うずまき色ピヨ
公民館。揺れる。黄色の中。
やかんの音。ピー。
お湯が沸いてるよー。
実況
「興奮さめやらぬ。さめやるつもりも無し。」
解説
「血が燃えているのです。」
ピー。
ステージに出てきたのは、歌ちゃん。
可愛らしいピヨの着ぐるみは黄色。
翼をピヨっとさせて、ステージをふわりと踊る。
実況
「やあ。ずいぶんと可愛らしくヒヨコちゃんですね。いや、ここはあえて平仮名で、
ひよこちゃんと申し上げます。」
解説
「そうですね。平仮名こそが、この今にふさわしい。私はそう思います。思っているのは私、
ポールです。ひよこちゃん。」
ひよこの着ぐるみで、ふわりんくるりんと踊る
歌ちゃん。
とてもとてもとてもとても……さ♪
ピー。
お湯沸いてますよ?
踊る歌ちゃんは、黄色に向き合い、
一生懸命。
いつだってこの子は。
そうなんだよ。
いつだって。
超満員の公民館、みんなの見つめる中を、
全力で黄色をする。
照れてほっぺはピンクだけれど、
着ぐるみはレンタルで、少し色が褪せてはいるけれど、
それでも、それは、
美しい命の、黄色。
公民館のみんなの目に涙が溢れてくる。
あれ? これは、なんで?
実況
「公民館のみんなの目に涙が溢れてくる。
あれ? これは、なんで?」
解説
「命の輝きです。」
透明な涙。
幸せな今。
だが。
歌ちゃんは、ここで踊りを止めた。
ステージに設置された丸いローテーブルに、
黄色を置いて、蓋を開けた。
解説
「チキンラーメンです。……涙です。」
歌ちゃんの目にも涙が、溢れる。
愛おしい今を。
だけれども、黄色を。
卵をパカっと割って、中からは嬉しそうに、
それはもう美しい黄色が、
チキンラーメンの卵ポケットに
抱きしめられた。
お湯が。
沸きましたよ。
誰も声を発する事が、出来なかった。
心臓の鼓動よ、静かにして、とさえ思った。
歌ちゃんは、静かに目を閉じて、祈る。
ゆっくりと呼吸をして。
再びその目が開かれた時、
歌ちゃんの目は意思を宿していた。
やかんからは熱湯が、黄色へと。
少しずつ、だけど確実に、
黄色は熱にうなされ。
オフホワイトに、その色を変えていく。
幸せの想い出を、その胸にそっと秘めて。
やがてそれは
完全なオフホワイト。
もう二度とはもとに戻ることの無いものだった。




