雪山のスクエア。1と2。
1。
雪山で遭難した4人。
眠ると死んじゃうから、
朝まで起きているために、
部屋の隅に1人ずつ立ち、順番に肩ポンする。
その方法で、朝まで眠らずにすみ、
無事に下山できた——
だけども……
あれって5人いないとできない。
4人では出来ないと気付く。
ゾーッ。
—みたいな有名なお話が
あるじゃないですかー?』
《金曜日》
の女の子が来店した。
『あれってうちの山小屋なんだよね。』
名前は、ファニーちゃん。
『おばけかな?おばけやだな。』
夢ちゃんは、布団から顔だけ出して
ふるふるしている。
『有名な都市伝説だけど、まさか関係者に
会えるとは思いませんでした。』
歌ちゃんは、メガネで真剣な顔をしている。
——ファニーちゃんの話によると、
ファニーちゃんのお友達には、
千里眼の能力を持つ女の子がいて、
名前は「ミワちゃん」。
ファニーちゃんの所有するお山、
そこは普段はお花畑とさらさら小川にお魚さん、ことりさんちゅんちゅん、
穏やかで気持ちのいい山なんだけど
たまに天気が荒れると遭難が起きやすいので、
安全対策として山小屋を建てたらいーかも。
なんてミワちゃんに言われたみたい。
人が死ぬなんていやじゃん?
ってことで、
ファニーちゃんは山小屋を建てた。
最初の頃は、あやうく遭難しかけた人達から
あの山小屋があって助かった。
ありがとう。なんて良い感じだったのだけど、
ちょい前から、例の肩ポンおばけの話が広まり、
そうなるともう
ファニーちゃんでさえ、
山小屋に近づくのは怖い。
困ったな。
と、いう事らしい。
——
『おばけかな?おばけやだな。』
夢ちゃんふるふる。
『とてもホラーですね。わかりました。』
歌ちゃんが事件解決に向けて動き出しそうだ。
と、ここで、いつもなら
シーナちゃんが来そうなんだけど…
ドアは沈黙していて、
今回は、来ないのかな?
ホラーな結末にはならないのかな?
どうなの?
『とりあえず、現地調査…』
『え?おばけのとこに行くの?
やだな。こわいな。おるばんしとこっかな?』
夢ちゃんはすっかりビビってて、ダメそう。
『大丈夫ですよ。夢ちゃん先輩。
山小屋の前に、千里眼の女の子……
ミワちゃんのとこに行きましょう』
ビビる夢ちゃんに、歌ちゃんが優しく言った。
『……ミワちゃん?』
夢ちゃんが、ビビりから少しだけ解放された。
『2人はミワちゃんを知ってるの?』
ファニーちゃんが、聞く。
『はい。お友達です。』
『へえー。そーなんだ。なんかイイネ。
そーゆーの。』
ファニーちゃんが笑った。
『あんまん食べたい。』
ビビらなくなった夢ちゃんはおなかすいた。
2。
『こんにちはー。久しぶりー!ミワちゃーん!』
『あ。あれ?夢ちゃん?』
『お久しぶりです。お元気でしたか?
ミワちゃん。』
『あ、歌ちゃんも!わあー嬉しいな!』
千里眼の女の子。ミワちゃん。
ポッピンミントパステル色の
長い髪。
パンが好き。
——
『——と、いうわけなんだよ。』
ファニーちゃんが、肩ポン怖いに至る、
ここまでのお話、
1000文字をひと言で説明した。
『なるほど、あの山小屋は
そんなホラーな場所になってたんだね。』
ミワちゃんが、言う。
『ミワちゃん、なぜあの山小屋が、
そんな肩ポンホラー劇場になったのか、
原因が見えたりしますか?』
歌ちゃんが聞く。
『しばらくは千里眼を使って無かったから、
私にもわかりませんでした。』
『おばけ。やだな。』
夢ちゃんはミワちゃんにもらった
クロワッサンを食べてる。
『それなら……
その原因を、今から千里眼します!』
ミワちゃんが、決意をこめた拳をぎゅーした。
『お願いできますか?助かります。』
歌ちゃんがお礼を言う。
『まかせて、歌ちゃん!よーし見るぞー!』
——
ミワちゃんは目をつぶり、ポッピンミントパステル色の髪を千里眼モード、すなわちロングツインテールにした。
心の奥底まで、深く……
ダイブ・トゥ・ブルーしていく。
その様子を緊張した面持ちで見守る、
ファニーちゃん。歌ちゃん。
夢ちゃんはクロワッサンを食べ終わった。
『……山小屋………』
ミワちゃんが、イメージを見始めた。
『山小屋の中……肩ポン……』
ついに、有名な肩ポンホラーの
真実が明らかになるのかな?
夢ちゃんが、歌ちゃんの袖をぎゅっと握った。
ホラーの予感にドキドキしてたら、
ミワちゃんは、
パッと目を開けて言った。
『暗くて何も見えないや。』
——
『そうですよねー。肩ポンの時って、
そもそも夜だし、山小屋の中は暗いし、
見えていなかったから、
ホラーが成り立つわけだし……』
歌ちゃんが、言う。
『あ。でも、暗闇にそんな怖い雰囲気は
感じなかったです。逆にとても優しい雰囲気…』
ミワちゃん。
さあ困ったな。
『うー、うむむ。』
腰に手を当て、額に人差し指を当てて
何やら考えていたファニーちゃんが
閃きを声にした。
『明るくすりゃいーんじゃん!』
それだー!
——その日から、ファニーちゃんの
山小屋リフォーム作戦が始まった。
山小屋が怖い?
そんなことないよ!
山は楽しいよ!
ミワちゃん、歌ちゃん、夢ちゃんも
それを手伝い、山小屋をホラーでは無く、
「命の輝きが燃える集いの場」
にするため、みんなが頑張った。
——
山小屋オープンを翌日に控えた夜、
ファニーちゃんは山小屋に1人残って、
作業をしていた。
その時。
ファニーちゃんは、
背後に誰かの気配を感じた。
誰もいないはずなのに。
『……誰?』
振り返ったファニーちゃんが見たもの——




