ジェヴォーダンの獣。6
『届けー⭐︎』
夢ちゃんが中指と薬指をふわりと空に向けて、
クルリと かろやかにひと回り。
そのまま手をおろして、
胸の前で両手をぎゅっと結び、目を閉じた。
『なんですかそれ?』
そんなのはじめて見た歌ちゃん。
『…!』
歌ちゃんに見られていたとは、
気づかなかった夢ちゃん。
顔を真っ赤にしてうつむいた。
『お祈りのポーズみたいでしたね』
『…うん。
こうやると…うまくいきそうな気がしたから…』
『可愛かったですよ。』
⭐︎⭐︎ 《夢ちゃんの能力発動》 ♡♡♡
ハッピーバースデー。
ー《再構築》ー
……引き続き222回目。
ー《再解釈》ー
『獣は人を食べない。』
⭐︎
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《獣は人を食べない》
獣であるレディは、ニュイちゃんのもとへ向かいながら、胸の奥に不安を抱えていた。
この姿を見た人々が怯え、恐怖し、
また自分を拒むのではないか…と。
そうなってしまったら、夢、歌の2人を巻き込んでしまう事になるだろう…
そして…ニュイちゃんに会えない、とは?
そんなレディの不安をよそに
何事も無くニュイちゃんのいる街へと着いた。
本当に不思議な子だわ。
何もかもがうまく行ってしまう…
うまく…いきすぎる程に。
澄み切った湖、慰霊碑、
陽の当たる丘…
そして…ルマたんの小さなお家。
街の名前は、ジェヴォーダン。
『ここは…』
『うん。獣は前に来た事あるよね。』
『…どうゆう事ですか?』
『…あのね、獣はね、少し前にここに女の子…
ニュイちゃんを探しに、訪れていたんだよ。』
『…少し前…あ!じゃあ…』
『そう。この街の獣さわぎの犯人はね…』
『ワタシよ。』
街に恐怖と混乱をもたらした獣
それはレディだった。
『でも、どうして?そんな事を…?
獣さんレディなのに…』
『…ワタシはね…ニュイちゃんをずっと、
探していたの。ずっと…。
ワタシの傷を手当てしてくれた…
ただ…ニュイちゃんに会いたかったのよ』
『…気持ちは、わかります。でも……』
『…仕方なかったの』
その一言の奥にあるものを、
歌ちゃんは、それ以上聞くことができなかった。
『ニュイちゃんのとこ、行こ?』
重く沈んだ空気を
そっとすくい上げるみたいに、
夢ちゃんが歩き出す。
その背中を見て、
レディはほんの少しだけ目を伏せた。
陽の当たる丘を歩く夢ちゃん、その先には
ルマたんの小さなお家。
『やっぱりここに…ニュイちゃんが、
いるのね?』
獣はルマたんの小さなお家の前で立ち止まる。
『ちがうよ。』
『え?』
『こっち。』
そういって歩き出した夢ちゃん。
たどり着いた先にあったのは
色とりどりの花に囲まれた
小さなお墓だった。
『なに? これ。』
夢ちゃんが優しく言った。
『……ニュイちゃんだよ』




