36話 幕間
「じゃーね、いーくん」
「…気をつけてね」
「いーくん、お先失礼しますっバイト頑張って下さい。明石さんも明日からお世話になるッス。」
その言葉に後ろを振り返ると明石がぬっと出てきて伊達は驚いた。
「うわ」
「ああ、よろしく頼むぞ明日から。楽しみに待っている」
「籔っちー」
「今行くっす、…ではお二方失礼しますっ」
遥のもとへ走っていく後ろ姿を明石と見送る。
「…先輩、遥が明日からお世話になります」
伊達は明石に向き直り頭を下げた。
「そんな事せずとも当たり前だ、先ほども言ったが準備にぬかりはない…安心したまえ」
……
伊達は頭を上げて明石を見る。
…その自信と…準備って何ですか
「…不安です」
「何を言う、大丈夫だ。…時に伊達氏今日バイト終わり時間に余裕はあるか…?この間の株の受け渡しをしたいんだが…」
「かぶ…?…ああ、本当にいいんですか…アレって調べたら結構値が張るものなんですよね…」
…どうやってあれだけ…
「なに、手段は様々だがぶつぶつ交換をしたまでだ…それより要らないのか、要らないのであれば店に寄付でもと思ってはいるが。許可がおりればだが…」
「店に…いいと思います。それに俺、もらったものをきちんと世話出来るかわからないですし」
…こないだのやつもあんま水とかあげてないし
「少々手抜きでもしっかり育つものか…君の家は日当たりはいいか…?」
「…いい方だと思います」
「それならオリーブはどうだ…?これは室内向きではないが外に置いて日光に当てておけば大体育つぞ。水やりは土が乾いてからやればいいだけだし、雨が降ればしばらくはやらずに済む…まあ育てば植え替えも必要となるが。途中面倒であれば返すのもよしとしよう…どうだ」
………何だかんだあの子…一号もいるだけで…たまに見ると癒されないでもないしな……、
「…じゃあ、それで…。今日ですか…?取りに行くの」
「ああ心配するな。送り届けようついでだ」
…ついでって
伊達は今明石の運転する軽トラに乗って家までの道を帰っている。
備え付けられたスマホホルダーにマップを表示させて運転する明石。
…先輩には申し訳ないけど。ちょっと不安…
「そう不安そうな顔をするな伊達氏。こう見えて安全運転だ。だからそんなこわごわとした表情はやめてくれ…期待にこたえそうになる」
「センパイ、信頼してます」
「ははっ、うそつきだな…」
伊達は笑う明石の横顔を見る。明石の視線が動いて慌てて前に向き直る。
「…、前から思ってたんですけどセンパイって……まつ毛長い…」
聴きたかった事を口に出せず、ついそんな言葉が出た。
予想してなかったのか明石はどこか困惑気味だ。
「…?、そうか」
「…はい。よく言われませんか…?」
「ないぞ…確か。それより伊達氏あの青年とはやはり兄弟ではないな」
「…バレましたか」
「…血は繋がってなくとも兄弟にはなりうる。俺は少なくともそう思うぞ」
「…真剣なこと」
…言えるんですね
「それにふふふ、そうか明日がたのしみだ…」
…やっぱりそうですよね
…先輩らしいっちゃらしいけど
「…センパイ、運転中は安全運転で。呼吸、ちゃんとして下さい」
伊達が言うと大きく息を吸った明石が言った。
「もうすぐ着くぞ」
それからすぐに家について、車を前に停めた明石が後ろの鉢に固定していたロープを解く。
鉢を持った明石の前に行き受け取る。玄関先に置いて明石を振り返る。
「センパイ、ここでもいいですか…置く場所」
「ああ、とりあえず日当たりの良さそうな場所であればどこでもいいが…」
「そうですか…、お茶でも飲みます…?」
「…いや、残念だがこの後大学にいかねば。今度機会があればお邪魔させて頂こう。…ではな」
軽く手をあげそう言って車に乗り込む明石。
「……ありがとうございました」
手をあげる仕草に伊達の声が聴こえていたようだった。
……とりあえずオリーブで検索してみよ。…これからよろしく
落ち着いた色味の葉を眺めてそんな事をおもう。
…あ、洗濯物
伊達は思い出したように家の中へ入ると洗濯物と布団を取り込んだ。




