いきていたい
ぎょーん。
そんなまぬけな音を出して
うるさくしているのは何?
って、僕はお外に出てみた。
夜明け前の、あんな色。想像してみて?
その色の中を、ぎょーん。
なんつって全部ダメにしながら、
世界が終わってる。
お花屋さん。
古本屋さん。
なぜだか、僕はそんな関係のない事を
急に思い出して泣きたくなった。寝不足かな?
生きたいです。
本当です。
急いでお部屋に戻り、あれ?
どうして部屋に戻ったのだっけ?
とか考えてる時間的余裕はぜんぜん無いので、
目の前にあった小さなキャラメル。
それだけを持って、
かわいい靴を履いて、秒を争う、
そんな気持ちと不安とで、部屋から飛び出した。
息をはあはあ。走るの久しぶり。
こんなに心臓が心臓心臓してたっけ?
背中には、ぎょーん。うるさいなあもう。
とても怖い。
いつもぽんやりと、重たいまぶた
ジト目で見ていた、
普通の緑色のだるそうな痒そうな草や、
チョコれエト色に錆びた汚れ放置自転車、
走って通り過ぎて、そんな普通以下みたいなものだって、
もう2度とは見られないんだぞって。
いやだ。待って。
知らないぷりしていたかった。
泣くとうまく走れないから。
ぎょーん。
さようなら。全部の、ふつういかのものたち。
背中から、冷たい風が吹いてくる
汗かかなくていいね、ラッキー……
いやだ。
もっと優しくしてあげればよかった。
『ピザ屋とミラーボール屋さんの隣に、
かっこいいシェルターができたんだよ』
いつかお友達のトキ君が、そう言ってたのを思い出した。そこだ。そこに、走らなきゃ。
頑張るぞ。
レコード屋さんと、グミ屋さんと、
ハードグミ屋さんの前を走り抜けて、はあはあ。
トキ君は、銀髪でとても優しい人だったなあ。
いつかちゃんとありがとうを言わなきゃ。
その時には泣いちゃっててもいいよね。
ぎょーん。
はあはあ。
後ろ見るな。
かっこいいシェルターになんとか、
はあはあしながら辿り着けたのは僕だけで、
あちこちすりむいて
ほかのみんなはどうしたのかな?
まだ寝ていたのかな?
心臓が痛い。
たぶん走りすぎたから。
たぶん寝不足だったから。
もっと優しくしてあげればよかった。
『いらっしゃいませ。
こちらはアポカリプス生き延びるぞ屋です。
いつもご利用いただきありがとうございます。』
かっこいいハイテク音声が
イケてるスピーカーから聞こえてきた。
すごく丁寧で落ち着いていて、こーゆー時こそ慌てずに、落ち着いて行動しましょう。
深呼吸を。のお手本になりそう。
『あ。あ。あのあの。……』
手をふんふんして、
僕が慌てている見本のまねっこをしていると、
『こちらのマイクからお注文を承ります』
ドライブスルーみたいな、システムの箱にマイク搭載。かっこいいなあ。ぎょーん。あわあわ。
冷たい風。やだやだ。
『あの、、生きたい。』
『かしこまりました。それでは生き延びシェルターへの受付を開始いたしますので、そのままマイクを切らずにお待ちください。〜♪』
保留のあの音楽。
♪
深呼吸だ。
指先が冷たくて痺れてる
『大変おまたせいたしました。
生き延びシェルターへの受付を開始いたします。いくつかの質問にお答えください。』
『はい。あの! 少し急いでもらえますか?』
『かしこまりました。
1.25倍速にて対応させていただきます。
よろしければ数字の1を。
よろくなければ数字の2を。
このメッセージをもう一度最初から
聞きたい場合は数字の3を……』
『いち!』
ぎょーん。
怖い。
冷たい風。
キャラメル
いきていたい
ぎょー ん ………




