世界の終わり。4
『…なんか、いい匂いする…。』
『えへへー、今日は久しぶりに、
パンを焼いているんですよ。』
『…パンの焼ける匂い好き…』
『夢ちゃん先輩も一緒に食べます?』
最近はすっかり来店者も無くて、
平和で穏やかでゆるやかな朝が続いていた。
ラジオでは、
最近、大人気の
ザ・マシンガン・エチケットの曲が流れている。
スターダストベイビーってタイトルの曲は
朝から心の速度を上げてくれる。
『歌ちゃん、今日は知恵の輪しないの?』
夢ちゃんが聞いた。
ここしばらくを
知恵の輪チャレンジに夢中になっていた、
歌ちゃん。
歌ちゃんは、
真面目でなんでも一生懸命にやりすぎる子。
知恵の輪ってる時は夢中になりすぎて
ハッと気づけばもうすっかり、夜ってた、
なんてのはまだマシなほうで、
ある時はあまりの夢中に
悟りを開く寸前まで行きかけた。
そんな歌ちゃんを
夢ちゃんはそっと見守っていた。
たまに居眠りしていたけど。
『…なかなか解けないので、
あまり焦らずに遊んでみる事にしました。』
夢ちゃんの分の紅茶を淹れながら、
歌ちゃんは照れくさそうに笑った。
『そうだねー。』
夢ちゃんが常に遊びつづけ、
歌ちゃんがそこまで夢中になる知恵の輪とは、
はたして一体いかなるものであろうか?
それは、
『解けそうで解けない、
解けたかと思えばラビリンス。』
と、いった類の悩ましきわけのわからぬモノと
秘密裏に結びつき、
耐え難き魅力と甘い言葉で人をそそのかし
誘惑をし、離さない。
ひとたび目をつけられたが最後、
人の心を惑わすだけ惑わせたあげく、
ニヤリと意味深に笑って、
最後には背中を向ける。
無限大(♾️)の象徴であり
地獄の入り口なのだ。
そんな危険物で遊んではいけません!
必死の説得むなしく、
歌ちゃんはサメさんクッションに包まれて
早くも知恵の輪に夢中になっている。
…ご武運を!
世界の終わり、
もう少々お待ちいただけますか?
…って!
次のお話にひっぱろうとしていた
その時であった!
『…?』
その異変に誰よりも早く気がついたのは
夢ちゃんであった!
『…歌ちゃん…。』
地獄の入り口にいる
歌ちゃんはまだ気が付かない…。
『歌ちゃん、おーい』
『えっ?…なんですか夢ちゃん先輩?』
『なんか…』
『…?』
『なんか焦げ臭いよ?』
『…? あっ!!!』
そうです!!
歌ちゃんはラビリンスに夢中になるあまり、
パンを焼いている途中だって事をー
すっかり忘れていたのです!
『たたたたっ…たいへーん!』
ラビリンスを放り投げ、
慌てて走って行く歌ちゃん。
…しばらくバタバタガチャーンと音が聞こえて、
キッチンから戻ってきた歌ちゃんの
トレイの上にあったモノ…。
それは真っ黒に日焼けしたパンだった。
『っ……!ぷーっ!』
夢ちゃんは、それを見て我慢できずに
思わず吹き出してしまった。
『わ…笑わないでくださーい!』
エピソード4
《世界の終わり》。。。
終わり。
また次回をお楽しみに!
…このまま終わるのは納得いかない?
世界の終わりとは何だったのか?
『やってはこなかった。』
『そこで見てもいなかった。』
『パン焦げた。』
ワタクシの口からお答えできる事は
今はそれが全て、でございます…。




