ローファーとスキップ。1
公園にはもう誰もいなくて……
あ。いた。誰?
『わたし、夜罪。』
女の子の名前はヨツミちゃん。
滑り台の1番てっぺんにいて、
何か思い詰めたような顔をしている。
ローファーの中敷は薄い水色で、
滑り台の階段のとこに、
キチンと揃えられている。
靴下だけの足に、
金属の板の冷たさとデコボコが嫌な感じ。
ゆっくりと目を閉じたヨツミちゃん。
滑り台のてっぺん。
手すりから身を乗り出して———
『ルンルンっス!』ピッ。
元気いっぱいの自己紹介に、
ヨツミちゃんは思わず手すりを掴んでしまった。
『び。びっくりした……』
『ルンルンっス!ごめんなさいっス!』ピッ。
『え?……誰?』
『ルンルンっス!こんばんはっス!』ピッ。
『……え?』
『ルンルンっス!』ピッ。
『………』
『ルンルンっス!こんばんはっス!』
『……変な子。るんるんてゆーんだね。』
『こんばんはっス!』
『わたし……ヨツミ。こんばんは。』
『滑り台楽しいっスよね。
ルンルンも滑り台しに来たっス!』ピッ。
ルンルン、にっこにっこー。
ヨツミちゃんは、困り。
『わたしは、別に滑り台なんかしないよ……』
『ヨツミちゃん滑り台しないっスか?』ピッ。
『しないよ。』
『ルンルン、順番待ってるっス!』
『……滑り台なんかしないんだってば。』
『なんでッスか?』ピッ。
『……なんでも。』
ルンルン、にっこにっこー。
ヨツミちゃん、困り。
ルンルン、にっこにっこー。
『……あのね。わたしが、
なんで滑り台なんかしないのに、
こんなとこにいるか……
教えてあげよっか?』
『教えてほしいっス!でもッスね。』ピッ。
『でも、なに?』
『いっかいだけ、
滑り台してからでもいーっスか?』
『……いーよ。……滑りなよ。』
『わあーい!滑り台シュワワーンっス!』ピッ。
ルンルン、にっこにっこー。
『……足つめた。』
ヨツミちゃん、
足が冷たいからとりあえずローファー履いた。
『滑り台終わったっス!楽しかったっス!
ありがとうっス!ヨツミちゃん!
お話、なんだったッス?』ピッ。
『どうして、わたしがこんな
滑り台なんかにいるかって、お話。
ちゃんと覚えててよ……』
『もう、忘れないっス!』ピッ。
『じゃあ、お話してあげる。あのね……』
『音声記録開始っス!』
『え?なんか言った?』
『お話、聞きたいッス!』
『ちゃんと聞いててよ?
あのね、わたしね、滑り台の上から……
飛び降りようとしていたの……』
『なんでっスか?』ピッ。
『なんでって……わかんない?』
『ぜんぜんわかんないっス!』ピッ。
『君は、なんにもわかんないんだね。
あのね……わたし、
何もかもに絶望しちゃってるの。』
『なんでっスか?』
『なんでって……聞きたい?』
『お話聞きたいっス!』ピッ。
『そんな聞きたいんなら……お話してあげる。』
『ヨツミちゃん、ありがとうっス!』ピッ。
ヨツミちゃんは、
ゆっくりと、
その壮絶な半生を語り始めた——




