狂おしいほどに愛おしい。
『ぷんぷん。なんでなの。』
精密な何かや、難しそうな図面だらけのお部屋で、なんだかぷんぷんしてる子がいて、
えんぴつを持つ手は左。
名前はプロメちゃん。
『どうしたの? そんなぷんして。
なにかあったの?』
その様子を心配したお友達の、
ジョカちゃんが、ゆるやかな口調で話しかけた。
『あのね、どうしても納得いかないの。』
プロメちゃんは、ジョカちゃんのほうに
くるくるチェアごと体を向けて、
早口で心にあるものを説明し始めた。
『普通にしていたらね、普通に。
150年は持つ設計なんだよ。ただ普通にしてるだけでいいの。』
『うんうん。』
『僕としてはね、設計図。
心臓も内臓も血管も筋肉も脳も、お肌だって
最高品質の設計図で、150年はいけるように、
そのように完成させて出荷したんやぞ!
それなのに、なんで、なんで、
わざわざ煙吸ったり、ノー野菜な生活したり、寝不足したり、電気ポットで頭蓋割ったり、ドラッグのアレに手を出したりして、30年とか40年、
なんならもっと早く10年15年なんて瞬きみたいな一瞬で、死ぬんのよ。
ぜんぶ台無しにして死んでいくのなんでなんで』
頭を抱えながら。
抱えていたと思ったら、
天井のミラーボールを見上げたり、
ぐーしたり、ぐーをふんふんしたり。
プロメちゃんは、心からなんでなんでした。
『まあまあ。おちついてねプロメちゃん。
はい。これあたたかいよ。』
ジョカちゃんは、かわいらしい陶器のマグカップをプロメちゃんの手に握らせた。
『あ。おいしい……ファンタ好き』
『ね。』
少し落ち着きを取り戻したプロメちゃん、
いつのまにかポイしていた靴下。
そんなプロメちゃんに微笑みながらジョカちゃん
が言う。
『そのあたりを一度、お話したいなあって思って今日は、中身を呼んでみたの。』
『え? 中身?』
『プロメちゃんの最高の外身。にライドする
その中身だよ。どうぞお入りください。』
ジョカちゃんに呼ばれて、お部屋に入ってきたのは、ふわふわした綺麗なお水みたいな子で、
名前は、
『こんにちは。わたし、こころちゃん。』
『初めまして。僕はプロメです。さっそくだけど、こころちゃん、なんでなんで?』
純粋ななんでなんでをぶつけるプロメちゃん。
ジョカちゃんは、
あえてゆっくりと、こころちゃんにファンタをすすめた。
『こころちゃんも、あたためファンタ飲む?』
『わあい。ありがと。ファンタ大好き』
ファンタオレンジをおいしいおいしいして
こころちゃんがお話しを始めた。
『ファンタが好き。だけど、明日はココアを飲むかもしんない。ナポリタンも食べたい。』
『ふむ。なるほど?』
『ダメなのに、わかっているのに……
刹那的な恋をしちゃうかもしんない。』
『なるほどなるほど?』
『わざわざあちこちのネジを緩めて生きちゃう』
『ふむふむ。』
『予定どおりに、設計図どおりに、
上手に綺麗に150年も生きてたまるか』
『わ。急に口調がハリケーン』
『そうやって、設計図を無視して、
バグらせながら、自分の心に素直に生きようとする。』
『なるほど?』
『だからこそ、まぬけで、かわいくて、そして
狂おしいほどに愛おしい』
『あ。なんだか泣きそうになる』
そんなふたりのやりとりを見ていた、
ジョカちゃん。
『プロメちゃん、えんぴつ、左手にもってるよ』
『え? あ。本当だ。なぜ?』
プロメちゃんは右利き。
『靴下はどうしたの?』
『え? あれ?
かたっぽ脱いじゃってる。いつのまに?』
『ロマンチックだね。』
ジョカちゃんの微笑みは、光にあふれていた。
その、プリズムはプロメちゃんの瞳をキラキラとさせて、
『なんだか。少しだけ……納得できた気持ち。』
照れ笑いをするプロメちゃん。
光にあふれたお部屋で、
こころちゃん。
プロメちゃん。
ジョカちゃんは、
あたためファンタを飲んだ。




