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サイバーパンク2.0.2.5──だから中卒無職の寛太は〝チートスレイヤー〟と呼ばれる  作者: 東山統星
シーズン0 さぁ、馬鹿騒ぎの時間だ

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004 西野千尋

 相変わらず、つかみどころのない父だ。いや、母親も同様だが。


「分かったよ、近いうちに壮麗学園へ入る」

『どうせ、近いうちだと一生入らないだろう? そうだな、あしたへでも入れ』

「は?」

『霞の制服を着ていけば良い。成長期に入る前のあの子のものなら、入るだろう?』

「いやまぁ、そうだけどさ」

『すでに、壮麗学園には通達してある。だから、あしたから学校へ通え』

「……分かったよ。言いたいことはたくさんあるけど、アンタにそれを言ったところで無駄だよな」

『聞き分けの良い子で助かる。では、あしたを楽しみにしておきたまえ』


 天上天下唯我独尊を突っ走る父に、なにか意見するほうが愚かしい。寛太は溜め息をつき、偽名を考えることにするのだった。


 *


 だいたい、夕方6時に起きたのに、朝9時までに起きろのはかなり難しい。

 結局徹夜してしまった。あくびを何度もしながら、寛太は、朝飯代わりのシリアルを牛乳もかけずにポリポリ食べる。


「……アニキ、なんで牛乳かけないの?」


 水泳部所属で、肌と髪色が焦げている妹・霞の怪訝な面持ちをよそ目に、寛太はシリアルを袋ごと食べる。


「ふぁー、眠い」


 今すぐにでも眠りたい。というか、寝て困ることがあるのであろうか。そんな疑問を抱えつつ、エナジードリンクを飲み干す。


「早死にするよ?」

「もう死んでるようなもんだしね」


 寛太はそうおどけ(?)、霞が用意した制服を着始める。


「スカートって、すーすーするな」

「一応男女兼用のスラックスもあるけど」

「ま、見られて困るような下着じゃないし、スカートで良いや」


 トランクスパンツを見られたところで、誰も得しないし損もしない。


「いやー、きょうもきょうとて暑いな」


 寝不足でふらふらしてしまう。おまけに、本日の気温は35度越え。水分をしっかり摂らないと、熱中症で倒れる羽目になる。


「サボっても良いんだよ?」

「さすがに、転校生が来るのにサボれないだろ。さて、もう〝おれ〟って言ったらイタイな。私、それともあたし? はたまたウチ?」

「無難に私で良いんじゃない?」

「なら、私っていうわ」

「けど、歩き方が女子っぽくないかも。もうちょっと内股にできない?」

「無理」

「でしょうね」


 この姿になってから、妹・霞が妙に優しい。やはり見た目は大切なようだ。ルッキズムだとか声高らかに言われていても、人間の第一印象は見た目で決まってしまう。


「ま,男勝りの女子ってことで誤魔化せる。さて、電車へ乗るか」


 最寄りの駅から2駅先に、壮麗学園がある。また、駅まで5~6分くらい歩くので、トータルで12分くらいかかるはずだ。


「見ろよ、中学部のプロスペクト第1位だ」

「隣にいるのは誰だ? 第1位は確か、ぼっちだったはずだけど」

「第1位も美人だけど、隣のはその比じゃないな。フランス人形みてェだ」


 壮麗学園の制服を着た者が、ひそひそすらしていない噂話をしている。むしろ寛太のほうが気になる始末だ。


「なぁ、普段から色々言われてンのか?」

「まぁね。あたし、プロスペクト第1位だから」

「天才故大変ですな」

「有名税だと思えば、なにも感じないよね」

「まぁ、確かに」


 寛太は内心思う。


(霞、ぼっちなのか……)


 兄としては、やはり妹の立ち位置が気になる。一般論として、男子より女子のほうが孤立しづらいので、余計にだ。


 *


 霞は中学部2学年だが、寛太は1学年からの編入となるため、学校へついた途端バラバラになった。

 先生から学生証を渡され、寛太は思わず二度見してしまう。


(西野千尋(ちひろ)……これ、母親の名前じゃねェか)


 あの親父、よほど妻(はは)を溺愛しているらしい。しばらく慣れるのに時間が必要そうだ。

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