37話
休み明けの月曜日。伊達はいつもどおり家を出た。
前日遥たちと一緒に店に入り、なぜか職場体験をすると直前に知らされすぐに明石と対面した。
あの後伊達は明石をロッカールームへと誘導した。引きとめている間に遥たちに芦田さんのもとへと行くよう促した。
遥は事前に連絡していたらしく下見がてら挨拶しに来ただけらしかった。
結局直ぐ様着替え明石と一緒に厨房に行った。
すると、ちょうど遥が挨拶している所だった。
籔川くんを見て芦田さんは目を見開いていた。けれど籔川くんが気合の入った自己紹介をすると「今どきの子は礼儀正しいね」と笑って肩を叩いた。
厨房をキラキラした目で見る籔川くんに目を和らげる。
隣で明石が光属性のシバか…いや、もっと沢山の要素がまざっていそうだ…とぶつぶつ言っていた。
伊達は昨日の事を思い出して、明石が何も吹き込まないように祈る。
…遥たち今日と明日昼間先輩といるんだよな…
……大学って一年目は授業少なかったりするんだろうか。などと考えているうちに学校に着いた。
伊達は教室に近づくにつれて違和感を覚える。
…声がする。教室の中から…?
一歩入って目を見開き一瞬言葉なく立ち尽くした。
七瀬くんが…
…七瀬くんが、女子に囲まれている…
七瀬の周りに七、八人の女子が群がっているのが見えて、伊達は登校して早々に見慣れない光景に何があったんだと周りにいたクラスメートに訊こうとした。
しかしいつもと違う光景にクラスメート達も気になっているようだ。
それぞれ集まって喋りながらもそわそわと後ろの席を意識しており、前方にいる伊達には誰一人気づいていない。が、さすがに露骨に好奇の目を向ける者はいない。
伊達のクラスには女子がいない。
上の学年には二、三人いるらしいが
今年はゼロだった。
基本女子は他の学科に集まっており、クラスが違う。
離れたクラスからわざわざこちらの教室に集まった女子たちに周りにいる男子も遠目から羨ましそうに七瀬の方を見ている。
「ちょ、待ってぷるくんもっかいスローで」
「見えないからお前縮んで」
「ねえ、ムリかわいい」
「何コレポーチきゃわ」
「マジどお作ってんの…?やば」
「私にも教えて」
「うちらにもおしえて神」
…カミ……、今は近寄れないな
伊達は七瀬に挨拶するのは諦めて自分の席に着いた。
「ああ、これはひたすら線に沿ってこうやって…そう、それはここを通してそのまま。色を変えてもいい…」
寝る姿勢で机に伏せる伊達の耳に七瀬の丁寧に教える声が届く。
そのうち担任がやって来て自分たちのクラスへ帰るよう促す。
「おじゃましましたー」
「バイバイぷるくん」
「またくるね神。…おい、さっき神何て言ってた」
「三回ひっぱれば良きってー」
「やる気出るわ、見本が可愛すぎて」
「マジそれ。…アンタそれ借りパクすんなよ」
「あした返す、えへ。あ、つけまとれた…」
「…すがっちの小テストかったりい。ってか野球あるじゃん…カネコさん達に今日も勝つから全力だせよ」
「まかせとけ」
「前に同じく」
「ぶっちぎりの差つけるから、楽勝」
「ねえ、神の名ぷるくんって言うの…?」
「え、そうなの……?」
「えっとおー……プリティー・クレイジースキル……、」
……ぷりてぃー…くれいじーすきる…
クラスへ戻る彼女たちのそんな会話がはからずとも前の席の伊達に聞こえた。最後の言葉はおそらく伊達にしか聞こえていないはずだ。
廊下へ集団が出ていき静かになった教室。若干いい匂いが室内に残ってる気がするのは気の所為ではないはず。
一瞬七瀬へ視線が集まったがすぐに散った。担任が咳払いすると丁度ベルが鳴った。




