どりーむしあたー。
これは夢ちゃんの見ている、どりーむのお話。
あんまん。メリーゴーランド。
絵本。ぬいぐるみ。キャンディ。
おだんご。
ふわふわのドリームの中で、
夢ちゃんはニコニコしています。
あっちの、甘い匂いの海から
ピヨピヨと泳いできたのは、たいやき。
『たいやき……』
夢ちゃんは絵本を読む手をとめて、
たいやきを見つめる。
絵本は
〈アキレスと亀。〉
たいやきには名札がついていて、
〈おしるこたいやき。〉
『いいなあ。美味しそうだなあ。』
夢ちゃんは立ち上がり、たいやきに手をのばす。
『あれ?』
届かない。
リトライ。
届かない。
リトライ。
届かない。
——
夢ちゃんの出発点を「A」とし、夢ちゃんが出発した時のたいやきの位置を「B」とする時、
夢ちゃんが「B」に到着した時にもたいやきは移動を続けているため、「B」よりも数メートル先の地点「B1」にいる。
次に夢ちゃんが地点「B1」に到着した時、たいやきはさらに数センチ進んだ地点「B2」にいる。
この事象を繰り返した時、夢ちゃんとたいやきの距離は限りなくゼロに近づくが、決して夢ちゃんがたいやきを手にすることはできない。
———
『夢ちゃん先輩、朝ですよ。起きてください。』
永遠とも思える、おしるこたいやきとの追いかけっこの途中、夢ちゃんは歌ちゃんに優しく揺り起こされた。
『あれ? たいやき?』
『寝ぼけてるんですね。おはようございます。』
そんなどりーむと、朝を何日か繰り返した、
ある朝の暖炉色のテーブルでの会話。
『ねえ。歌ちゃん……』
『届きそうで、届かないものってある?』
折り紙をしながら、夢ちゃん。
『届かないもの……ですか。うーん。』
少し考える、歌ちゃん。
いつの日か、不思議な夢の中でみた、
ミルキーな霧の中で
ひとりポロポロと泣いている
小さな女の子……
(夢ちゃん)
の事を想った、けど、少し微笑んで、
『お星さまとか、お月さまとかですかねー。』
『ふうん。』
『夢ちゃん先輩、何かあるんですか?
届きそうなのに、届かないものが……』
『うん。たいやき。』
『え?』
『おしるこたいやき。逃げちゃう。』
『…………?』
———
お昼になったので、
歌ちゃんの買って来てくれた、
たいやきをほおばりながら夢ちゃん、ニコニコ♪
『さっきのお話ですけど……』
歌ちゃんもたいやきを食べながら、
朝のお話の続きを。
『追いかけるから、たいやきも
逃げちゃうのかもしれないですね。』
『そうなの?』
『追いかけっこだ、わーい。って、
思ってるのかもしれないですよ』
『ふーん。』
———
お月さまや、お星さまは、
すぐそこにあるみたいにキラキラして
夜の時間。
夢ちゃんは、どりーむしあたーへ、
すやすや……
たいやきピヨピヨ。
たいやきはいつもみたいに、夢ちゃんから、
ほんの少し離れた場所を、楽しそうに泳いでいる。
『おしるこたいやき……』
夢ちゃんは、その場に、ちょこんと座り、
両手をいっぱいに広げて、
目を瞑った。
『たいやき♡ おいで。』
あくちをあーん。
それを見た、たいやきは、
嬉しそうにしっぽをふって、
息をはずませながら、夢ちゃんへと泳いでくる。
『もが。』
たいやきはそのまま、
夢ちゃんのおくちの中へ、
飛び込んだ。
『たいやき♡』
『夢ちゃん♡』
おしるこの香りが、
おくちの中いっぱいにひろがって、
せかいいち あまい。




