ジャズの名曲
モエソデ。
夜を歩く気高きレディ。
ある夜、いつものようにお散歩をしていると、
とつぜん《けもの写真家》に写真を撮られた。
『ずいぶん、失礼なカメラマンね。』
ーーー。
モエソデの写真は、
《静寂の気高き獣・萌え袖模様の神話》
というタイトルでSNSでバズり、
街では…
《気高き獣・萌え袖》…
《気高き萌え袖》……
《気高きモエソデお姉様》!
と人から人に伝わり…
熱狂的なファンが徐々に増え始め、
熱狂的なファンが徐々に騒ぎ始め…
ついに…
《気高きモエソデお姉様のファッションショー》
が決定した。
モエソデお姉様は、引き受けた覚えのない
ショー決定発表によるさらなる大熱狂を
『ずいぶんと騒がしいことね。』
と、気にするそぶりも無く、
相も変わらぬ美しさ。
実際、お姉様はそんな事には全く興味が無く
『気ままに夜風を感じてみたり、
自由に星をつなげてみたりする事の方が、
ワタシにはよっぽど大切な事よ。』
と飄々としていたが、
またそんな態度が人々の心にブッ刺さり、
もはやどうにかしないと
ケガ人さえ出てしまいそうな程の大騒ぎとなり、
プロデューサーの連日の必死のオファー、
なんとしてもショーを開催させたい、
大成功させたい、といった熱い思いに
『仕方ないわね。』
とポツリ。
その態度がまた人々の心にブッ刺さり。
もはや空前の神話的大バズり。
街は夜通しお祭り騒ぎ。
ーーーー。
ショーを翌日に控えたその日、
ファッションデザイナーと
モエソデお姉様との衣装合わせが行われた。
ファッションデザイナーは、
モエソデお姉様の神話的大バズり具合に、
あまり良い気がしていなくて、
いわゆる
ポッと出のモエソデお姉様に嫉妬をしていた。
そこへ、衣装合わせを終えた
モエソデお姉様が戻ってきて、
『デザイナーさん。
少し、お話よろしいかしら?』
『どうしましたか?』
『ショーでワタシが着るお洋服は、全部が
このように、ホワイトの色をしているの?』
『そうです。ミーの服は全部、ホワイトです。』
『それでは、せっかくの白いふわりとした指先が、少し、埋もれてしまうわね。』
一瞬、ピリッとした空気。
『ホワイトはとても美しいわ。
でも、美しいものが重なりすぎると…
どれも見えなくなる事もあるのよ。』
!!
その言葉にデザイナーは衝撃をうけた。
『だから少しだけ、夜の色が欲しいわ。』
!!!!!!!
デザイナーは感動の涙を流した。
ーーー。
ファッションショーが始まった。
今か今かと期待に胸をふくらませる
会場に駆けつけた人数約 4200001人。
その大観衆の前に
ついに……神話が現れた。
大歓声の中、
いつもと変わらぬ気高さのモエソデお姉様。
全身を包む、夜にとける黒。
その指先には、ふわりとホワイト。
ーーーーー。
ファッションショーは
ビックバン的大成功をおさめ、
はやくも2回目の開催が熱望されたが…
モエソデお姉様は、丁寧にお断りした。
まさかの事態に茫然自失、信じられぬ!
といったマスコミの、
『お姉様! その理由は何ですか?!』
のインタビューに、
気高きモエソデお姉様は、
イタズラっぽい笑顔で答える。
『レディは気まぐれなのよ。』




