ハッピーエンドの外側。3
太陽の色は、赤い絵の具。
その絵の具を溶かしたみたいに、
海は真っ赤だった。
『わあ…きれいですねえー』
海の風が探偵の帽子を揺らす。
『はい。私の大好きな海です。』
ここのつちゃんが裸足のつま先を、波に濡らす。
『本当に、綺麗ですね…』
絵の具が海面に溶けていくのを見ていた、
歌ちゃんが、海の沖合に、
“誰か” が立っていることに気づいた。
夕焼けににじむ
波の上に、ぼんやりとした人影。
まるで、海そのものから現れたみたいに、
静かに揺れている。
『あなた達がここへ来ることを、
私は見ていました。
シーナ。
ユメ。
ウタ。
そして……ココノツ。』
人影は、水面をゆっくりと滑るように近づいてきた。
『お…おばけ!』
夢ちゃんが、走って逃げてった。
『落陽…』
ここのつちゃんが、人影を見つめて悲しい顔をする。
『私は、解放戦線、落陽の…真宵。』
『出ましたね! オバケ!』
シーナちゃんが、十字架をかざして前に出る。
『なぜ、ここのつちゃんや何の罪もないみんなを、海に引きずり込んだんですか!
そんなのシーナが許しません!』
真宵は、優しい微笑みを浮かべた。
『シーナ。あなたはまだ知らないだけです。
現世がいかに残酷であるかを、そして、
死後の世界がどれだけ平和なのかを。
——私達は、この世に生きる人々を、
苦しみから救いたいだけなのです。』
『え? なんか穏やかなオバケ…』
『シーナ…おいで、おいで。』
シーナちゃんは、
真宵に手招きされるまま、
海へ向かって、
ふらふらと歩き出した——。
『ダメっ! シーナちゃん!』
歌ちゃんが、
シーナちゃんに後ろから抱きつき、
必死に引き止めた。
夢ちゃんは、
遠くで毛布にくるまり
ふるふるしている。
『ウタ。あなたもこちら側へ来たなら、
理解するでしょう。真の安らぎを。』
『…でも…そんなの』
歌ちゃんは、うつむいたまま、
真宵を見れない。
『私達、落陽は、苦しみ続けるくらいなら、
静かな海へ還るべきだと考えています。
それが究極の優しさだと。真の慈しみだと。』
『……』
『…でも…そんなの…』
歌ちゃんがバッと顔を上げて、
真宵と向き合う。
その手には—
オートナインが握られていた。
『…ウタ。その破壊の銃口を、
あなたは……私に向けるのですか?』




