38話
「おい」
誰かが頭に手を置いた。
「伊達、もう昼休みだぞ」
……お昼…?
目を開くと思ったより眩しくてすぐに目を閉じた。
そろりともう一度開いて目の前の友人を見る。
……あれ
「ななせくん」
「どうした…?何か変な顔してるぞ」
「…変な…」
思わず自分の顔を触る。
…夢見のせい…?
…でも内容は憶えてない。
…、
「…お腹、減ってるからかも」
「……なら早く食べないとな。行こう」
「うん…」
七瀬に頷いて鞄に手を伸ばした伊達。
…ええ……?…あ、
中を見て頭の中で今朝の事を思い起こした。
朝の残りをサンドイッチにしてテーブルの上に置いたまでは覚えてる…
…しくった…、水筒も…
落ち込んで鞄を元に戻している伊達に七瀬が声を掛ける。
「どうした…?」
「作ったやつ忘れた…たぶん家」
「それは……俺のパンでよければ食べるか…?」
七瀬の申し出に首を横に振り伊達は立ち上がる。
「いい…!買ってくるから、ごめん待ってて」
そう言って購買へ駆け出した。
スタートダッシュはかなり遅れたので正直期待していなかった。
案の定、すでに人は散っていた。
一応前まで行きちらりとのぞいてみる。
「………」
……ですよね、回れ右
コンビニまで買いに行こうか。
けど、別に…今日はもうアレで…
伊達は自販機まで行き、そこに飲み物と一緒に並んだお目当てのモノのボタンを押した。
飲み物もついでに買う。最初はお茶とお水と迷って、最終的に別のものを買って戻る。
◇
いつも昼食を食べる場所のひとつ。風通しのいい外階段の踊り場。伊達がそこへ行くと七瀬は既に階段に座り待っていた。
「ごめん、遅くなった。…先、食べてて良かったのに」
伊達は急いで七瀬の一段下に座った。七瀬は「そんなに待ってない」と言うと、伊達の手元の飲み物に気づいて意外そうに言った。
「…珍しいなソレ」
「たまにはいっかと思って…」
そう言いながら伊達は今日の昼ご飯となるブツの入った箱を開ける。中のブロック状のクッキーを取り出そうとした。それを見た七瀬が眉を寄せる。
「…それだけか…?コレもやるからちゃんと食べろ」
そう言ってガサリと袋の中から惣菜パンを一つわけてくれた。
七瀬は昼間大体おにぎりかパンを四、五個いつも持参している。
「…いいの?」
「もちろん」
「じゃあ、遠慮なく…ありがとう」
「どういたしまして」
…七瀬くん…いや七瀬様
…このかりは必ず…
「そだ、コレ食べる…?」
そう言って先ほど買ったものを七瀬にお裾分けしようとした。しかし「別にいい」と首を横に振られたので伊達は手を引っ込めた。
「頂きます、七瀬サマ」
「伊達、サマはやめて」
「…なんか、朝すごかったね」
今朝もそうだが、彼女たちは休み時間毎にやってきて七瀬を囲んだ。
伊達は今やっと話すことができた所だ。
ペットボトルのキャップを回すとプシュッといい音が鳴った。
七瀬に飲む?と差し出す。少しの間の後七瀬は手を伸ばし受け取った。
「ああ…まあ、色々あって作り方を教えることには、なった…」
そう言って炭酸を一口あおる。
「…へえ凄い、」
…女子のハートを射止める七瀬くん…なんだか誇らしい…
伊達は惣菜パンの包みを開けながらそんなことを思う。
七瀬は律儀に飲み口を服の裾で拭くと伊達にペットボトルを返した。
…けどあんなに囲まれて落ち着いて教えられるのもすごい…と思う
「…もしかしてそういうのよくある…?」
…俺だったら圧に屈しそうだ…
質問の意味を汲み取った七瀬が、ああと頷いた。
「よく、というか…中学の時もたまにあったかな…。…あと教えてもらう時は大体女の人の中にまじってたから」
…なるほど、それで慣れてたのか
「そっか…」
と言いながら伊達は久しぶりの炭酸を味わおうとした。
…あーでも先に貰ったパンから食べたいかも
と伊達は一度口元まで近づけた炭酸飲料をそのまま下に置いた。
…炭酸抜けそうだから蓋だけ乗せとこ。というか…
…遥…ちゃんとやってるかな…
…明日、様子を見に行けたらな…学校あるからサボれないけど…
…そういえば、七瀬くんに会いたいって言ってたっけ…。今度家に誘ったら来てくれるかな…
「…七瀬くん、」
「伊達、何かあった…?」
「…へ、」
「…や、パンずっと見つめてて…何か考え込んでる…?みたいに見えたしそれに……あーいや、俺の気のせいかも」
…………
「…実はさ、今…バイト先に遥…弟みたいな子が来てて――」
と伊達は遥の事を少しだけ七瀬に話した。




