ジェヴォーダンの獣。4
獣が来た。
今、夢ちゃんの目の前に、獣がいる。
ショップの店内。
青空色のテーブルを挟んで、
夢ちゃんと獣は向かい合っていた。
獣は言う。
『ワタシの姿を見て、怖くはないのかしら?』
『うん。』
『変な子。』
『そうかな?』
『…』
『おなかすいてない?』
『…変わった子ね…あなた。』
『おだんご食べる?』
『…今はいらないわ。』
『そっか』
妙に静かな空気がそこにはあった。
夢ちゃんはいつもぽわんとしている。
そのぽわんが、今日だけは少し薄くて、
ぽわ、くらいのとこでとどまり
いつもより心静かで。
いつもより、落ち着いているかのように見える。
獣は獣で、
街の噂どおり……いや、
なんならそれ以上に恐ろしい姿を
しているはずなのに。
言葉は妙に丁寧で、仕草にはどこか
気品のようなものがあって、
レディのようだった。
『…あなた。夢ちゃんといったかしら?』
『そうだよ』
『どうしてワタシが来る事を知っていたの?』
『んー…』
夢ちゃんは少し考えて、
『なんとなく。』
テキトーいった。
『なんとなくって、あなた…』
聞き返そうとしたが、獣は、
これ以上質問をしたとしても、
きっとこの子は
本当の事を言う事は無いのだわ。と思った。
『本当に、あなたって不思議ね。』
獣が少し笑ったように見えた。
夢ちゃんと獣との会話は続く。
『ワタシの姿を見て、きっと驚くと思っていたのよ。拍子抜けしたわ。』
獣は少し間をあけて、丁寧にお辞儀をした。
『でも、うれしいわ。ありがとう』
やはりまぎれもなく
レディ。
『夢ちゃん、会ったばかりのあなたに…
こんな事をお願いするのは、
気が引けるのだけれど…』
『大丈夫だよ。』
『…』
獣は不思議だった。
自分でも言ったように、
会ったばかりのはずのこの子に、
なぜ自分は心を開いているのか?
この安心感は?
『人を探しているの。女の子よ』
獣は言った。
『うん。』
もしかしたら、この子に導かれてワタシはここに来たのかもしれない…
心が暖かくなるのを感じた。
『ただいまー。夢ちゃん先輩ー』
…歌ちゃんが帰って来た。
『…いろいろと、わかりましたよー…』
と言いながらショップに入ってきた歌ちゃん、
夢ちゃんと向かい合う獣の姿を見た瞬間
『!!!?きゃあ!!?』
と叫んでまた出て行った。
入り口は出口だ。




