出口をつくってあげるね。
『ひっぱりごっこさん……ですか?』
『そーなんです。』
通学路の途中にある、電柱の後ろ。
そこに
《ひっぱりごっこさん》
なるオカルトが発生したみたい。
来店したのは、そのオカルトにひっぱられた
女の子で、名前は——あれ?
名前が思い出せない。……
女の子と夢ちゃんと歌ちゃんは、問題の電柱へ。
昼間なのに、その周辺だけが薄暗い。
あきらかに、暗い。
一度、ひっぱられてしまったなら、
もう2度と戻れないような……
『明るくしたら、暗くないよ。』
夢ちゃんは、そう言うなりどこかから連れてきた
ミラーボール屋さんにお願いをして、特別キラキラしたミラーボールを設置した。
『お花とか、リボンとか飾ると
可愛いかもしれませんね。』
歌ちゃんと街のボランティアの皆さんの手によりまるで、何かのお祝いの夜みたいに、
ピンクを基本に可愛らしい飾り付けがなされた。
『気持ちが落ち込んでいる時は、
元気な歌を。楽しい歌を聞きたいよね。
あとはワクワクなパフォーマンス。』
夢ちゃんは、今度はどこかからストリートミュージシャン。吟遊詩人。ストリートピアノパフォーマー、大道芸人さんを連れてきて、
その電柱の周辺を音楽とパフォーマンスの街に変えた。
あちこちから、街の噂を聞いた音楽っ子や、
お祭り騒ぎ好きっ子、芸術さん、お笑い芸人さんが集まった。
エンターテイメントの街。
似顔絵屋さんも、ダンサーの人たちも、ニコニコで、
もう電柱の周辺は暗くなんて無かった。
6月9日は、ロケンロのお祭り。
あの、
《マシンガン・エチケット》
《サイレン・サイレント》
そして、二人組の甘酒ロケンロバンド
《お前が飛んで来い!》
までが一堂に集結。
フェスをフェスフェスして、楽しかった。
フェスも終わり、街が大きな満足度と
気持ちのいい疲労感に包まれた頃、
電柱の後ろから……
《ひっぱりごっこさん》
が、なんだか照れくさそうに顔を出して、
『わたしもロケンロやお絵描きや編み物や、
いろんな創作。クリエイティブしたいな……』
と、笑った。
『うん。一緒に!』
と、嬉しそうに笑顔で
その手を優しくひいたのは
あの日、来店した女の子、
《ひっぱられごっこさん》
だった。




