ホットはちみつカルピスれもんミルク。
『げほげほ。』
夢ちゃんが風邪ひいた。
『風邪じゃないよ。熱ないもん。』
風邪は認めなければ、それは風邪ではない。
『げほげほ。』
大丈夫なのかな?
『大丈夫だよ。喉がちくちくする。』
マスクの隙間から覗く夢ちゃんの目が、
なんだか、ジト目なのは、
やっぱり熱があるんじゃないかな?
『夢ちゃん先輩、お熱、測りましょう』
歌ちゃんは、朝からジト目夢ちゃんを心配して
そう言ってるのだけれど、
『熱ないよ』
『げほげほ。』
の一点張りで、熱を測らせてくれない。
知恵の輪したり、
お魚さんを見つめたり、
なんだか自由にしている夢ちゃん。
『元気だよ。』
『げほげほ。』
風邪は認めなければ、それは風邪ではない。
頑なな夢ちゃん理論。
熱を測って、万が一にも発熱の数字が出てしまったのなら、
夢ちゃんの中で、その屁理屈が
がらがらと音をたてて
崩れてしまうのかもしれない。
『元気なんだもん。』
『げほげほ。』
—とりあえずお薬を飲ませて、
安静にさせなきゃ。
歌ちゃんの看病の気持ち。
『夢ちゃん先輩、とりあえず
このお薬を飲んでみてください。』
『これ何?』
『喉げほげほを、良くするお薬です。』
『風邪のお薬?』
『え?…ち……違いますよ。喉のお薬です。』
『苦い?』
『とてもあまーいシロップです。』
『ほんと?じゃあ飲むね。ありがと。歌ちゃん』
喉のお薬を
こっくん。と素直に飲んだ夢ちゃん。
ホッとした歌ちゃん。
小さな1歩。
だけどもそれは、とてもとても大きな前進。
ミッション1。成功。
『もう治ったみたい。』
『げほげほ。』
夢ちゃんは再び知恵の輪をしたり、
パズルをしたり、
今、絵本をよんでいる。
絵本は、ちゃんと物語のある、優しい絵本。
その様子をしばらく見ていると、
ジト目はうとうと。
お薬が効いてきたみたい。
こっくり……はっ!
うとうと………こっくり………はっ!
を繰り返していて、
可愛いんだけど、はやく寝かせてあげたい。
『夢ちゃん先輩、お薬が効いてきて、
もう眠たくなっちゃいました?』
ミッション2。お布団誘導。
『ぜんぜん眠くなんかないよ。』
『元気だもん。』
『お散歩行こっかな。』
『げほげほ。』
ミッション2。保留。
ゆるやかーに、立ちあがろうとする夢ちゃん、
『あ。じゃあ私、おいしいジュース作るので、
夢ちゃん先輩も、一緒に飲みましょう。』
『え?ジュース?やた。飲む。げほげほ。』
とりあえずお散歩は、
思いとどまらせた歌ちゃん、
キッチンから、はちみつ、ミルク、れもん。
カルピスをもってきて、マグカップにまぜまぜ。
『なにこれ。おいしそう。』
『お湯でまぜまぜして……
はい。出来上がりです。』
歌ちゃんの優しい優しい
ホットはちみつカルピスれもんミルク。
ふんわり湯気。
『ソーダは入れないの?』
『ソーダは入れませんよ。』
暖かくて甘くて、
優しい魔法のジュースを飲んだ
夢ちゃんは、
しばらく座ってゆらゆらしていたけれど、
絵本を開いたまま、すーすー。
眠ったみたい。
暖かくして、たくさん眠って、
はやく良くなろうね。
たくさん、遊ぼうね。
歌ちゃん、ありがと。




