夜行性の女の子たち。
5000年前くらい。
夏くらい。
この当時、夏休みなんて概念は無くて、
夏休みどころか、電気も無い。ガスも無い。
あるのは想い出だけ、なんて雰囲気で
すごくみんなはロマンチックに毎日を退屈していたのです。
ぬるい風の心地よい丘の上に女の子がひとり。
『僕は夜行性だから、夜はこうして毎日、
お空を眺めているの。お空にはピカリ光る、お米粒みたいなのがあって、かわいい。』
電気もないので、もちろん街灯も無い。
お空の光るお米粒だけが、女の子をほわりと照らしていた。
『でもさすがに毎日毎日、ライスを見つめているだけなのも飽きてきちゃったな。
例えば、あのお米粒とお米粒とを、細いワイヤーみたいなので繋いだらどうなるんだろ。』
女の子は、まず頭の中に細くて長くて、
何よりも美しさを優先させたワイヤーを
イメージした。すぐできた。
その美しいワイヤーで、自由に光を繋げて遊ぶ。
『あ。楽しいかも。』
この夜に完成したのは、大きなまあるい形。
女の子はその大きなまあるい形に、
きなこドーナツと名付けた。
《きなこドーナツ座》の誕生日。
なんとなくそのお話は、みんなに広まって、
夏の大きな、きなこドーナツは、
夜に海をフネフネする船の目印になったり、
手を繋いで好き好きする、
誰かと誰かの瞳をキラキラさせた。
それから、2000年の時が流れて。
また別の場所の別のゆるやかな丘の上に
夜行性の女の子がひとり。夏の夜。
『きなこドーナツ座が綺麗に見えるなあ。
かわいいなあ。おいしそうだなあ。』
電気もないので、もちろん街灯も無い。
退屈を、もてあました女の子は、頭の中で、
細く長く、そして……何よりも美しさを優先させたワイヤーをイメージした。
それは、5000年前の、あの夜に、
あのぬるい風の丘で、あの女の子がイメージした
ワイヤーと全く同じもので、それは本当に奇跡としか言いようが無いので、感動するしかない。
夜空を見上げて、
美しいワイヤーで光と光をつなぐ、
そして、この夜に完成したのは、
大きなまあるい形で
女の子は、そのまあるい形に、
たまごボーロと名前をつけた。
《たまごボーロ座》のお誕生日。
そうしてそれからまた1000年の時が流れて。
夜行性の女の子。夏の夜空。お米粒。ぴかり。
優しい丘の上。
細く美しいワイヤー。
奇跡は、再び。
女の子は、これまでの女の子がそうしてきたように、ピカリのライスを、自由に繋いで遊ぶ。
大きな、まあるい形。
女の子はそのまあるい形に、
白い風船と名付けた。
《白い風船座》のお誕生日。
そして現在。
なんだか眠れなかった夢ちゃんと歌ちゃんは、
夜行性になって、夜のお散歩。
ぬるいけれど、気持ちのいい風。
星がたくさん見える丘の上。
『わあー。綺麗だね、歌ちゃん。』
『本当、綺麗ですね。夢ちゃん先輩。』
夜空にピカり、ライス。
ふたりの瞳も星屑みたいにキラキラ。
星空があまりにも綺麗すぎて
なんだか少し寂しいような気持ちになって、
夢ちゃんは、歌ちゃんの手に甘えたくなって、
『歌ちゃん。手つなぎたい。』
歌ちゃんは、嬉しくて、
でも少し照れ笑いしながら
『はい。』
きなこドーナツ。
たまごボーロ。
白い風船。
を、
ふたりで見つめていたよ。
手をつないで。
……ここで、終わると思ったのに、
夢ちゃんたら、美ワイヤーで、
夜空の大きな3つのまあるい形を
縦に串刺し。
『おだんご。』
『美味しそうですね♪ 』
何千年もの時を超えて、続いてきた
美しいものをつなぎたくなる、自由な遊び心。
感性の系譜。
奇跡。




