月詠。2
いーち。
にーい。
さーん…
スタティック・アプネア(STA)の世界記録は
11分35秒。
クロノちゃんは、記録更新を目指して息を止め続ける。
よーん。
…
ごー。
…
……
ろーく。
……
…………
『…ぷはぁ』
—クロノちゃんの限界。
記録は、7秒。
『…確かに、後半になるにつれて、1秒が長く感じられました。』
歌ちゃんも、この不思議なインチキ現象に違和感を覚えた。
『私には、1秒が3秒。
後半には、1秒が10秒の感覚でした』
クロノちゃんは呼吸を整えながら言う。
——確かに。
長く感じたのは、気のせいや脳の錯覚を超えた、「何か…」
納得できない違和感があった。
クロノタシス?
なんだか違う感じがするなあ…。
『謎だなあ…』
と呟きながら、クロノちゃんは帰っていった。
歌ちゃんは、インチキの謎を解明するべく、
様々な文献、医学書、空想科学読本などを調べる。
その横で、夢ちゃんは絵本を読んでいた。
——第2回目の検証。
いーち。
にーい。
さーん。
しーい。
ごー。
ろーく。
今回は、なんだか順調で、
クロノちゃんの記録は7秒を超えた。
なおも挑戦中。
なーな。
はーち。
きゅーう。
クロノちゃんはまばたきをした。
じゅーう。
…
……
じゅういーち。
…
……
歌ちゃんが、クロノちゃんの様子を見るために、
時計から目を離した。
じゅうにー。
…
…
………
……………
『ぷは』
クロノちゃんの記録は12秒。
大幅に記録を更新した、が…
『…今回は、明らかに1秒が伸びましたね…』
歌ちゃんが緊張した顔になる。
『…1秒が10秒。後半は、
ほぼ止まってました。インチキです。』
クロノちゃんが、ぷんぷんしている。
秒のインチキ。
時間のデタラメ。
なんだか、雰囲気ホラーになってきた。
—のに、
夢ちゃんが絵本を閉じて言った。
『見つけた。』
『…え?』
『夢ちゃん先輩?』
夢ちゃんは、トコトコ歩いて時計を手にする。
その時計の裏側へ、そっと指を伸ばして、
中指と薬指で、何かを捕まえた。
『こびと。』
『あ!』
夢ちゃんが捕まえた違和感の正体。
…こびと?




