メロンフラッペ。イチゴフラッペ。
『だって仕方なかったんだもん。』
ムウ博士が泣きべそしていた。
白衣の袖から
ちょぴっとだけ見える指がかわいい。
『……』
歌ちゃんは、ムウ博士の泣きべそに、
戸惑いの表情のまま、言葉を探して。
『だって……だって。』
研究所の中には、お花が飾られていた、
それはムウ博士の好きなお花。
アリエス。
『博士を責めないでやってくれ。歌くん。
彼女はただ、一生懸命だったんだ。』
アリエスの葉っぱに住んでいる、
アオムシさんが歌ちゃんを見上げる。
外から聞こえるのは、静けさで、
それは、穏やかに、
ゆるやかに、
終わりを意味していた。
『わかりました。ムウ博士。
——私、精一杯に頑張ります』
歌ちゃんが、微笑んだ。
『ホント?!』
『やってくれるかね! 歌くん!』
ムウ博士が、パッと顔を上げる
アオムシさんも歌ちゃんの言葉に希望を見た。
———
研究所を覆うドームが、ゆっくりと開いていく。
『歌ちゃん。ありがとう。』
ムウ博士の指が、ちっちゃくて可愛らしい。
『歌くん。厳しい戦いになるだろうが、
君の勝利を祈っている。』
アオムシさんが、歌ちゃんへ、
最大限の敬意を。そして希望を託した。
『はい。頑張ってみます……』
歌ちゃんは、どこか寂しげに、
ふたりにうなずいてみせた。
世界はとてもとても、
美しいくらいに静かだった。
『あ。そうだ。夢ちゃん、これを。』
アオムシさんが、
超巨大最終決戦兵器
歌ちゃんロボの操縦席の夢ちゃんに声をかけた。
『メロンフラッペとイチゴフラッペ。
どちらか好きな方をもって行くといい。』
———
迫る
《 曖昧な決意。》
《 優しさの否定。》
《 キラキラの色褪せ。》
《 言葉のあきらめ。》
《 心の死。 》
熾烈な戦いが始まる。
迎え撃つのはムウ博士が歌ちゃんを
勝手に改造した、
歌ちゃんロボ。
アオムシさんが叫ぶ。
『歌ちゃんロボ! 発進!!!』
ロケット噴射の轟音。
夢ちゃんは静かに
メロンフラッペと、イチゴフラッペを
操縦席のドリンクホルダーに、ホールドすると、
宝石のような紫の瞳に、
太陽の光を乱反射させ、
キラキラ!
そっと歌ちゃんにつぶやいた。
『終わったら、お家かえろ。歌ちゃん。』




