うずまき くるくるらせん。
『歌ちゃん。』
控え室に戻ってきた歌ちゃんを、
夢ちゃんは抱きしめた。
『卵ポケットみたいだな』
あくびちゃんは微笑みながら、
そんなふうに感じていた。
公民館。涙の。
実況
「文学では、「幸福を明言した瞬間に、その幸福は終わり始める」という構造があります。
どうですか?パールさん。」
解説
「そのとおりだとおもいます……」
そよ風。
解説
「……ポールです。」
実況
「涙ですね。とても涙でした。
次でいよいよ最後の黄色です。いやあ涙した。
それでは、はりきってどうぞ」
ステージに出てきた夢ちゃん。
なんか普通。
寝癖はもはや寝癖とは呼べないんじゃない?
ずっと寝癖なんだもの。
いちおうキイロの虎の着ぐるみを着てみてはいるけれど、バターになる気みたいなものは、
雰囲気的に見られないし、とても普通。
はだしだし。
その普通に公民館のみんなも少しざわざわした。
夢ちゃんは、ステージの真ん中で、
脱力したまま手のひらをパーにした。
なんか空気が変わった。
あれ?
かつて、
円、回転、螺旋の真理の果てに
インフィニティを作り出した黒き龍。寝癖。
そのまま緩やかに円。
公民館のみんなの視線は、指先に集まる。
爪がちっちゃくてかわいい。
平面から、立体。
とどまることなく。
低く、高く、なめらかに、左右……
全方向へと
時間の概念までプラスしながら、
円。回転。螺旋。
くるくるらせん。
つまりは、
すごくかわいいだった。
くるくるらせん。
ちっちゃな足で、武の足運び。
ときおり、口が動くのは、もしかして、
がおー。なんて言ってるのかな?
『がおー。』
ほら。やっぱり。かわいいだ。
くるくるらせん。
実況
「かわいいですね。」
解説
「全くかわいいですよ。黄色ですね。」
実況
「あれ?でもパールさん、黄色は先程の歌ちゃんのステージで、オフホワイトになったのでは?」
解説
「ポールです。確かに黄色は結末を迎えました。ですが、それは本当に終わり、本当に無。
ということなのでしょうか?」
実況
「………」
アナウンサーが、何かに気がつきかけた。
だけどもそれは決して答えには辿りつかない。
解説
「終わりのその先。」
希望に溢れているくせに、
触ることのできないソレ。
解説
「くるくるらせんとは、我々が終わりだと、
思いこんでいる全ての事柄の……その先です。」
決して答えには辿りつけない。
夢ちゃんのくるくるらせんは、
ただゆるやかに。
かわいいだった。
言語化できない何かが、
みんなの心に溢れている。
何かが……
やがて、くるくるらせん。は、
まるで何事も無かったみたいに、速度を落とし、
遊びを残しつつ完了した。
ある人には♡が見えた。
ある人には⭐︎が見えた。
涙と鳥肌とはなみずと、寒気と暖かさ。
コーンポタージュをのみたいな。
涙をふいてからね。
はなみず、ちーんしてからね。
そうして、不思議な気持ちを残して、
カーニバルは終わりました。
心が燃えているのに、
指先が冷たいのは、
きっと冬の夜の、
少しだけ冷たい空気のせい。




