明けの明星。4。
ふたつの一平ちゃんの前で、
うなだれたまま動かない、
動けない。歌ちゃん。
静寂。
信じられない光景だった。
誰も言葉を発する事が出来なかった。
まさか、マヨビームが外れるなんて。
スタジアムの時間は、止まっていた。
棒立ちになった警備員の間をすり抜けて、
夢ちゃんは、
うなだれたままの歌ちゃんの髪をなでなでして、そっと胸に抱きしめた。
ぎゅ。
るめらちゃんが、声をかける。
『歌選手。素晴らしい戦いをありがとう。』
夢ちゃんの胸に顔をうずめたまま
歌ちゃんのぐすぐすと鼻をすする音。
スタジアムから、断続的なパチパチが鳴り始め、
すぐに大きな大きなパチパチになる。
全力を尽くした両選手への、
リスペクトパチパチ。
鳴り止まない、リスペクトパチパチ。
———。
18年ぶりの、アシュラは、るめら選手の優勝で幕を閉じようとしていた。
閉会のセレモニー。レッドブルのCM。
大会総括をするのは、
大会委員長のバッジョちゃん。
『決勝に相応しい素晴らしい戦いをありがとう。
るめら選手。歌選手。』
リスペクトパチパチ。
『数々の困難を、試練を乗り越え、戦いに挑む選手の皆さんの全力の姿は、きっと世界中の人々の心に勇気を与えたことでしょう。』
リスペクトパチパチ。
『今回、結果の出なかった選手もいると思います。ですが、どうか胸をはって、顔を上げて、
誇り高くあってください。』
リスペクトパチパチ。涙。
『マヨビームを外す事ができるのは、
マヨビームを発射する勇気を持った者だけです』
涙。パチパチ。涙。リスペクト涙。
『勝者とは、困難の中にあっても
決してあきらめない人間のことだ。』
どぱちーん。
スタジアムに大きなダイヤモンド花火があがる。
キラキラ。しゃわしゃわ。
夢ちゃんと手を繋いで、
うつむいていた歌ちゃんは、スッと顔をあげて
夜空に咲くダイヤモンドを見上げた。
まだ涙と鼻水でぐずぐず。
ほっぺも目もピンクっく。
その顔は、光の宝石にキラキラと照らされて、
とてもとても綺麗で、
その瞳は、次の戦いに向けて輝いていた。
歌ちゃんのあまりの綺麗さに、ぽんやりと
見とれていた夢ちゃん。
あ、それでも、なんか言わなきゃ。
歌ちゃんを元気にしてあげるんだ。
なんか、んふふ。って笑えるようなのがいいかも。
えっとえっと。
『歌ちゃん……』
『はい……夢ちゃん先輩。』
『はなみず かわいいね♡』




