35話
「こんちわっス、いーくんですよね…?オレ遥くんの左腕やらせてもらってますっ籔川です。よろしくお願いします…!特技は卵かけチャーハンですっ」
………くちぴ…した…まめしば…
目立つ口元のピアスに自然と目が行く。耳たぶにも太くトゲのように突き刺さった派手なピアス。それが片耳でキラリと光に反射して思わず目を細める。
伊達が口を開く前に、見た目に反した低い物腰の自己紹介を始めた少年。突っ込みたい所も多々あるが反射的に言い返す。
「伊達です。遥がいつもお世話になってます。……こちらこそ、よろしく」
相手につられるようにお辞儀する。
「お顔を上げてください。いーくん」
慌てた気配にそっと頭を上げると相手はほっとしたような表情を見せた。
…なんか、遥以外にいーくんって呼ばれるの…新鮮
などと伊達が思っていると遥が言った。
「いーくん、籔っちも行こ。遅れちゃうよ」
「…え……?」
「行きましょう、いーくん」
「いーくん、はやくー」
二人に急かされて伊達はまだ理由のわからないままとりあえず歩き出す。
…なに、店にごはん食べに来るつもり……?
そう思いながら伊達は前を行く遥に呼びかける。
「遥」
「職場体験だよ…?前に訊いたじゃん。店行ってもいいかって」
「しょっっ…」
…………しょくば体験…ってあの…?
「…遥くん、何かいーくん驚いてね…?」
「えー、おっかしいな…言ったよねオレ。確かに」
……店にとは、言ったけどさ遥
…何で
「オレ料理作るの好きだし、接客もしてみたいから」
困惑する伊達の顔を見て笑顔で遥はそういった。
…真っ当だ……けど、
………待って今日は先輩が……
「……二人とも、走ろう…」
そう言って駆け出した伊達の後ろを二人はぴったりとついてくる。
「急にいそいでどうしたの、いーくん」
「……あの人より先に着きたい」
「…あの人……ああ先輩…?」
伊達は頷いてひたすら店までダッシュする。
店が見えてきて勢いのままドアノブを掴み中へ入る。
「…遅かったな…伊達氏。…もう準備は出来ているぞ、ぬかりなくな…ふふふ」




