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白面の者。2



輝くような金色の毛。


九つの尾。


『しっぽがどうかしたの?』


『夢ちゃん、その目で真実を、ようく見て?

このしっぽはね……』



『……真実?』





『枝毛なの!』



『え?』


『え?』



白面ちゃんは、悲しさのあまり目を閉じた。





— 枝毛とは、

髪のダメージが深刻化し、乾燥や摩擦によって表面のキューティクルが剥がれ、内部のタンパク質や水分が流出することで毛先が二股や三股や、

九股に裂けた状態のことです。



…なの。』



—暗黒から生まれ、この世の全てを憎み、

全てを滅ぼそうとする、九尾の狐…

白面の者。


だが、

その心は、枝毛に悩む乙女なのであった。



『これ…え、枝毛なんですか?』


『そう。私のしっぽは本当は 一本なの。』




— なぜ「枝毛」になってしまうのか。

物理的なダメージ、摩擦、無理なブラッシング。


熱によるダメージ、ドライヤーの当てすぎや、

狐火(高熱)の扱い。


タンパク質不足、憎しみや、妖力ばかり食べていて、髪に必要な栄養ケラチンなどが足りていない。


乾燥、野山を駆け巡り、紫外線や外気に晒され続けることによる水分不足。


…だから、私は、卵やバナナや大豆なんかを食べて、ケラチンを補給していたの……』

 


九尾の狐伝説に隠された、

悲しい真実。



白面…とまでに言われるほどの美肌。

美容に気をつかい、己の美しさを追求し続けた

長い年月。

だが、しっぽの枝毛だけは、どんなに努力してもどうにもならなかった。


『…九尾、と言われるのが辛かったの。』


白面ちゃんは、ボロボロと涙を流す。



『…白面ちゃん…』


歌ちゃんも、白面ちゃんの真実に涙する。



『枝毛なんか、大丈夫だよ。白面ちゃん!』


その言葉に、白面ちゃんと歌ちゃんは、

夢ちゃんを見つめた。


『枝毛が…大丈夫?』


『夢ちゃん先輩?』


『んふふ。白面ちゃんはずっと昔に生まれて、

ずっとずっと暗黒を生きていたから、

知らないかもしれないけど—』


夢ちゃんはくるりと回転して、


『今はこんなのがあるんだよ!』


ジャーンと、ポーズを決めた。


『…こんなの?』


夢ちゃんが手にしていたもの、


それは



《高濃度ケラチン脅威の700%配合、

髪のキューティクルを完全復活—


アマテラス・ビューティヘアケアオイル》




——


『かゆいとこはありませんかー?』



夢ちゃんがニコニコしながら、

ヘアサロンごっこをする

歌ちゃんがクスクスと笑う。



『ありがとう。とても気持ちがいい。』


白面ちゃんは目を閉じて、

気持ちよさそうにリラックスしている。


白面ちゃんのしっぽに、丁寧に丁寧にヘアオイルを塗っていく夢ちゃんと歌ちゃん。


『綺麗になあれー』





だけど。


九つの尾は、一本になる事は無かった。


どんなに優しい成分を含んでいても、

どんなに優しくケアをしても、


壊れてしまったキューティクルは、

もう2度と戻ることは無いのだ。



『あれ?あれっ?おかしいなっ』


夢ちゃんがあたふたしている。


『絶対に、綺麗になるはずなんだ、

絶対に、元にもどるはずなんだっ』


その様子を見ていた、白面ちゃん。


『…ありがとう。もういいよ。

夢ちゃん。歌ちゃん。』


『…でも…まだ……』


オイルまみれの手。

必死な夢ちゃんと歌ちゃん。



——ああ、そうか。

私はずっとこの枝毛を隠したかったんじゃない。


「九つに裂けてしまった私」を、

誰かにこうして、撫でてほしかっただけなのだ。


傷ついたままの私を、

真っ直ぐに愛そうとしてくれた、

その手のぬくもり——



『もういいの。私は美肌やキューティクルよりも

キラキラと輝く…もっと美しいものを、

2人からもらったの…』


『……』


『これからは、このしっぽを…九尾を

誇りとして生きていく。』



『……白面ちゃん…』



『…ありがとう。』



白面ちゃんは、夜空へと飛び立つ。



九つの尾は、

オイルの雫を光の粉のように振りまきながら、



美しい光の軌跡を残した。



それは、暗黒さえも光に変える、



九つの救いの形、九品くほんになった。




















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