ローファーとスキップ。2
『あのね。わたしね……塾に通ってるの。』
『塾って何っスか?』
『……わかんないの?』
『わかんないっス!』
『お勉強するところだよ。』
『お勉強っスか?すごいっス!楽しそうっス!』
『ぜんぜん……楽しくなんかないよ』
『なんでっスか?』ピッ。
『なんで?……んー。つまんないもん。』
『お友達とお勉強、
とっても楽しそうっス!わーいっス!』
『……君は何にもわかんないんだね。』
『ぜんぜん、わかんないっス!』ピッ。
『あとね……欲しいお洋服があるんだけど…
ママが買ってくれないの。』
『ヨツミちゃんが自分で買えばいいっス!』
『……そーゆーんじゃないんだよね。』
『ぜんぜん、わかんないっス!』ピッ。
『……まつ毛だって、くるくるさせたいし……』
『くるくる、かわいいっス!』
『ね。かわいいよね。あとね……』
たよりない外灯の光に集まって、
夜のちょうちょさんがひらひらしていた。
ピッ。
『このローファーもね、
ずっと履いてると、つま先が痛くなっちゃう』
『痛いの、かわいくないっス。』
『だよねー。だからね、つま先が痛くなんないように、ぷにぷにのジェルみたいなの欲しいんだ』
『そしたら痛くないっスか?』ピッ。
『わかんない。』
『ルンルンもわかんないっス!』
『ふふふ。ルンルンってさ、
なんにもわかんないんだから……かわいい。』
『わーい!嬉しいっス!』
『ふふふ。』
『あ。ヨツミちゃんも滑り台するっスか?』
ピッ。
『……滑り台なんかしないってば。』
『なんでっスか?』
『なんでも。』
『ぜんぜんわかんないっス!』
『わたしも、わかんないや。』
『シュワワーンっス!楽しいっス!』
『………ホント?』
『ホントっス!』
『……じゃあ……ちょっとだけなら、
……滑ってみてもいーよ。』
『わーいっス!』
ピッ。
『ふふふ。』
————
『……シュワワーン。』
ヨツミちゃんは、とてもとても小さな声で、
滑り台をしてみた。
『楽しいっスよね!次はルンルンの番っス!』
『うん。楽しいね。』
『わあーいっス!』
ピッ。
ピッ。
『……ねえ、ルンルン。』
『ルンルンっス!』
『……やっぱ、いーや。』
『どうしたっスか?
ちゃんとヨツミちゃんのお話聞いてるっス!』
『……んー。なんでもない。』
『なんでっスか?』
『なんでも。』
『じゃあ、一緒に滑り台するっス!』
『うん。』
交代っこに、
滑り台するヨツミちゃんと、ルンルン。
ルンルンのくっくは、歩くたびに、
ピッ。
て音がして、かわいくて。
ヨツミちゃんの、ローファーだって
きっと明日には
スキップしているかもしれない。




