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月詠。3



『離すっピよ!』


夢ちゃんにつままれて、ジタバタしている

こびと。


『…こんにちは。こびとさん。』


歌ちゃんが、こびとと同じ目線になるよう、

そっとしゃがみこんだ。


『私は、歌です。』


さっきまでジタバタしていたこびとは、

歌ちゃんが危害を加えないタイプの人間だと判断したのか、おとなしくなった。


『ピッピだッピ』


こびとの名前は、ピッピ。


『時計の裏で、ピッピ、何をしていたの?

イタズラしてたの?』


クロノちゃんがピッピに尋ねる。


『イタズラなんてとんでもないっピ!

これはれっきとしたTスポーツっピ!』


『ス…スポーツ?』



——『 《Tスポーツ》とは


昔から時間を管理していたのは小人である。

だが、長い長い年月をそうしていると、

だんだんあきてきた。

ので—


「時間を管理する」という、

当たり前かつ地味な出来事を、小人たちは

《極限のゲーム》にしてしまった。


ルールはシンプル。


「人間に見つからずに時間をいじくる」


昔の人間は、

『気のせいだ』

『こびとのいたずら』


くらいに思ってた。


でも実際は、

世界規模の超エキサイティング高難度競技。


時間をいじくるには、人間が時計から気をそらした、わずかな瞬間…


“ほんの一瞬” しか使えない。


よそ見。

考え事。

まばたき。

気のゆるみ。


そのコンマ数秒の間に、

秒針を動かす、数字を書き換える、


といった超高難度作業を行う。


そしてそれを競うのが、こびと会で大人気の


《ツクヨミ・ゲーム》通称、Tゲームなのだ。



…っピよ!』


ピッピが一息に説明をした。


『…えっと。つまり…

この世界中の、時間管理インフラは、

こびとさん達の手作業だったって事ですか?』


歌ちゃんが、この世界のひみつを、

少しだけ知ってしまった。


『そうだっピ!』


『……』


なんてゆうか。


『メルヘン……?』



『…ゆ、夢ちゃん先輩は、

どうしてピッピの仕業だとわかったんですか?』


歌ちゃんが、それでも冷静に状況を整理し始めた。


『この絵本に書いてあってね。』


『絵本…ですか?』

 

『うん。もしかしたらー、と思って。』


クロノタシスとかなんとか言ってるあいだも、

夢ちゃんだけは、こびとの可能性を考えていたのだ。

それは、まばたきや、気のゆるみを飛び越えて、

ピッピを見つけることができた。



『なんの絵本ですか?』


クロノちゃんが聞く。


『これ。…』


絵本のタイトルは——



《チックとタック》。















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