月を盗んだ女の子。3。
豆。
豆…?
『…豆?…豆……えっ?』
あくびちゃんの心境はいかばかりか。
何度も豆て記入していると、
本当にこんな漢字だったかな?って不安になる。
それくらいに邪悪なるものなのだ。
『そうだよ。でもこれは…
ただの豆じゃないんだよ…』
夢ちゃんはマメを、優しく優しく拾い上げ、
頭上に掲げる。
『節分のマメだよ!』
「頭上に掲げる」とは、物や手を頭より高い位置へ持ち上げ、周囲に示す行為です。
ー節分ー
古くから地震や洪水や
運転免許証のうっかり失効といった自然災害は、
邪悪なるものの仕業だと考えられていた。
人智の及ばぬ禍事に人は恐怖する。
ゆえに人々は神に祈るのだ。
そして、祈りの果てに神の言葉を聞く。
立春の前日(2月3日ごろ)
にマメをまいて厄除け・無病息災を願いなさい。
そん時は鬼は外、福は内なんて言うといいよ、
そうした儀式を節分と呼ぶといいと思うよ、
あんたらは。と。
それから人々は神の言葉どおりに、
節分にはマメをまいた。
鬼は外〜、、なんか照れちゃうなあ。
そんな目で見んな。
とかニヤニヤくねくねしながらも、
いちおーちゃんとやる。
マメをまいたのだ。
そうしてマメは人々に崇められ、願いや祈りが積み重なり 長い長い年月の末にやがて神になった。
マメの栄光。
だがそれは永遠では無い。
やがて終わりの時がやってくる。
文明や科学の発展により自然災害のメカニズムが解明され、自らの手により対策できる事を知ると、
人々はマメへの畏怖の念を忘れていった。
節分がすっかり形骸化した頃、マメは孤独であった。
孤独は毒。
それはマメとて例外では無く、毒に侵されたマメはやがて邪悪なるものに成り果てた。
孤独は神をも殺すのだ。
…ーなんだよ!』
『えっ?
今の説明って夢ちゃん先輩が喋っていたんですか?』
『そう!』
『すごいです!』




