月詠。4
『—《チックとタック》とは、
真夜中の12時にボンボン時計から現れる、赤い三角帽子をかぶった2人の小人の物語です。時計が時を刻む間、おじさんの家を探検する不思議で幻想的な子供向け文学であり、国語の教科書にも掲載された名作です。
ボンボン時計の振り子を動かしているチックとタックという2人の小人。
…ほらね。』
夢ちゃんが絵本を、クロノちゃんと歌ちゃんに見せる。
『チック選手と、タック選手は、
Tスポーツ界のレジェンドだっピ!』
ピッピが嬉しそうに言う。
こびとが時計を動かしていた…手作業で。
世界中の時間を管理していた…手作業で。
という真実は、絵本として伝わっていたのだ。
童話だと思われていたものが、
実は世界の仕様書だった。
『だけど…どうして、私の
スタティック・アプネア(STA)の時計に?』
クロノちゃんもピッピと同じ目線まで、
しゃがみこむ。
『それはっピね。クロノちゃんが、
一生懸命に時計を見ていたからだっピ…』
『私が…時計を?』
『クロノちゃんには、隙が無かったっピ。
Tスポーツ的にそれは、
より高い山。険しい道。限界への挑戦…
ピッピのアスリート魂が燃えたっピ!』
ピッピの目に炎が宿る。
『…限界への挑戦……アスリート魂…』
クロノちゃんはピッピの、
熱いチャレンジング・スピリッツに
胸をうたれた。
『クロノちゃん…
世界記録なんて、関係ないっピ!』
『…え?』
『いちばんに大事なのは…挑戦し続けること、
そして…昨日の自分を、超えられるかだっピ!』
ピッピは、小さな胸を張った。
クロノちゃんの目に熱い涙が溢れる。
時間に挑む者。
同じ競技者として、魂で分かり合えたのだ。
『ピッピ!』
『クロノちゃんっピ!』
かたい握手をした2人。
『…ええと。』
歌ちゃんはそんな2人を見て、
どうしたらいいのか、よくわかんない。
『いーんじゃない?』
夢ちゃんは、キャラメルキャンディで
膨らんだほっぺ。
『ありがとう!夢ちゃん。歌ちゃん。
私、今回の件で、本当に大事なことに気がつきました。』
『…ええと。』
『いーんじゃない?』
『クロノちゃん!
これから2人で、夕陽に向かって走るっピ!』
『うん! ピッピ!』
『…ええと。』
——
夕陽が燃えている!
熱い想いを胸に走るピッピ。
自分を超えるために走るクロノちゃん。
BGMが聞こえてくる
スクールがウォーズしそうだ。
I'm holding out for a hero!




