ハサミ。3
空気が冷たいので、
あたりは夕焼けを終わりにして、
夜の紺色に変わっていく途中。
夢ちゃんと歌ちゃんは、テクテクと歩きながら、
ポトフが食べたいな。
でも、チキンクリームスープもいいかも。
それともコーンクリームスープかなあ?
なんて話をしながら、
グミの乗りもので17分、
徒歩だと18分の距離を歩く。
そろそろトンネルが見えてきた。
やっぱりおでんがいーかもしんない…
夢ちゃんがそう言った時、
歌ちゃんは、トンネルの向こう側から
こちらに向かって歩いてくる人影を見た。
『……!』
暗くてよく見えないけれど、
その不吉な雰囲気は…
とても良くない雰囲気は
見えなくても分かった。
——顔が180度、反対に向いている女の子。
ゆらゆらと揺れながら……
こちらに歩いてくる。
『見ちゃダメだ。』
歌ちゃんの本能がそう告げていた。
『ゆ、夢ちゃん先輩……だ、だーれだ!』
歌ちゃんは咄嗟に
隣の夢ちゃんの両目を、目隠しした。
『え?歌ちゃん……?
だーれだゲームするの?』
歌ちゃんに目隠しをされたまま、
夢ちゃんは楽しそうに言った。
『そ、そうです。だーれだゲームです。』
心臓の鼓動がドキンドキン。
顔が180度、反対に向いている女の子が
すぐそこまで歩いてきている。
暗がりの中に、黒い髪が見える。
歌ちゃんは、ぎゅっと目を閉じた。
『んーとね。……歌ちゃんかなー?』
ニコニコ答える夢ちゃん。
歌ちゃんの手が震える。
スッと、歌ちゃんの横を、
何かの気配が…
冷んやりとした空気が通り過ぎた。
『歌ちゃーん?どうしたの?』
夢ちゃんの声に、ゆっくりと目を開けると、
そこにはもう誰もいなかった。
『せ…せいかーい。私でしたー。』
歌ちゃんの声は震えていた。
——
『おでん!』
ウインナーおでんを、
夢ちゃんは、あちあちしながら食べてる。
『熱いから、フーフーしてくださいね。』
歌ちゃんが、猫舌の夢ちゃんに言う。
湯気がほわほわで、
たとえば、歌ちゃんが眼鏡だったなら、
目の前が幸せに曇っていたんだね。
おでん食べて、お風呂であったまって、
うとうとする時間。
『……僕、もー寝るね。
今日楽しかったね。
おでんおいしかったね。おやすみなさい。』
寝る前なのに、寝癖のふわふわ髪で、
夢ちゃんがおやすみを言って、
『はい。私もそろそろ寝ます。
おやすみなさい。夢ちゃん先輩。』
歌ちゃんが笑顔を返した。




