アプリコットピーチトッポ
24日。月曜日。雨。
『オカルトを持ち込みました!』
『あ。シーナちゃん。いらっしゃい』
『久しぶりだねぇ。
でもなんだか久しぶりな感じがしない』
シーナ博士が来店した。雨ふり。
歌ちゃんが微笑んだ。
夢ちゃんがブラックサンダー食べた。
次はトッポを食べるつもり。
夕方なので、いつもならショップはオレンジ色、
つまり橙色。だけど最近は雨ばかり。
『これは、シーナ的にもかなりの
オカルトだと認識しています。今回はこちら、』
『ジャパネットみたいだね』
『しっ。静かに夢くん。』
シーナ博士は、キッチンペーパーに丁寧に包まれた、オカルト案件。を取り出して、とろけるホワイトクリームシチュー色のテーブルに置いた。
『ペンですね?』
歌ちゃんが助手モードに入る。
『ふふふ。歌くん、なかなかの観察する眼だね。だが、惜しいこれは普通のペンでは無いのだよ』
シーナ博士が意味ありげにニヤリる。
『歌ちゃん、午後ティー飲んでいい?』
夢ちゃんはトッポ食べたから喉乾いてた。
『これはね、歌くん、呪われたペン……』
緊張。
『過去が見えるペンなんだよ』
凍りつく。オカルト空気
『……思い出ペン? とでも名付けようか、
なんともオカルトな……』
『パンみたいな名前だね。』
『しっ。静かに夢くん。』
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晴れ。
今から2日くらい前、
木曜日だったかな?
その当時、私はけーおん楽部に所属していて、マジに青春していました。放課後とか。
担当はベースをしたかったのですが、ドラム。
ドラムって、演奏者をドラマーて言うんですよ。
ドラマー。drummer。
なんだか私にはそれが納得いかなくて、
ドリーマー。dreamer。
ね。
かわいいよね。
納得いきました。そうすると不思議なことに、私の演奏スタイルは、最初っから、ドリーマーだったんじゃないかな? 楽しいなあ。となりまして、マジ青春。放課後。あの頃。
けーおん部には女の子しかいなくて、
放課後の部室は良い匂い、アプリコットとピーチの淡い色がにじむような、甘い……それに、
人間なんだもの、少しの汗と、
ガラス窓からの橙色がまぜって、なんだか恥ずかしいような、少しだけ、本当に少しだけ、悪いことをしているような匂いで……。
生きている女の子の匂い、でした。
でも、そんな大げさな感じじゃぜんぜん無くて、
生きているのを特別に意識していたわけじゃ無かったです。
ただ……
キラキラと輝いていたの。
そんな放課後のある日、いやちがう。
そんな青春のある日の放課後。
木曜日。
その日は朝から雨で、けーおんのみんなと
明日も雨かもね、なんてたわいもないお喋りをして、それなら明後日だって雨かもね、なんて
葵ちゃんが笑って、そうするとみんな笑って、
土曜日は晴れるかな。なんて空ちゃんがいって、笑いました。放課後に。
晴れたなら、橙色の部室で。
青春でした。
いつもみたいな、くいしんぼタイム。
葵ちゃんが午後の紅茶を。
みんなが好きなストレートティー。
真凜ちゃんも、空ちゃんも甘いお菓子を。
私もこっそり持ってきていたお菓子を、
みんなで。
トッポショコラ味。
海ちゃんも甘いのもってきたのー?って、
みんなに笑われちゃった。
甘いものばっかりで、甘くて、なんだこれ。
ダイエットしなきゃね。って。
笑って
アプリコットと
ピーチと………
…………
…………………
『……ここで途切れちゃいます。
………何度やっても。』
歌ちゃんは、動かなくなった
左手のペンを見つめて、静かにつぶやいた。
『……そっか』
夢ちゃんは
規制線の黄色テープの向こう
橙色にじんわり染まる
半壊した校舎を見ていた。
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—2日前(木曜日)のニュース。
「本日、27日、午後5時頃、
大x市xx区にある学校で爆発事故がありました。警察や消防は辺りを封鎖して、事故の原因を調べています。」
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—28日。金曜日。雨。
ファンシーショップ夢ちゃん。
『橙色の、その時間に来て欲しい……』
ただそれだけを言い残して、
女の子は淡く、海の青色になって消えた。
『ゆ……ゆ……夢ちゃん先輩……い、今の?…』
『大丈夫だよ。歌ちゃん。』
『え?』
『明日、橙色を見に行こう。』
『………はい。』
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29日。土曜日。晴れ。午後5時半。
少しのマスコミ。
がさごそ。ビニールの袋。
お菓子屋さんで買ってきたのは
午後ティーのストレートティー。
トッポ。
彼女たちを記憶する言葉は
「爆発事故」なんかじゃない。
彼女たちを記憶する言葉
アプリコット
ピーチ
トッポ。
『晴れたね。』
夢ちゃんと歌ちゃんは、
トッポを食べた。
涙が邪魔だった。
甘くて。
橙色。
みんなでトッポを食べた。




