ハッピーエンドの外側。1
『オバケが出ます。』
《眠る女の子》 が来店した。
名前は、ここのつちゃん。
『…オバケ…ですか?』
『オバケやだな。』
夢ちゃんも歌ちゃんも、オバケは苦手。
ここのつちゃんの話によると——
最近、この近くの海で、水難事故が多発しているらしい。
普段から波も静かで、穏やかな海なので、
地元の人達も、なぜ急に事故が急増したのか、
不思議がるばかり。
ここのつちゃんは小さな頃から、この海のある街で育ち、事故の影響で人の来なくなった海を見て、寂しさを感じていた。
——ある日。
ここのつちゃんが海を泳いでいる時に、
異変は起こった。
「何か」
が、ここのつちゃんの足を掴んだのだ。
そのまま、ものすごい力で
水中へ引きずり込まれそうになった。
必死にもがく中、ここのつちゃんは
その 「何か」 を見た。
『オバケでした……ってあれ?』
あまりのオバケ話の恐ろしさに、
夢ちゃんと歌ちゃんは、部屋の隅っこで毛布にくるまってふるふるしている。
『だ、大丈夫ですか? 夢ちゃん、歌ちゃん…』
『は、はい…頑張ります。』
歌ちゃんが冷静さを取り戻そうとしている。
夢ちゃんは、心を落ち着けるために
マシュマロを食べた。
よくあるオバケ話だけども、実際に恐怖体験をした人から直接に話を聞くとリアル怖い。
『…ここのつちゃんが、無事で良かったです』
歌ちゃんはここのつちゃんと、
向かい合わせに座る。
『はい…』
『…でも、なぜ、オバケが急に人を襲うようになったんでしょう?』
『それなんですけど…』
ここのつちゃんが悲しそうな顔をする。
『私、聞いたんです。オバケに。』
『…オバケに?』
『はい。 なぜ、人を襲うの?って。』
『……はい。』
『そしたら、』
——
『この世は苦しみの連続である。
憎しみ。争い。老い。悲しみ。別れ。
そして、死。
生きる事とは、苦しみである。
人はなぜ生に執着するのか。
人はなぜ苦しみ続けるのか。
憎しみも、争いも、老いも、悲しみも、別れも、
——死、さえも無い、
死後の世界こそが、真の平和である。
今こそ魂の真の解放を。
我々はここに、人の魂の救済を宣言する。
解放戦線—《落陽》 である。
—なんて言うんですよ。』
『今のは、ここのつちゃんが聞いた、
オバケ側の主張ですね?』
『はい。』
『んー…なんだか、すごく難しい事になってきた気がします…』
歌ちゃんが、困り困り。
『だって、オバケには悪意が無いんですよね?』
『はい。…たぶん』
『苦しみから救ってあげたい…
みんなを幸せにしてあげたい…
そんな優しさから行動しているのなら…』
歌ちゃんが、考えこんでしまっていると、
マシュマロを食べ終わった夢ちゃんが、
歌ちゃんに言った。
『ダメだよ。そんなの。』




