スズムシさん。リンリン。
うちはちゃんは、忍者でハーフバンパイア。
時は100年続く、戦国の世。
血で血を洗う過酷な時代背景。
忍を敵国に潜入させ、
情報を探るのは常識であった。
『それで、見つからないように屋根裏を歩いて、
スパイ活動をしていたんです。わたし。』
命がけの潜入。
『そんな危険なお仕事……』
歌ちゃんが、うちはちゃんの背負った過酷な使命、抗えない宿命に悲しみを感じた時、
『アルバイトです。』
うちはちゃんは、思ったよりポップだった。
『この部屋は敵国じゃないよ?』
寝癖ふわふわで夢ちゃん。
『え? そうなんですか? あらら。』
うちはちゃんは、タハーっ汗。
みたいな感じで、ハーフバンパイアのくせに。
そして、少しだけ、うつむいて、
『わたし、才能ないのかなあ……』
と呟いた。
『うちはちゃん……』
歌ちゃんは、それまでポップなニュアンスだったうちはちゃんのモヤモヤを見た。
『いつもいつも何をしてもダメダメなんです。
ドジっ子なわたし。忍者失格。
……もう終わりです。』
うちはちゃんの目には水滴が。
『大丈夫だよ。』
ふわふわ寝癖っ子の夢ちゃん、かっこよく立ち上がり、いつの間にか、ポーズを決めている。
暗雲を切り払う雷ねぐせ。
ピース。ピース。
あ! なんかこれ、大丈夫そう!
『夢ちゃん? 』
うちはちゃんが、夢ちゃんを見つめる。
夢ちゃんは、うちはちゃんを見つめる。
歌ちゃんは、ふたりを見つめる。
リンリン。
スズムシさん。
『ゆく河の流れは絶えずして、
しかももとの水にあらず。ピース。ピース。』
夢ちゃんの発した謎の呪文。
『?』
『夢ちゃん先輩?』
?。
が歌ちゃんと、うちはちゃんの心に発生する、
だけども、夢ちゃんは続ける。
『これから、ゆっくりね、ゆっくり。
少しだけ、うまく行くようになればいいんだよ。ひとつの形にとらわれず、自由に。』
珍しく、熱く、元気に語る夢ちゃん、
もう目は覚めているみたい。
『うちはちゃんは、
まだ何も終わってなんかいないんだから。』
スズムシさん。
リンリン。
『夢ちゃん……』
うちはちゃんは、ピース。ピースに、
希望を見出した。
『夢ちゃん先輩、前向きで、とても勇気が出てくる呪文です。えっと……何でしたっけ?
ゆく河のながれ……?』
歌ちゃんの目がキラキラしている。
『ゆく河の流れは絶えずして、
しかももとの水にあらず。』
『ゆく河の流れは絶えずして、
しかももとの水にあらず。』
『ピース。ピース。』
『ピース。ピース。』




