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ハサミ。5



ピンポーン。


どなたさまか、いらっしゃったみたい。


『はーい。』


ビダルちゃんが、エントランスホールで

来客に対応する。


誰だろう?


歌ちゃんが、エントランスホールを、

チラッと覗く。


そこにいたのは、



あっ!



顔が180度、反対を向いた女の子。



歌ちゃんは、一瞬、

心が凍りついたようだった……けど。



『カットの予約をしていた、ヘレネーです。』


『はーい。じゃあこちらへどうぞー』



——



さあ。


ここからは歌ちゃんの


凍ってしまった心の


「解凍」が始まるよ。  



親愛なる、皆さま。


ハサミ。


「解凍編」


でございます。



ヘレネーちゃん。


前髪が長すぎて、前も後ろも後ろ。 

みたいに見えていたんだね。


なぜ、そんな前髪が長くなるまで

ほっといたの?

 

『わたし、ビダルちゃんに憧れてて…。

髪を切るなら絶対にビダルちゃんに

カットしてもらいたいって決めていたんです』


なるほど。


『でも、ビダルちゃん

世界的なヘアメイクアーティストだから、

なかなか予約が取れなくて……』


 

なるほどなるほど。



『そうしたら、こんなに前髪が

伸びちゃいました。あはは。』



そっかー。



『ごめんねー。世界ヘアサロン会議とか、

ヘアメイクトークショーとか、

いろいろあって、予約なかなか空かなくて…』



ビダルちゃん、本当にお仕事忙しかったのね。


つかぬ事をお聞きしますが、

ビダルちゃん、フルネームはもしかして…



『サ・スウン。です』



あー。なるほどなるほど。



いちおう聞きますけどね、

エントランスホールのハサミ。


あれは?



『初めてヘアカットのグランプリで

優勝した時の想い出のハサミなの。』


 

なるほどなるほど。



あ、あともうひとつ。


ヘレネーちゃん、なぜトンネルに?



『?なぜって……

ただ歩いていただけですよ?』




チーン。



「解凍」


が終わりました。



歌ちゃんの心は、もう凍ってないよ。



あたたかーい。














 









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