの姿と、失った右腕から飛び散る火花、そして砕けたゴーグルから見えた目で、イエローサタンの正体がブレイブボーグである事を確信する。
「どういう事なんだ……んっ!?」
立ったまま動かないイエローサタンの所へ、何者かが空から降りて来た。
「よっと……。君がファイブレイバーか、顔を合わせるのは初めてだね」
「その顔……お前、プロフェッサー・ギンギ!」
背中に装着する事で自在に空を飛べる「スカイウォーカー」を背負った白衣の男こそ、デスロスを作り
出したプロフェッサー・ギンギだった。
「おっと、戦うつもりは無いぞ。今日はイエローサタンの回収に来たのだから」
「待て……!
どうしてイエローサタンがブレイブボーグの身体を持っているんだ……!?」
「……」
「答えろ、プロフェッサー・ギンギ!」
背を向けるプロフェッサー・ギンギに対して、スマッシュアローを構えるファイブレイバー。
「……いいだろう、教えてあげよう。
君の察している通り、イエローサタンはブレイブボーグだよ。
ただし、ただのブレイブボーグじゃない。特殊AIを組み込んでいる、意志を持って動くブレイブボーグの完成形さ」
「意志を持つブレイブボーグ……!?」
「そう。ただのAIと違って、自分で物事を考えて行動できる。知識が少ない以外は人間と変わらないのさ。
イエローサタンとは、ブレイブボーグの身体にブレイブテクターを纏わせた姿の事さ。勿論、変身解除できないように改造しているけどね」
プロフェッサー・ギンギはイエローサタンの正体を説明しながら、イエローサタンの右腕を拾う。
「話は以上だ。次に会う時を楽しみにしているよ」
「待て……!」
「焦る事はない。さらばだ」
イエローサタンの身体を担いだプロフェッサー・ギンギは、目の前に煙幕弾を投げる。
「煙幕……!?居ない、逃げられた……!」
煙が舞う間に、空を飛んでその場を離脱したプロフェッサー・ギンギ。
「くそっ……。だが今は、こっちが優先だ。
みんな、今助ける!」
ファイブレイバーは、蜘蛛糸で動けない人達を助けるために駆け出した。
「戻ったぞ」
「おっ、帰って来たわねミズキ」
戦いを終えて、ミズキがWGST本部に戻ったのは食事会開始ギリギリだった。
「時間はギリギリ……ね」
「ボス、イエローサタンについてだが……」
「その話は後。
ほら、食事会行くわよ!予約取っているんだから」
「おい……!まぁ、いつものボスだな……」
一同が食事会のために向かった先は、老舗の寿司屋「寿司松」。
「大将、お待たせ」
「おっ、来たなソフィーちゃん達!へいらっしゃい!」
店主で「大将」という名で親しまれている男、松田一平が握る寿司は、多くの人々の評判になっている。
「んっ、美味しい……!
こんなに美味しいお寿司、初めて!」
「おっ、そうかいお嬢ちゃん!
好きなだけ食べてくれよ!じゃんじゃん握るからよ!」
大将の寿司を食べて、今までで一番美味しい寿司だと感動する葵。
「本当、いつ食べても最高よね、ここのお寿司」
「あぁ。ボスが毎月ここでの食事会を選ぶ理由もわかるというものだ」
「……」
ソフィーティバと日本酒を交えながら寿司を食べ、ミズキと葵は黙々と量を重ねていった。
「……あれっ、ミズキさん、手袋……!」
この時、ミズキは右手だけ手袋を外して食べていた。
「……あの、ミズキさん!」
「何だ……?」
「私、決めました!絶対にミズキさんに私の事を認めさせてみせます!
何と言われようと、私はミズキさんのパートナーです!」
「……そうか。好きにしろ」
「……はい!好きにしますね!」
今回の事でミズキの事情も知り、目標もできた葵は気持ち新たに、寿司を食べていく。




