雨の日
朝から雨ふり。
歌ちゃんは、透明な花びんにお花を
飾ろうとしている。
『…おはよー、歌ちゃん…』
まだ眠そうに、目をこすりながら夢ちゃん。
『おはようございます。夢ちゃん先輩』
『…お花?』
『はい。最近ずっと雨降りなので…
お花を飾って、気分を明るくしようかなーって』
『ふーん…いいね。』
『夢ちゃん先輩って、
どんなお花が好きですかか?』
『んー…ひまわり。』
『私はカーネーションですねー。』
『…ひまわりは、かわいいよ?』
『カーネーションも綺麗ですよー。』
『…んと、じゃあ…たんぽぽ。』
『私はー、コスモスですかねー。』
『…』
『たんぽぽ、かわいいよ?』
『コスモスだって綺麗ですよー…』
『…』
『……』
『ちゅーりっぷ…』
『…私は……キンモクセイ…』
『…』
『……』
『…ぼ…僕、知恵の輪やるね』
『…は、はい。』
…………
次の日も朝から雨ふり。
『…お、おはよー。』
『お、おはようございます…』
なんだか…。
あんまり会話もなく、なんだかとても静か。
金魚鉢のお魚さんも、とても無口。
『…僕、お散歩いくね』
『え?…雨ふってますよ?』
『…大丈夫。』
『ど…どこに行くんですか?』
『え。あ。えと。テ…テキトーだよ』
『そう…ですか。…気をつけてくださいね…』
『…うん。』
夢ちゃんは雨ふりなのにお散歩に。
『なんだか…』
歌ちゃんは、お魚さんを見ながらほおづえ。
『なんだか、静かだなぁ…。』
………
ずっと雨がふっていて、
なのに夢ちゃんはまだ帰ってこない。
窓の外の雨を見ながら、
歌ちゃんは心配になって、
ちょっと探しに行く事にした。
傘をポツンポツンと、雨の音。
『ずっと雨だから…
気持ちまで落ち込んでしまいます…』
空はとてもどんよりしていて。
いつもなら賑やかな
街のほうまで歩いてきた歌ちゃん。
やっぱり今日は街もどこか元気が無いみたい。
『…さみしいなあ…』
ふと、
街に貼られていたポスターが目に入った。
それはモエソデのポスターで…
《全身ホワイトのお洋服だった》。
『…綺麗…』
雨が優しくふっている。
歌ちゃんはポスターから目を離し、
お花屋さんの方へ歩いて行った。
…………
『おかえりー…』
歌ちゃんが帰ってきた時、
夢ちゃんは先に戻ってきていて、
お魚さんを見つめていた。
『あ…先に帰ってきていたんですねー』
『うん…』
雨粒をパッパッとして、
歌ちゃんも金魚鉢の前に座った。
『…』
『……』
『あのね、歌ちゃん…』
『夢ちゃん先輩、私…』
喋り出すのは、ふたり一緒だった。
『あ…あのね…』
そう言うと、夢ちゃんは
テーブルの下に隠していたものを、
歌ちゃんに差し出した
『…お花、あげる。』
『え…?』
『綺麗だよ?』
夢ちゃんのお花は
カーネーション。コスモス。キンモクセイ…
歌ちゃんの目には、じんわりと雨。
『…私も。これ、夢ちゃん先輩に…』
『…え?…』
歌ちゃんもお花を。
ひまわり。たんぽぽ。ちゅーりっぷ。
『かわいいですよ。』
歌ちゃんは、嬉しいのに泣いていて。
『…えへへ。』
夢ちゃんもほっぺをピンクにしながら
ポロポロと笑顔になった。
お花は、虹のように色あざやかで、
かわいくてきれいで。
雨はもうあがっていて、
ーお空には虹。




